最終章・第4話 「“本当の悪魔”と、私の恋」
――その“影”は、すみれの中に住んでいた。
それは、誰にも言えなかった思い。
誰にも救ってほしくなかった孤独。
そして――「恋なんて、いらない」と拒絶する、すみれ自身。
「あは……あははっ……どうして、こんなことになってるのかな?」
「ユウトくんを“好き”になるなんて、ほんとは、思ってなかったのに……っ」
その叫びが、結界の中心に“実体”を作り出す。
黒いドレスを纏い、すみれそっくりな“影のすみれ”が現れる――!
「私は、あなた。
あなたが抑え込んできた“恋の恐れ”の全部。
裏切られたくない、傷つきたくない、愛されたくない――そう願った本音。」
影のすみれが指を鳴らすと、周囲に呪いの結界が展開される。
そして、ルシアが静かに告げる。
「……ようやく、お目覚めね。
“恋”の名を借りた執着が、いかに醜く、いかに脆いか――。
あなたたち全員に、身をもって教えてあげるわ」
――だがその時。
「それでも、俺は好きだ」
ユウトが立ち上がり、ボロボロの制服のまま、前に進む。
「傷ついてもいい。裏切られても、怖くても、
それでも……俺は、君を好きでい続けたい」
「恋ってのはさ、
“意味がなくても手を伸ばすこと”だろ?」
その言葉に、すみれの本体が微かに震える。
(ユウトくん……バカみたいにまっすぐで、でも……ほんとに、あったかいんだ)
――そして、ヒロインたちも続く。
■ イオリ:「知性で分析するには、もう限界……でも、それでもいい。
私はこの感情を、“好き”って呼ぶって、決めたから!」
■ 真昼:「ずっと怖かったよ。あんたが誰かを選んじゃうのが。
でも、あたしも自分の気持ちに、もう嘘つかない!」
■ ユキ:「えへへ……私、バカかもだけど……“一緒にいたい”って思うことって、
そんなに悪いことかな……?」
三人の光が、闇の結界を打ち破るように走る。
「やめて……お願い……そんなに、優しくしないで……」
(だって、わたし……そんな資格、ないもん……)
でも――ユウトは、すみれに向かって静かに手を伸ばす。
「資格なんていらない。君が泣いてるなら、俺は手を差し伸べる。
たとえ、その手が悪魔に染まっていたって、君は……“すみれ”だから」
そして。
すみれの涙が、すっと頬を伝う。
――その瞬間、影が悲鳴を上げ、消滅する。
「ああ……わたし、ようやく……恋を、してたんだ――」
悪魔の翼が、風に散っていく。
すみれはその場に倒れ、ユウトが静かに抱きとめる。
「ありがとう……迎えに、来てくれて……」