第96話 「すみれとの再会と、感情の揺らぎ」 ――“あなたに会えて、よかった”と、まだ言えない私。
◆Aパート:文化祭の喧騒が終わって
校庭の片隅で、片付けが終わった夕暮れ。
ユウトは、ふと人気のない渡り廊下を歩いていた。
そして、見覚えのある姿が、ぽつんと窓の外に立っていた。
ユウト「……すみれ?」
すみれ「……あ。ユウトくん」
振り返った彼女は、笑顔だった。
――でも、その笑顔には、かすかな影が混じっていた。
◆Bパート:ふたりきりの時間
校舎裏のベンチに座って、並んで缶ジュースを開けるふたり。
すみれ「ねえ……楽しかった? 文化祭」
ユウト「うん。色々あったけど……楽しかった。すみれは?」
すみれ「わたしも……そうだなぁ、途中からは記憶が曖昧だけど……。でも、ユウトくんが笑ってたの、見えた気がするの。なんか……安心した」
少しだけ距離を詰めるすみれ。
だが、目を伏せたまま、その声はかすれていた。
◆Cパート:沈黙と、ささやき
ユウト「すみれ。……その、具合は……大丈夫か?」
すみれ「うん。もう大丈夫、たぶん」
“たぶん”というその言葉に、ユウトは眉を寄せる。
すみれ「……でもね、あのとき、自分の中で何かが壊れたの。
優しさとか、遠慮とか、そういうものが、急にバラバラになって……」
彼女は、小さく震える指で、ユウトの袖をつまんだ。
すみれ「――だから、怖いんだ。もし、またユウトくんに近づいて、
わたしが自分を抑えられなくなったら……どうなるのかなって」
◆Dパート:ユウトの応え
ユウト「……でも、俺は嬉しかったよ。すみれが戻ってきてくれて。今、こうやって話してくれてることも」
その言葉に、すみれの肩が小さく揺れる。
ユウト「俺はすみれのこと……ちゃんと向き合っていきたいって思ってる。
“何か”になってしまうかもって怖さもあるけど、それでも――」
すみれ「……ふふ。バカだね、ユウトくんは」
すみれが、そっと顔を寄せてきた。
でもその瞳には、確かに“人間の涙”が浮かんでいた。




