第60話 「そして少女たちは気づいてしまった/夜に揺れる、彼の心」
◆放課後の中庭――各ヒロイン視点、交差
すみれとのツーショットを目撃したのは、ひとりではなかった。
アリサ(木陰でジュース缶を握りしめながら)
「……ふーん、あの笑顔。
“ふざけた後に真剣な顔を見せる”の、私の専売特許だったのになあ?」
イオリ(屋上から遠目に双眼鏡で観察)
「感情の密度、視線の方向、間のとり方――
……統計的に言って、彼は“ときめいた”。
……恋愛確率、74%。」
ユキ(いつのまにか後ろから)
「……うーん……おでこ、触ってみようか迷ったんだよね……でも先越されちゃった感じ~?」
真昼(夕暮れの階段で、制服のリボンを握りしめながら)
「先輩……私も、“特別”を、あげたいのに……!」
◆ユウトの部屋・深夜
ユウトはひとり、暗い部屋で鏡の前に立っていた。
ユウト「……何なんだ、俺は」
手の甲に浮かび上がった、黒い紋様。
明らかに“異変”の兆候。
戦うたびに少しずつ侵食される、心と身体。
ユウト(でも――今日、すみれの手に触れたとき)
(悪魔の囁きが、一瞬だけ、かき消えた気がした)
◆ユウトの独白(葛藤)
ユウト「“恋”が……俺を救う?
……そんなバカな話……でも……」
(脳裏に、これまで出会った少女たちの笑顔が浮かぶ)
・アリサのふざけた笑いと、その奥の本気
・イオリの知的な瞳と、たまに見せる微かな動揺
・ユキの天然めいた温もりと、ぽつりと漏れる鋭さ
・真昼のまっすぐな好意と、揺れる勇気
・そして――すみれの透明なときめき
ユウト「……もし、“俺が壊れていくこと”が、
彼女たちを巻き込むことになるなら――」
(拳を握りしめる)
ユウト「……俺は、恋なんか、しないほうがいいんじゃないのか?」
◆そして、扉の外――
イオリ(ドアの前で立ち止まり、手をかけたまま)
「……聞こえたわよ、ユウト。
“しないほうがいい”って――
そんなの、選ぶのはあなただけど。
……私は、“それ”を、許さない」
(目を伏せ、優しく笑う)
「だって、恋をすることは、弱くなることじゃない。
誰かを想うって、こんなにも“強く”なることなんだから」




