表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/86

第4話「恋の暴走、魔性の鼓動」

「……ユキさん、ちょっと待って」


俺の前に立ちはだかったのは、神官少女――セレスだった。


「彼は……ユウトは、まだ人間よ。

悪魔の力に侵されてはいるけど、それを使って人を守ってきた。誰よりも、勇者らしく!」


セレスの言葉に、ユキが眉をひそめる。


「感情論ね。

私が見てきた“魔性に堕ちた者”たちも、最初はそう言っていたわ」


「違うッ!!」


セレスが、感情をあらわに叫んだ。


「彼は違うの!

……だって、わたし、ユウトのそばにいたからわかるの。

怖がりで、馬鹿みたいに無茶して、でも誰かを守るって決めたら絶対に止まらない。

そんな人なのよ――彼は!」


俺は……俺は、黙って聞いていた。


心臓の鼓動が、早くなる。


魔性値は、今――18%。


右目の視界が赤黒く染まり、手が震える。

暴走の兆候が、もうそこまで来ている。


でも――


セレスの言葉が、胸に刺さった。


「私は……ユウトのことが……っ」


そこで、彼女の声が震える。

耳が赤く染まり、言葉が続かない。


リリカがニヤニヤしながら背中を押す。


「言っちゃえ言っちゃえー。乙女の決意、ここで見せなきゃね☆」


セレスがぐっと睨んでリリカを一瞬だけ無視したあと、俺をまっすぐ見つめる。


「……ユウト、お願い。

自分を、ちゃんと大事にして。

誰かを守りたいなら――その前に、自分を壊しちゃダメ」


……心が、揺れた。


その瞬間――


警告:魔性値限界点まであと2%。

深層感情により、抑制フィルターを再構築します。

対象感情:「愛」「信頼」「絆」……

魔性値、安定領域に移行します。現在:16%


「……え?」


ステータスウィンドウが、奇妙な変化を告げる。

右目の赤が、少しだけ薄くなった。


「セレス……お前の想いが……俺を止めた?」


セレスが、恥ずかしそうに目をそらしながら、小さくうなずく。


「……よかった。

本当に、まだ戻れるんだな、俺……」


と、そのとき。


ズズン!!


空気が震える。

遠方の街壁の外、地面が裂け、巨大な影が姿を現す。


「第七階位悪魔・“ヴァラス”だと……!」


ユキの声が震える。


「……冗談じゃない。まだ戦いは終わってない」


俺は立ち上がり、剣を構える。


今度こそ、暴走じゃない。


俺の中には、力だけじゃなく――セレスの想いがある。


「行こう、みんな。次は――俺の意志で、悪魔を斬る」


● 次回予告風

恋が、心を繋ぎ止める。

人の想いが、魔性を押しとどめる。


だけど現れたのは、かつて人間だった最凶の悪魔――ヴァラス。


次回、第5話

「堕ちた勇者と、光を継ぐ者たち」


恋と戦いが交差する、転機の一話!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ