第89話 「それは“私の気持ち”だったのに――」
◆放課後の廊下、ふいに現れるルシア
ルシア「……すみれさん。さっきの“告白未遂”、聞こえていたわ」
すみれ「なにが言いたいの?」
ルシア「素敵だった。“ああ、この子、もうすっかり恋に落ちてる”って。
でも――それって本当に、“あなたの気持ち”?」
すみれの心が、一瞬だけざわつく。
すみれ「……どういう意味?」
ルシア「“悪魔”って、感情を強化するの。
愛も憎しみも、渇望も執着も――全てが、増幅される。
つまりあなたの恋は、純粋なものではなく、演出された欲望かもしれないってこと」
すみれ「っ……うるさい、黙れ」
ルシア「怖いのね。“本当の自分”が見えなくなるのが。
でも大丈夫。私が見ててあげる――あなたが壊れるその瞬間まで」
◆すみれ、ひとり屋上で
放課後、屋上。風は冷たく、空は夕暮れ色。
すみれ(あたしの恋って、ほんとに“あたしのもの”……?)
すみれ(ユウトのことを想うと、胸が熱くなる。触れたくてたまらなくなる。
でもそれって……欲望?執着?それとも“あたし自身の意思”?)
頭を振るすみれ。
だが、胸の奥で、ルシアの囁きが何度も反響していた。
◆ユウトとの再会、すみれの不安
ユウト「すみれ! 探したぞ。……どうした? 顔、真っ青じゃん」
すみれ「……ねえ、ユウト。あたしがさ、もし“自分の感情”を信じられなくなったら、どうする?」
ユウト「……それでも、お前が俺に“好き”って言ってくれるなら、
それは信じるよ。俺は、お前の“言葉”を信じる」
すみれ「――ばか。そんなの、ずるいくらい、まっすぐじゃん」
すみれの目に、うっすらと涙。
でもそれは“闇”ではなく、心を取り戻す涙だった。
◆しかし、その夜
ベッドの上、目を閉じても、ルシアの声が残響する。
ルシア(恋に見せかけた“欲望”――それが君の本質。だって、君はもう……悪魔に触れてしまったんだから)
すみれの手が、無意識にユウトとの写真へ伸びる。
指先が震えていた。
◆ラストカット
その頃、ルシアは窓辺で微笑む。
ルシア「さあ、“すみれの恋”が本物かどうか……じっくり観察させてもらうわね」
窓の外、夜の風に、どこか黒い羽のようなものが舞っていた――。
◆次回予告:
「イオリ、すみれの“感情の揺らぎ”を解析せよ――!」
すみれの変調にいち早く気づいたイオリが“感情波動の乱れ”を読み解こうとする。
真昼とユキは、逆に“感情で包む”アプローチで支援に入る。
そして、ルシアの“次の一手”とは――?




