第83話 「すみれ、選択の刻――“恋”か“悪魔”か」
◆誰もが息を飲む瞬間
屋上。空は鈍く曇り、風だけが吹き抜ける。
結界の中心、ユウトとすみれ。周囲では、イオリ・真昼・ユキの三人が静かに見守る。
すみれは立ち尽くしていた。
悪魔の角を持ち、黒い羽の残滓を背に揺らしながら。
すみれ(……ユウトくんの手、あったかかった)
すみれ(あのとき、少しでも迷ったら、私はもう完全に堕ちてた)
けれど――
まだ、私は「戻った」とは言えない。
◆回想:悪魔の囁き
『君は傷つけられる。裏切られる。選ばれない。だったら、奪え。』
すみれ(……ずっとそう囁かれてきた)
『恋は戦いだ』と、誰かが言った。
でもそれが、誰かを踏みつけることなら、
――それは“恋”じゃなくて、“憎しみ”だ。
◆ユウトの言葉
ユウト「すみれ、今のお前が選ぶ道なら……俺は、受け止めるよ」
その言葉に、涙がこぼれる。
すみれ「……ずるいよ、ユウトくん」
すみれ「そんな顔して、そんなこと言われたら……私、悪魔になんかなれないじゃん……」
すみれ(もう、わかってたよ。ユウトくんは、私が“すみれ”のままでいたいって、願ってくれてた)
◆イオリ、真昼、ユキの視線
彼女たちも、何も言わず見つめていた。
奪い合う恋の戦場だったはずなのに、いまこの瞬間だけは――すみれを“ひとり”にはしたくなかった。
イオリ(すみれ……あなたもまた、私たちと同じ)
真昼(誰かを本気で、好きになっちゃった女の子なんだ)
ユキ(……だから、がんばれ、すみれちゃん)
◆決断
すみれ「……私、もう、逃げない」
すみれ「恋するって、怖いし、傷つくし、報われないかもしれない」
すみれ「それでも――私、“人間のまま”恋がしたい」
バチン、と結界が揺れた。
すみれの角が――崩れ落ちる。
黒い羽が、光の粒となって消えていく。
悪魔化が、解除されていく。
ユウト「……すみれ」
すみれ「……泣いていい?」
ユウト「……うん」
彼の胸に、すみれは静かに崩れ落ちた。
◆そして、また恋が続いていく
その夜。
誰かが“救われ”、誰かが“揺れ”、誰かが“再び想いを燃やす”。
戦いは終わっていない。
恋はまだ、続いているのだから。




