第63話 「優しい略奪者、すみれ」
◆文化祭前日・校舎裏にて
(陽射しの下、風がそよぐ午後。ユウトは一人、準備を抜け出している)
ユウト「……はあ、やばいな。
最近、誰か一人と話すだけで視線が刺さる気がする」
(そこにすっと、すみれが現れる。変わらぬ爽やかな笑顔)
すみれ「逃げた?」
ユウト「サボった、が正解かな」
すみれ「じゃあ、罰を与えようか」
(そう言って、制服の袖をくいっと引っ張る)
すみれ「――私と、今からデートして?」
◆すみれと秘密の“おためしデート”
(人気のない購買前、空き教室、非常階段…)
(どこへ行っても、誰にも邪魔されないように、
まるで“仕組まれていたかのように”静かだ)
すみれ「文化祭って、きっと誰かが誰かを誘うための口実でしょ?
だったら本番前に、“予行練習”くらい、しておいて損はないよね?」
ユウト「……すみれ、今日はなんか雰囲気が……」
(すみれ、足を止めて、ユウトをまっすぐ見つめる)
すみれ「――お願い。今日だけは、私のこと、ちゃんと見て。
“誰かの一番”になる練習、したいの」
(その声は優しくて、でもどこか切実で――)
◆その夜、ヒロインたちの“不穏察知”
◆イオリ
(資料室で読書をしながら)
イオリ「……気配が、変わった。
この不安定な感情の膨張――すみれ。まさか」
(ページを閉じ、すっと立ち上がる)
イオリ「私が先に気づいてしまったのなら、手を打つべき」
◆真昼
(自室でスマホを眺め、ふと気づく)
真昼「ユウトくん、今日……誰とも話してなかったのに、帰りが遅い」
(表情が険しくなり、思わず立ち上がる)
真昼「まさか……!?」
◆ユキ
(ぽやっとした顔のまま、ペンを止めて)
ユキ「んー……すみれちゃん、今日の放課後、なんか……」
(ペンの先を口元に当てながら、微妙に目が鋭くなる)
ユキ「もしかして……フライング、しちゃった?」
◆そしてすみれは決意する
(その夜、部屋。鏡に向かって微笑みながら)
すみれ「もう、“譲る”理由なんて、どこにもないんだよ」
「私はちゃんと恋をした。だから、奪いにいくのは――当然のこと」
(その瞳に、うっすら赤の煌めきが浮かぶ)




