第7話 4000分の1……?
奇病事件が終わってから
もう何週間か経とうとしている
あれから特に問題は起きず
ただただ平穏な日々が続いていた
魔王討伐は嫌だ、とは言ってるものの
ここまですることないとかえって困るな
やっぱり、各地を回って帰る方法探さないとダメかな……
今日は城の外で木の実を取りながら
散策していた
「キュー!キュー!」という鳴き声が聞こえて
森の中に入ってみると
大量の丸い水がぴょんぴょん跳ねていた
水……じゃないなあれ、多分スライムだ
あまり害のない友好的な魔物らしく
戦っても特訓にもならないため繁殖が一番多いと言われている
にしても多いな……千匹はいるのでは
顔はない丸い水だけど、こんなにいたらなんか可愛く見えてきた
すると、群れの中からぴょこっと紫のスライムがでてきた
この前魔物図鑑でみたスライムの種類とはどれにも当てはまらない
けど水色のスライムたちに追いかけられているのだけは分かった
追いかけっこ?とも思ったけど
体当たりされてるのを見て私は紫スライムを抱き抱える
「こら、いじめちゃダメでしょ」
軽く叱ってみると
スライム達は私から逃げるように去っていった
こういう種別が違うから追い出そうとする
みたいなのは人間も魔物も一緒なんだな、と思った
確か突然変異でごく稀に色が違う魔物が出てくる
みたいなのを読んだし
その類のスライムなんだろう
「キュ!キュキュキュ!キュ〜!」
紫のスライムはお礼を言うみたいに
体から紫の小さい宝石を出してくれた
レアドロップのサファイア……のはずだけど
紫色をしてる、多分アメジストだ
小指の爪くらいの小ささだけどサファイアでもかなりの価値があるはず
アメジストってどんくらい価値が……いやいや
こんなこと考えてちゃいけない
「お礼はいらないよ、大切に持ってて。今度は虐められないようにね」
とだけ伝えてから私は森を後にした
…………なんか
「キュ?」
後ろついてきてる……気にしないようにしよう
その後、木の上の木の実をとる時……
「ん……手、届かないな」
仕方なく諦めようとした時
「キュ!」とスライムがぴょんと高いジャンプをして取ってくれたり
川の水を飲もうとしてコップを取り出すと
「キュ!!」と川の水をさらに綺麗にしてくれたり
ずっと手助けをしてくれた
お礼いらないって言ったのに……
と思いながらも、スライムの行動が可愛くて顔が緩む
「手伝ってくれてありがとう、もう大丈夫だよ?」
スライムは激しく横に震える
多分首を横に振ってるんだろうけど……
「じゃあ……ついてくる?」と言ったら
嬉しそうにピョンピョン跳ねる
可愛い……
スライムじゃあれだし、名前付けてあげたいな
んー……
「キュ!」とスライムは花を私に差し出した
青いアネモネだ、確か花言葉は堅い誓い……だったかな
「モネ……て呼んでいい?」
スライムは嬉しそうに私に飛びついてくる
勢いに押され私は思わず尻もちをつくけど
スライムはお構い無しに私に頬ずりをする
嬉しいみたいだ、良かった
「愛華っていうんだ、よろしくね、モネ」
「キュ!」
こうして、私の小さいお友達ができた
家に帰って、早速私の家を紹介
モネが気にいったのは
机の真ん中とか高いところとかじゃなく
私の膝の上だった
「もう、モネは甘え上手だな」
私はすっかりモネを気に入って撫でる
ひんやりしてぷにぷにしてる
夏に抱っこしたら最高かもしれない
コーヒーを飲みながら窓の外を眺めると
緑の風景が広がる
…妹と一緒に朝ごはんを食べながら見た
実家の庭をふと思い出した
あの頃は、妹も私の膝によく座って
『あの人』が酒を持ってきて絡んできたっけ
…でも、今はこの異世界で一人
モネが膝の上でぷにぷに動く感触に癒されるけど
心のどこかで『あの人』に会いたい気持ちが疼く
ここは幸せだけど…それでも帰りたいな
帰る方法…図書館で調べたけど
まだ手がかりは少ない
ゲッカさんやベリーに相談してみようかな
ハグして柔らかい感触を楽しんでると
ピンポンが鳴った
少し嫌な予感がして出たらゲッカさんだった
「ゆっくりしてるところすまないな、今大丈夫か?」
「大丈夫ではないですけど要件は聞きます」
「感謝する。3日後、姫の王家引き継ぎのための試練を行うんだ、君も同行して欲しい」
王家の……引き継ぎ……?




