第6話「恋のトリガー、神魔融合(ラブ・シンクロ)」
悪魔・ヴァラスとの激戦から一日。
王都の一角、傷の癒えぬまま、俺たちは新たな脅威の報告を受けていた。
「……“神魔融合体”が出現したって?」
俺が聞き返すと、ユキは頷いた。
「正確には、神性と魔性を人工的に掛け合わせた“超存在”。
元は王国の対悪魔兵器計画……でも、制御に失敗して暴走。今は完全に敵よ」
「そんなもん作るなよ王国……!」
思わずツッコミが漏れるが、そんなこと言ってる暇はない。
「場所は?」
「北の第六聖域跡。旧教団の遺構ね」
そう言った瞬間――セレスの顔が曇る。
「そこ……私が育った修道院の近くよ……」
沈んだ表情に、胸がざわついた。
「なら、行くしかないな」
◆ 神魔融合体、襲来
第六聖域跡に着いた俺たちの前に、奴は現れた。
全身を白銀の鎧で覆い、背に翼と角。
そして――顔は、人間の少女のような美しさを持っていた。
「……ようこそ、調律者たち。私は、アリア=コード000」
「えっ、しゃべった!?」
「神性:創造。魔性:破壊。あなた方の“感情”を観測し、最適解を算出します」
「はああああ!? 観測ってなに!? 怖ッ!」
リリカが叫ぶ。次の瞬間、アリアの瞳が光り――
ドオオオオン!!!
炸裂する衝撃波に、俺は吹き飛ばされかけた。
「ちょ、やばい! ステータス上じゃ絶対勝てねぇ!!」
ユキが冷静に分析する。
「この敵、魔性抑制だけじゃダメ。むしろ逆――“感情”を使わないとダメージが通らない……!」
「感情? どうやって……!」
そのときだった。
◆ 神魔融合発動
セレスが、俺の腕を掴む。
「ユウト……お願い、私と“心を重ねて”。
あなたの力になりたい。今度は、私があなたを支える番……!」
眩しい光が、俺とセレスを包む。
《条件達成。感情リンク:確定》
《神魔融合:起動》
「うわあああ!? なにこの恥ずかしいネーミングッ!!」
でも――力が、湧いてくる。
セレスの想いが、俺に流れ込んでくる感覚。
心が――繋がった。
「セレスッ! 一緒にいくぞ!!」
「うんっ!」
その一撃は、今までのどんな技よりも重く、鋭く、美しかった。
アリアの防御が、一気に砕ける。
「感情出力……予想以上……ッ。対処アルゴリズム、再計算……」
◆ リリカ、ユキも続く
「ずるいよ! あたしもやる!!」
リリカが走ってきて、俺の手を両手で握った。
「ラブ・シンクロ! 発動してぇえええ!!」
《感情リンク確認:リリカ・フレイムハート》
《神魔融合・炎熱恋撃》発動
「うわ、なんか技名も勝手にノリノリなんだけど!?」
でもすげぇ威力だった。
そして、ユキも一歩前へ。
「……私も、一応“確認”するって言ったから」
そっと俺の背に手を添える。
「一時的なリンク、許可するわ。“これ”が私の答えよ」
《感情リンク確認:ユキ=クラウス》
《神魔融合・氷結連想》発動
戦場に、炎と氷と祈りが舞う。
「よし……行くぞ、トリプル・ラブ・シンクロッ!!」
「恥ずかしい技名はやめてえええええ!!」
◆ 決着、そして残されたもの
融合した力で放った最後の一撃が、神魔融合体アリアを貫く。
彼女は静かに、微笑んだ。
「……観測終了。
あなたたちの感情は、確かに――美しかった」
そのまま、光となって消えていった。
● 終章:三人の少女たち
戦いのあと、三人の少女たちは、それぞれ思いを馳せていた。
セレスは、胸に手を当てながら。
「私の想い……ちゃんと届いたよね……?」
リリカは、ツンとしながら。
「次こそ、名前付きスキル出すくらいラブラブしてやるんだから!」
ユキは、ただ静かに。
「……感情、か。
私には……まだ、早いわね」
けれど、その横顔は、どこか少しだけ赤かった。
● 次回予告風
“想い”が力になるなら――
この先に待つのは、誰の想いが“選ばれる”のか?
次回、第7話
「ヒロイン会議、恋とバトルと修羅場と」
三人の乙女、ついに爆発!?
勇者、追い詰められるッ!