最終章・第7話 「ひとりを選ぶ夜、すべてを想う夜」
文化祭の夜。
静まり返った屋上に、ひとり立つユウト。
彼は目を閉じて、思い出す。
――笑っていたヒロインたちの姿。
――泣きそうになった彼女たちの声。
――そして、自分の“胸が痛んだ瞬間”。
「……全部、好きだったんだ。
誰か一人だけ、なんて選べるわけがないって、思ってた」
「でも――選ばなきゃ、誰のことも守れない。
誰の気持ちも、本気で受け取れない」
静かに開いたその目に、もう迷いはなかった。
イオリ、現れる
イオリが、凛とした姿で歩み寄ってくる。
「ユウト。私は……あなたを“論理”で好きになったわけじゃない」
「でも、何度考えても、あなたしかいなかった」
「だから、最後にもう一度だけ、聞く。
私を選ばないなら……私、きっと、壊れちゃう」
その言葉は切実で、静かに震えていた。
真昼、現れる
制服のまま駆けつけた真昼は、無邪気な笑顔で叫ぶ。
「ユウトーっ! ぜったい言うって決めたから!」
「わたし、ぜんぶ好きなの! 変なとこも、優しすぎるとこも、
わたしが“ずっと”そばにいたいって思ったの、あなただけなんだよ!」
涙が光る。でも、笑ってる。
それが真昼の“本気”だった。
ユキ、現れる
ふわっとした足取りで、でもどこか緊張した面持ちのユキ。
「……えへへ。こんなとき、何言えばいいのかわかんないね」
「でも、ちゃんと伝える。わたし、ユウトくんのこと……」
「好きです。すごく、すごく――好き」
彼女の声は、小さくも確かだった。
すみれ、最後に現れる
闇から戻った彼女は、少しだけ大人びた表情で、歩み寄る。
「ユウトくん……もう、隠せないよ」
「あたしね、やっぱり、ユウトくんじゃなきゃダメだった」
「“悪魔”とかどうでもいいの。あたしは……あたしは、“恋”がしたいの。あんたと」
すべてのヒロインが、想いを告げた。
沈黙が落ちる。
そして――
ユウトは一歩前に出て、口を開く。
「……俺は――」