EP1 転生
潮のにおい、森からのそよ風、職員たちの叫び声。そのすべてが、感じられる場所。
内之浦宇宙観測所。
そんなところに今俺たちはいる。
昔テレビに出見たスペースシャトルに入ることを夢見ていた少年たちが、青年となり、今、宇宙開発の最先端にいる。おっと、自己紹介が遅れてしまった。俺の名は天羽悠真。
JAXA、つまり、日本の宇宙開発機関の管制チームの一員だ。
JAXAに入構してはや4年。三交代制の辛さには慣れてきたころだろうか。ちなみに横にいる奴は同期の小林。こう見えて出身高校では、一位を死守し続けた猛者である。
俺たちが内之浦にいる理由……。
それは、イプシロンロケットの打ち上げをするためだ。あと発射後の軌道チェックも仕事のうちの一つである。
こんなの、自動追尾カメラ使えばいいだろとおもうかもしれない。実際俺もそう思った。アナログ時代の弊害だと、鈴鹿先輩は言っていた。
アナログって何のためにあるんだろうと考えながら、発射管制室に入る。
中ではすでに、3人ほどの人員でいっぱいだった。年齢は……。
中年が多いだろうか。俺みたいな若手は一人もいない。
この部屋で俺がやる仕事はただ一つ。発射ボタンを押すことだ。
こんな簡単な仕事をするだけで、危険手当が出る理由がよくわからない。発射20秒前、無線機から
「逃げろ‼‼」
と聞こえてくる。
しかし時すでに遅し、イプシロンロケットの二段目の灼熱の赤が、発射管制室内に流れ込んできていた。おれは、このまま、死ぬかと思ったその時……。
気を失った。
覚醒。そこは旅客機の中だった。
CAさんが来て、
「お客様、ご安心ください。最寄りの空港に着陸致します。」
通路の先には俺の相棒、メインPCがあった。案外高いからなパソコンって。
大学生のころの記憶が正しければ、この飛行機、DC-3に酷似していないか?俺は前後を移動しながらそう考える。
だんだんと高度が下がってきたので、CAさんに座る場所を伝え、座席に座りシートベルトを締める。
機体はぐんぐん高度を下げ、眼下には昭和のアメリカが広がっていた。
飛行機は、空港を目標にとび、無事着陸した。
飛行機の窓からは「ウェルカム・ヒューストン」と書かれた盛土があった。
そんな、ことを楽しむのもつかの間、前から後ろから警察が乱入してきた。そして……。
俺だけヒューストンで降ろされた……。
空港のセキュリティールームに連行される天羽と相棒のパソコン。そこで何か違和感があることに気づく。
そう、USAではなくUKAなのだ。ということはこのアメリカ、王国または帝国なのだ。でもそうなるとつじつまが合わない。何故なら、アメリカは一度も王を即位させたことがないからだ。
もしかして、これってラノベの王道。異世界転生じゃないか?俺はこれからどうなるんだろうか




