第65話 「この気持ちが、私を変えてしまうなら――」
◆すみれ視点:文化祭の夜、誰もいない屋上にて
(文化祭の喧騒から抜け、ひとりで屋上に立つすみれ)
すみれ(……なんで、こんなに胸が苦しいんだろう)
すみれ(ユウトくんと笑って、話して、触れて――それだけで幸せだったのに)
(手には、フォトブースで撮った“ふたりの写真”が)
すみれ「……『一番になっちゃ、ダメ?』なんて。あれ、冗談のつもりだったのに……」
(風が吹き、写真が飛びそうになる。慌てて握りしめる――)
その時。
背後から、黒い霧のような何かが忍び寄る。
???「――願いが強ければ強いほど、人は“変わる”んだよ」
すみれ「……誰?」
(背後に気配。振り向いても誰もいない。けれど確かに“囁き”が脳に響く)
???「キミの中にあるその感情……嫉妬、欲望、渇き。
それは、正義でも、理性でもない。けれど――とても人間らしい」
(足元に、黒い影が滲む)
すみれ(……ダメ。おかしい。こんなの、私じゃない――)
???「でも、“恋”って、そういうものじゃない?」
(その言葉に、すみれは反射的に否定しようとする――が)
すみれ「……恋って、こんなに……苦しいもの、なの……?」
(影が心の隙間に入り込む)
???「その痛みを、解放してあげよう。
キミが“彼を奪いたい”と思うなら、その力をあげる」
◆視界が赤黒く染まりかける
すみれ(やめて……こんな感情、こんな姿、ユウトくんには見せたくない――)
???「でも彼は、まだ“選んで”くれない。
このままじゃ、誰かに奪われる。黙って見ているだけでいいのかい?」
すみれ「――……やだ……ユウトくんが、誰かのものになるの……見たくない……!」
(その瞬間――すみれの瞳が、一瞬だけ赤く染まる)
???「いい子だ。じゃあ、その力を使ってごらん。
恋の戦いに勝ちたいなら、遠慮なんていらないよ――」
◆場面転換:文化祭の終盤、控え室前にて
(ユウトが教室に戻ろうとしたその時、前方からすみれが現れる)
(いつもの笑顔、けれど――なにか違う)
ユウト「……すみれ?」
すみれ「ユウトくん、少しだけ……時間もらえる?」
(微笑みはいつも通りなのに、目だけが少し冷たいように見えた)
(その背後――一瞬、黒い靄が揺れる)




