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同居人  作者: 杠秋星
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六、書庫に潜む怪異の話・其の壱

 うわわ~、更新がおっそろしくのろい……。こんなに更新不定期しかも遅いのは私だけでしょうか? 私だけでしょうね。ネタはあるけどそれを文章におこすこともできないようなダメダメも私だけですね!(←開き直んな

「ミズキって、彼女とかいないの~っ?」

「ごフッ!」

 突然の爆弾発言&全身を投げ出して飛びつくというWカウンターを食らい、俺は思い切りほうじ茶を噴いた。

「ぎゃああああ熱っ、熱っっ!! ほうじ茶どんだけ熱いんだよ水晶!!」

 飛びついてきた馬鹿の相棒は、色の白い整った顔面にもろに茶をぶっかけられ、眼を押さえて騒いでいる。

「死ねよテメェ! 俺が今どんな状況なのか確認してから飛びつけ! いや、飛びつくな!」

「俺もう死んでるもーん。いいじゃんいいじゃん、征樹はどーせ人形なんだから火傷しねェし」

「おい拓お前裏切りやがっ」「表立っただけだもんね!」「言葉遊びをするなぁぁぁもっぺん死んでまた生き返ってドブに落ちてまた死ねぇ! そしてもう現世に戻ってくるな!」

 おいお前ら、俺を巻き込まないのはよしとしてやるが台詞間に改行ぐらい入れろ。

「でも、確かに誰かから告白を受けていてもおかしくありませんよね。髪が長い以外はよくできた容姿ですし」

「お前人を人形(ビスクドール)みたいに言うな。本物が今隣にいるってのに」

「褒めてるんですから少しぐらいお礼を言ったって」

「褒めてないない、客観的事実を述べたまで、て感じの声だぞ今のは」

「ちっ……ねぇ、瑠璃、そんなことありませんよねぇ?」

「今露骨に舌打ちしたよね!? 「ちっ」とか聞こえたよね!?」

「…………ぅにゃぁ」

 家主()飼主(死神)の間に挟まれて、黒猫の姿の瑠璃は、踵をかえして庭へ逃げた。

「で、いるの? いないの?」

 珍しく怒った様子の征樹をほっぽって、死人の拓がしつこく聞いてくる。

「いねェよ」

「嘘だー! 間が空いたー!」

「空いてねェよ! 空いたとしてもコンマ0.数秒だろ! 神経の伝達にかかる時間だっつーの!」

「もしかして彼女ではなく彼とかぐはァッ」「よーしいい子だそのまま消滅しろ塵一つ残さず」

「じゃあ人間じゃないとかふぐっ」「ざけんじゃねーよ人外はテメェらだけで充分だ否余り過ぎて瑠璃だけを残してあとは全部焼却処分したいくらいだああでもダメだなこんなでかい粗大ごみ捨てられないどうしたもんだろうかそうだどっかに埋めればいいんだそうだこれで土の養分にもなって一石五鳥くらいになるんじゃないかなうんそうした方が人類と俺の胃の健康のためになるしなそうだなんで今まで思いつかなかったんだろう是が非でもそうしようそうしよう」

「いやいやいやいやどこで息継ぎしてんのミズキ!? こんな台詞どんな親切な読者でも全部読まないよ!!」

 物凄く荒い息をついている俺の周りで、懲りずに「ねぇねぇどうなの?」と聞いてくる奴らに対して一瞬怒りを通り越して純粋な殺意が湧いた。ちなみに、俺の今の苦しみの度合いを知りたい人間は俺の台詞を息継ぎなしで一気に読んでみるといい、たぶん酸欠でブラックアウトを引き起こす。

「そういえば、彼女はおろか俺らって水晶の友達見たことないよな?」

「そうだね、家にも呼ばないし」「呼べるわけねーだろーが」

「親戚とかもいないの?」


「親戚………」

 

 はた、と考え込んだ。

「…………いるにはいる」

 ぱくっと口を開いた状態で三人が石化した。いや、人じゃないけれど。

「いとこが、一人」「いるの――――ッ!?」「………いる」

 実は他にも血のつながりがある人間はいるが、限りなく薄いしそもそも沖縄までどうやって行けと?

「呼んでよ! 俺らのことはどうとでも言い逃れできるだろ!?」

「お前らはどうとでもできるいざとなったら捨てればいいんだし。だけど、俺が会いたくないんだ(・・・・・・・・・・)

「どんな人なんですか?」

「女で、修繕屋(・・・)ってのをやってる。俺と同い年だ。今風に言うならリペアラーかな。だがこいつには会いたくな」「名前は趣味は血液型は?」「……桜庭生絹(サクラバスズシ)、っていう。趣味は読書と情報収集。血液型はRH+AB型」

「身長百六十七センチ、体重は言えるわけがない、得意教科は情報処理と簿記。鈴街商業高校一年B組十四番」

 聞き覚えのある、もしくは聞き覚えたくない、女にしては低い声が響いた。

「散々な言いようだな碧海水晶。だが貴様如きの動向など、この私には筒抜けだ」

 無論、鍵宮のこともな、と小さくつけ加え、音もなく障子を開け放ちやがったその人影。俺は振り向かない、振り向いたりしない!

「ふん。やはり碧海の屋敷に人外が巣食っているという噂は本当だったようだ――――害はなさそうだがな。随分位の高い霊魂だ」

「ほお、あなた霊感でも?」

「相手が私に対してなんの警戒も抱かなければなんとか。情報によると、確か女の死神がいるとか。貴女がそうか?」

「御名答。こっちのチビが"死人"の拓。そっちのデカいのが"人形"の征樹。私は"死神"茉莉です。もう一匹、"案内人"―――黒猫の瑠璃がいるが今は出ています」

「丁寧な紹介ありがとう。―――――三日前に電話で連絡したが、その様子だと知らないようだな碧海。まあ、電話口に出たのが幼い男児の声だったから予想はついていたが」

「じゃあかけ直せよこの野郎!」

「野郎は男に使うものだ。いや何、貴様の驚いた顔を見てみたくてな」

「あー、あの電話この人だったんだー」

 あっけらかんと「忘れてたー」と言い放つ拓の首を一瞬もぎ取りたくなったが仕方がないよな? な?

「さて、私がここにやってきた理由はだな、貴様の屋敷の噂の実態を検証しがてら、貴様に頼みたいことがあってきたのだ」

「どう考えてもそれ物を頼む態度じゃないよな」

 和室で一番の上座で、座布団を三枚敷いて鎮座してやがる生絹に向かい、俺は目いっぱい低い声を出した。

「貴様の霊感に頼るべくこうしてやってきた所存だ。―――これでいいか?」

「あーもういいよなんでも。……で、どんな話だよ」

「うむ。実はだな」

 貴様の通う高等学校には、図書館があるな? と尋ねる。

「ああ。卒業生からの寄付で建てられたらしいな。最早一介の市立高校の図書館レヴェルじゃねーよ」

 塔のように煉瓦を積み上げられた、洋館のようなその図書館は、かなり古い時代の書物が多く蔵書量は計り知れない。その中には、マニア垂涎物の希少本も埋まっているらしい。

「あそこに、幽霊が出るらしい」

「ちょっと待て」

 単なる都市伝説レヴェルの話じゃねーか。

「そんなどこの学校にでもあるような怪談真に受けて調査するのか? ありえねーよ」

「ふん。この私がそんな不確かな情報で動くと思うか?」

「いや、思わねえ」

 にやり、と口角を持ち上げ、生絹は笑う。

「これは、信頼できる筋からの情報だ。もう正体の目星もついている」

「じゃあなんで」

「貴様の霊感を信じて、そいつを情報収集に活用できる手先として調教を」

「鬼だこいつ! 角が見える!!」

「まあこれは勿論冗談だ。四人とも引くな」

 ドン引きした俺たちをちょいちょいと手招きして、生絹はこう言った。

「死神とやらは、力をもった魂を欲しているらしいな? 話によれば、かなり強大な魂魄の可能性があるそうだが」

 こくっと、茉莉が唾を嚥下する音が聞こえた。

「ただし、悪霊化している場合は問題だ。そこの死人と人形、彼らの役割になる」

 そこまで言うと、少し間をおく。演出のつもりだろうか、テンポよく進めてほしいんだが。


「どうだ? 私にとっても君達にとっても、悪くない話だと思うが」


 手柄を立てることもできるし、何より退屈が紛らわされる。

「うん行くー!」

 退屈という言葉を何よりも嫌う拓が真っ先に手を挙げた。そうなれば、相棒の征樹もついていくしかない。

「行きましょう、ええ行きましょう。ほら水晶さっさと支度してください」

「ちょっと待て俺の意見は丸無視か!?」

「多数決ですよ、この地球は多数決で廻っているんです」

「じゃあ世界の過半数が地球の自転を止めるという意見で一致したら地球の自転は止まるのか!」

「そんなわけないでしょう、あなたは馬鹿だったんですか」

「てんめっ……!」


 ……こうして、一人抵抗した俺も、髪を引っ張られて同行する羽目になってしまった。長過ぎるものは時として災いする、ということを俺は学んだ。

 今回は普段のオチ(水晶がキレて他の奴らをボコる)と真逆の展開ですね。

水晶が垂らしていた髪を、拓と生絹がしっかり掴んで、彼の断末魔の悲鳴も首から響いた異音も無視して引きずっていっちゃったわけです。

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