第62話 「恋を知った“すみれ”に、悪魔が囁く」
◆放課後の図書室――すみれとユウト
(すみれ、静かな笑顔で)
すみれ「……やっぱり、ユウトくんって不思議だよね。
あんなにたくさんの女の子が近くにいるのに、自分から誰も選ばない」
ユウト「……俺は、その資格がないから」
すみれ「じゃあ、私が“選ばれる方法”を考えてもいい?」
(ユウト、ぎこちなく笑う)
ユウト「……また妙なことを言うな、すみれは」
(すみれの笑顔が、一瞬だけ――“影”を帯びる)
◆その夜、すみれの部屋
(窓の外。月明かり。すみれ、日記帳を開きながら)
すみれ(モノローグ)
「ときどき、すごく怖くなる。
この“気持ち”が、私の中を壊していくんじゃないかって」
「でも――壊れるって、悪いこと?」
(ページに、真っ黒なインクで書かれた文字)
『ユウトくんを守りたい。でも、誰かと分けたくない』
『みんな消えてしまえばいいのに』
『私がいちばん近くにいたい』
(すみれ、ハッとしながらページを閉じる)
すみれ「……私、こんなこと……思っちゃダメなのに」
(でも、胸の奥で何かが囁く)
(優しい声で、でもどこかぞわりとする声で)
???「――それは“本当の気持ち”だよ、すみれ」
◆深夜、悪魔の影と対面するすみれ
(夢の中。誰もいない教室。彼女の前に現れる“影”)
悪魔の影「君の心にある“純粋な願い”――それこそが、私たちを育てる糧だ」
すみれ「……あなた、誰?」
悪魔の影「君自身さ。
“誰にも壊されたくない”という願いが、“君を壊していく”。
それが、恋ってやつだよ」
(影がそっと彼女の頬に触れようとする)
悪魔の影「さあ――その手で、欲しいものを奪いなさい。
彼の隣を、“君だけのもの”に」
(すみれ、震える手で影に触れる)
すみれ「……私、怖い。
でも、それでも……もし、この気持ちが本物なら――」
(瞳の奥に、わずかに赤い輝き)
◆次の日の朝、登校中のユウトとすみれ
すみれ(笑顔のまま、いつもと同じトーンで)
「ねえユウトくん、“恋をしてる人”って、どこまで自分を許せると思う?」
ユウト「……許す?」
すみれ「たとえば――他の女の子に触れたあなたを、“笑顔でいられる”人って、強いのかな。
それとも……“壊れてる”のかな?」
(その目は、笑っているのに……何かが違った)




