最終章・第5話 「すべての想いに、答えを」
文化祭の夜。
祭りの余韻が漂う校舎の屋上には、静かに夜風が吹いていた。
その中に立つユウト。
胸の奥が、ずっとざわついていた。
誰かを選ぶということは、誰かを選ばないということ。
彼にとって、それは「最もしたくないこと」だった。
けれど今、向き合わなければならない。
「俺……誰も傷つけずに、なんてこと、できないんだな」
「でも――それでも、気持ちに答えを出さないといけないんだ」
――そんな彼の前に、1人目のヒロインが現れる。
イオリ
「……来ちゃった。ここに来たら、何か変われる気がして」
「ねえ、ユウト。私の“感情”って、たぶん君が思ってるより、ずっと重たいよ?」
「それでも、選んでほしいって思ってるの。……ごめんね」
ユウトが何かを言いかけた時――
真昼
「いたいた! ったく、待ってろって言ったのに!」
「……もうさ、覚悟決めた。
あたし、あんたのことずっと前から“好き”だったの。ウザいくらいに」
「だから、今日くらい……あたしにチャンス、ちょうだいよ」
ユキ
「えへへ……わたし、勝てる気はしないんだけど、でも……」
「“好き”って言いたいから、来ちゃった。
ユウトくんのとなりで、バカやって笑ってたいんだ。……それって、ダメかな?」
そして、最後に現れたのは――
すみれ
制服のまま、風に揺られる髪。
そして、もう“影”のないまっすぐな瞳。
「あたし、やっと“自分”に戻れた気がする」
「悪魔でもなんでもなくて……ただの“すみれ”として、言うよ」
「ユウトくん。あたし、君に恋をしてる。……今でも、ずっと」
ヒロインたちは並ぶようにして、ユウトを見つめる。
彼は一歩、踏み出す。
「俺、いま、ちゃんと気づいた。
“誰を選んでも間違いだ”って思ってたけど――
ほんとは、“誰を選ばなきゃ嘘になる”んだって」
「だから、今から……答えを出す」
――彼がその名を呼ぼうとした瞬間、
ルシアの声が、闇からささやいた。
「……素敵ね。人間って、愚かで愛おしい」
「でも――この物語、まだ“終わらせない”わ」
そして。
ルシアの瞳に、すべてのヒロインの“心の奥底”が映し出される。
「あなたたちの“恋”の底にあるもの。
ほんとうに、それは“幸福”かしら?」
夜の風が止まる。