第9話「混浴注意報!? 湯けむりと本音と、恋の距離」
あれから数日、俺たちは“王都近郊の癒しの秘湯”こと、**精霊の湯宿・陽結庵**に滞在していた。
――リリスとの一戦で負った心身の疲れを癒すために。
……という建前で、実質「恋の戦場の延長戦」が始まろうとしていた。
◆ 到着、そして浴衣ヒロインズ
「ユウトくん! 見てください、浴衣ですっ♪」
「どう? たまにはこういうのも……似合ってる、って言いなさい」
「こ、これは別に……宿の決まりだったから……」
セレスの無邪気な笑顔、ユキのクール浴衣姿、そしてリリカのツン8割の赤面ツンデレ。
俺のHPが0になりかけたそのとき――
「は~い皆さん、混浴ですよぉ~♪」
旅館の女将が無慈悲な宣言。
「「「……は?」」」
◆ 湯けむり修羅場
「ま、混浴って言ってもタオルOKで区切りもあるし、大丈夫ですよ」
とか言われても、心理的ダメージは計り知れない。
案の定――
「なんで来てるの!? 見るなバカユウト!!」
「ユウト……のぼせて、倒れればいいのに……///」
「ユウトくんの心拍が上がってますっ、記録更新っ♪」
俺「お、おぉぉ……この空間、サウナより熱い……!」
◆ 本音が出る湯けむりタイム
――夜、湯上がりの休憩処。
俺はポカリ片手に縁側に座っていた。
すると、ぽすんと誰かが隣に。
「……ユウト。少し、話していい?」
隣に座ったのは、ユキだった。
温泉で火照った頬と、微かに潤んだ瞳。
「……私は今まで、“戦力”としてそばにいた。
でも、本当は――あの時、怖かった。
あなたが誰かに、連れて行かれるのが」
その視線はまっすぐで、俺の胸に深く突き刺さった。
「……オレも、怖かったよ。
オレが壊れて、誰かを傷つけるんじゃないかって」
「それでも、一緒にいたいって思ったの。……だから、手を取ったのよ」
ユキが微笑んだ。
(なんか、今すごく……“距離が近い”)
と思ったら、後ろで**パキィッ!**と音が。
見ると、リリカとセレスが障子越しに盗み見中だった。
◆ バレたら最後
「ユウトぉぉぉ!? あたしのターンは!?!?」
「……セレス、これは“邪悪な行動”です。祈りましょう」
「いや君たちが覗いてたのバレてますからね!?」
結局、全員で「縁側に正座」という謎の修行タイムになった。
◆ 一方そのころ、リリス
「ふふ……彼の中の魔性、少しずつ芽吹いてきた」
闇の神殿、月明かりの下。
リリスは静かに笑っていた。
「次の舞台は、“夢”の中。
感情の海に沈む彼を、今度こそ堕とす――ふふ、楽しみね、ユウト」
● 次回予告風
癒しの温泉も束の間。
ユウトは次なる戦いの舞台へ――それは彼自身の深層心理。
次回、第10話
「悪夢と純心と、選ばれるキス」
夢の中で交錯するヒロインたちの“本当の想い”。
目覚めたとき、ユウトが隣に選ぶのは――誰だ!?