第59話 「恋の火種と、堕ちる兆し」
◆旧校舎・屋上
放課後。
夕焼けに染まる屋上に、ふたりだけ。
すみれ「……先輩、さっきの戦いのこと、話してもらってもいいですか?」
ユウト「……何を聞きたいんだ?」
すみれ「“なぜ”、あんなふうに戦えるのか――
そして、“なぜ”そんなに悲しそうに戦うのか、です」
ユウト(しばらく黙ったあと、小さく笑う)
「――俺には“剣”しかない。
……誰かを守れる力があるなら、それを手放したくはないんだ。
たとえ、それで――自分が、“人間じゃなく”なっていっても」
◆すみれの胸に灯る、名もなき想い
すみれ「……そんなの、ずるいです」
ユウト「え?」
すみれ「“誰かのために戦う”って、すごくかっこいいんです。
でも、それで自分が傷ついて、笑って済ませようとするのは……ずるい」
(そっと、彼の手に自分の手を重ねる)
すみれ「せめて……私は、“今のユウト先輩”を知っておきたいです」
◆ユウト、胸に残る“痛み”とざわめき
ユウト(――心臓の奥が、チリチリと熱い)
(すみれの純粋な気持ちが、心に火をつけると同時に――)
ユウト(……まただ。あの“ざわめき”が、戻ってきやがった)
(目の奥が熱を帯び、指先がじわじわと黒く変色していくような感覚)
ユウト(……“力”が、暴れたがってる。
このままじゃ、また――)
◆悪魔の囁き(幻覚)
???「恋をすると、力が溢れるのだろう? ユウト。
さあ、もっと求めろ。もっと踏み込め。
“守りたい”のために、“壊すこと”を恐れるな」
ユウト「――黙れッ!」
(すみれが驚いたように顔を上げる)
◆すみれの告白未遂
すみれ「せ、先輩……? だ、大丈夫ですか……?」
ユウト「……ごめん。ちょっと、疲れてるだけだ」
すみれ「先輩……私、ずっと聞こうと思ってたんです」
(小さく、震える声で)
すみれ「もしも、誰かに想われて……
その想いが、力じゃなくて“支え”になったら。
……先輩は、嬉しいって思ってくれますか?」
(ユウトは言葉を返せない。
心臓の奥にある“悪魔のざわめき”が、それを拒んでいる)
◆そして夜、ユウトの影に
鏡に映る自分の瞳――
その端に、うっすらと赤い光が差していた。
ユウト「……俺の中の何かが、変わり始めてる」
(だがその光は、すみれの手のぬくもりを思い出すたびに、かすかに弱まっていた)




