四話 俺なんかやっちゃいました?
ゴツい顔の人は膝をついてこちらに敬意を示してきた。
「これはアルグレイド第一王子。私この国の近衛魔法師団副団長ナビスと申します。そして、私が正確には私たちが貴方様の魔法の先生となるものです」
えぇ!このゴツい人が⋯
命が何個あっても足りないよ!
まあ、命は幾らでもあるんだがな。ハハハ
って笑い事じゃねぇよ。この人物が魔法の先生?近接の戦士にしか見えんのだが⋯
いや待て、私たちはと言ったなまだ希望はあるはずだ!
「あの私たちはということは他の方がいらっしゃるのでしょうか?」
「はい。私共の団長ライカ様がいらっしゃいますがそれがどうかしましたか?」
やったー!別の人いた!名前的に女の人だろう。
ありがてぇ
「しかし、団長は今遠征中で二週間は戻ってきませんからそれまでは私と団員たちがお相手しましょう」
あ、オワター。二週間はきついよー。
千回は死ぬんじゃないか?
冗談抜きでまじで、ほんとに、ほんとのほんとに!
「では手始めに魔法の基礎を覚えましょう。まず、魔法何の属性でもいいので弓をイメージしてみて下さい」
弓、弓、弓は昔使ったことあるからイメージがつけやすい。
「最初はできないでしょうが⋯」
「出来ました」
「ってえぇ!もうですか?普通初心者ならもっと時間が⋯」
「いや普通にできましたよ?」
「そ、そうですか⋯ところで属性は?」
「光です」
光が一番扱いやすいんだよなぁ。
「ぶふぉぉ」
「どうしたんですか急に吹き出したりして」
「あ、いえお気になさらず。では試しにうってみていただけますか?」
「分かりました」
反動で自分が死なないように結界を張って、的に向かって⋯あ、駄目だ⋯的に撃ったら王宮潰れちゃうな。
アルは魔法の威力が強すぎて王宮の一部を崩壊させるという伝説を持っている。
(上に撃とうそれなら大丈夫でしょ)
アルは魔法弓を上に構えて打ち上げた。
「素晴らしいです。アルグレイ様。このナビス感服しました」
「そうですか。それはよかったです」
(俺が死ななくてほんとによかったよ!)
内心では、全く違う事を考えているアルだった。
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ある屋敷の一室少女は呪いと戦っていた。
彼女の名はオーレリア・フォン・スノウラウル。
スノウラウル公爵家のご令嬢だ。
そんな彼女は呪いのせいで十歳という余命宣告を受けてしまった。
彼女の父カルト・フォン・スノウラウル公爵は彼女の手を握っていた。
「お父様私夢を見ましたの⋯」
「どんな夢だい?オーレリア」
「王子様が私を助けてくださるのです。そしてその方と結ばれるのです」
「そうか、現実になるといいな⋯オーレリア今日はお休み」
カルトはそう言う部屋を出た。
そしてしばらく歩いたあと拳を壁に叩きつけ、
「邪竜などいなければあの子は⋯オーレリアは⋯」
これは悔し涙だ。
不甲斐な父を許しておくれオーレリア。
その後自室に戻り何もするわけでもなく呆然と押していると慌ただしく執事が入ってきた。
「ご主人様失礼します」
「どうした?」
「あのそれがですね⋯」
「どうしたのだ。何もないなら追い出す」
「邪竜が討伐されました⋯」
「...?もう一度頼む」
「邪竜が討伐されました。王城から放たれた一本の矢によって一撃で」
「えぇぇぇぇぇー!私は夢を見ているのか?あの邪竜が討伐された。それはつまり⋯」
「お嬢様の呪いも解けたものかと」
カルトは思わず声を上げてしまった。
「アイザック、矢を放ったのは誰だ?今すぐに感謝を伝えたい!」
執事のアイザックは戸惑いながらも
「それが矢を放ったのはアルグレイド・ユナ・アイデール第一王子様です⋯」
「えぇぇぇぇぇー!アルグレイド様が。あの方は呪いの影響で病弱なはず」
カルトは公爵家の人間多少なりと事情は知っているだからこそ驚いた。
「それが、近衛魔法師団副団長ナビス殿がこの目で見たとおっしゃっていのです」
話をしていると扉が開かれ
「お父様!」
「オーレリア呪いが解けたのか!」
「そうでございます!失礼ながらお話は聞かせてもらいました!アルグレイド様いい響きですわぁ〜。今すぐにでも婚約したいでございます」
とうっとりしながら言った。
「よし、アイザック今から出る。支度を進めよ」
「承知しました」
と一礼したあと部屋を出た。
アルグレイドはこんなことになっていることをまだ知らない。