最終章・第1話 「すみれ喪失(ロスト)」
――文化祭、エピローグ。
わずかに雨が降った翌朝。
屋上に集まったのは、誰もがそれぞれの告白を果たせなかったままの、
ヒロインたちと、そしてユウトだった。
けれど――すみれの姿は、そこになかった。
「ねえ、ユウトくん……昨日、すみれちゃんと、何か話した?」
真昼がそっと尋ねる。
「……いや。話せなかった」
うつむくユウトの声は、どこか空っぽだった。
文化祭最終日、終わり際にすみれは
「また、明日ね」とだけ笑って去っていった。
――あの笑顔に、違和感は確かにあったはずなのに。
彼女の“気配”は、その夜を最後に、町からも、記録からも――消えた。
シーン転換:夕暮れの放課後、旧校舎の裏手
ヒロインたちも動揺を隠せず、それぞれが彼女を探しに出るが、
どこにも痕跡は見つからない。
そのとき、ユウトのもとにふいに現れたのは――ルシア。
「……彼女は、ここにはもういないわよ」
「お前、何か知ってるのか?」
「……あの子はね、最後に願ったの。“もう、ユウトには笑って会えない”って」
ルシアの口元に浮かぶ、微笑にも見える哀しみ。
「この町で“愛”は力になる。でも――“絶望”もまた、強大な魔を生むの」
ユウトの心中描写
焦燥。後悔。怒り。そして――
何より、“あの笑顔”が脳裏に焼き付いて離れない。
『俺は、逃げてた。誰も選べないって、そう言えば傷つけずに済むって。
……でも――すみれを、あんな顔にさせてまで守った“優しさ”なんて、偽善だった』
文化祭エピローグは、誰も勝てなかった戦場。
だが、すみれだけが――消え去った。




