第80話 「わたしは、もう引かない――覚醒する恋心」
◆すみれ視点――夜の葛藤
すみれの部屋。
鏡の中の自分が、まるで他人のように囁いてくる。
『欲しいなら、奪えばいい』
『あなたはまだ本気を出していない』
すみれ「そんなこと……できない。ユウトくんを、傷つけたくない……!」
しかし――胸の奥。
彼と話した記憶、ふれた記憶、笑い合った時間が、熱を帯びていく。
――それを“他の誰か”に奪われるくらいなら。
「私のものにする……っ!」
その瞬間、窓の外の空が“赤黒く”染まる。
◆翌朝・登校
すみれは、まるで“別人”のような雰囲気を纏っていた。
制服は同じ、笑顔も同じ――けれど、その瞳の奥に何かが宿っている。
クラスメイトたちがざわめく。
「すみれちゃん、なんか雰囲気違くね?」
「ちょっと、色っぽい……?」
ユウトも、その変化に気づいた。
ユウト(……なんか、すみれ……いつもと違う)
だが、それが“どんな違い”かまでは、まだ言葉にならない。
◆放課後・すみれの宣戦布告
すみれ「ユウトくん、今日……少しだけ、時間くれる?」
屋上。誰もいない空間。夕焼けの光が二人を包む。
すみれ「ねえ、ユウトくん。恋って、全部が全部……きれいな気持ちだけじゃないよね?」
ユウト「え……?」
すみれ「独占したくなることもある。誰にも渡したくないって思っちゃう。ずるい気持ちだってある。でも……」
すみれ、真っ直ぐにユウトを見つめ――
「私、もう止まらないよ。ユウトくんの“全部”が欲しい」
風が吹く。彼女の影が、少し“揺らぐ”。
まるで、黒い羽根のように。
◆イオリ、異変を察知する
イオリ(……風の流れが、違う)
遠くからすみれの気配を感じ取り、目を細める。
イオリ「“人ならざる力”……これは、まさか……」
彼女の中のロジックが、すみれの覚醒を“悪魔化”と断定し始める。




