第3話 「魔性の暴走と、氷の退魔師」
「……完全に囲まれてるな」
街の北門。石畳の通りを覆うほど、無数の黒い影が蠢いていた。
悪魔。
正確には**“下級悪魔”の群れ**だけど、数が尋常じゃない。
「いったい何匹いんだよ、これ……!」
俺はボロ聖剣を構えた。セレスは祈祷の詠唱、リリカは炎魔法の準備中。
「こんな数、普通の冒険者じゃ絶対に無理よ!」
「ユウトくん、遠慮せずにやっちゃおう! 魔性値ちょっと上がるくらいなら平気だって☆」
「それが怖いんだよぉおおッ!!」
しかし――考えてる暇はなかった。
先に動いたのは、奴らの方だ。
グギャァアアッ!!
地面を割る勢いで突進してくる下級悪魔。
1体、2体、10体――
「来るぞ!!」
俺は剣を振るった。何体かを薙ぎ払うたびに、システムウィンドウが表示される。
悪魔を討伐。魔性値+1%
魔性値累計:9%
魔性スキル【魔眼:紅視】が発動可能になりました。
「っ……くそ、視界が赤い……ッ!」
右目が疼く。見える。敵の動き、弱点、熱源――
便利だけど、危険すぎる。力を使えば使うほど、俺は“そっち側”に近づく。
「ユウト! 大丈夫!? 目が……!」
セレスが叫ぶ。だけど俺はもう止まれなかった。
「……大丈夫だ。俺がやるしかねぇんだ!」
身体が軽い。力が満ちる。
次の瞬間、俺は一瞬で10体の悪魔を切り裂いていた。
「おおおおおおおおッ!!」
「やば……今の動き、人間じゃないって……」
リリカの顔が、少し引きつる。
魔性値が、**15%**に達したときだった。
ズドン!!
「っ!? なに!?」
突如、氷の柱が俺の目の前に突き刺さった。
「……やっぱり、“こっち側”か」
声がした。
冷たく、刺すような声。
上空から舞い降りたのは――銀髪に黒の戦装束をまとう少女。
目つきは鋭く、左手には氷を纏った槍。雰囲気からして只者じゃない。
「名前は――ユキ=クラウス。王国直属の“退魔師”よ」
「退魔師……ってことは……」
「異世界人の勇者とやら、確認させてもらったわ。
アンタ、その力、もう人間じゃない。討伐対象よ」
「はああああああああッ!?!?」
今度こそ、俺の脳内にツッコミスキルが限界突破した。
● 次回予告風
冷徹な退魔師少女・ユキの登場により、
ユウトの“魔性”はついに王国からもマークされることに!?
セレスとリリカとの絆、そして暴走のリスク。
それでも、戦わなきゃ守れない。
「だったら俺が証明してやるよ。
――悪魔の力で、人間を守るってな!」