三話 一階に降りるまで⋯
⋯そういえば、今日は魔法の先生が来るんだったぜ。
苛つきすぎれ忘れてたわ。
と言ってもどうしたものか。
アルは階段の前で立ち尽くしていた。
「まあ、一回ね。一回試してみよう」
と手すりをもちながら階段を降りようとするがまあうん死んだ。
もう死ぬのが当たり前になってきているのは正直自分でもやばいと思う。
「一定の高さから降りるのも駄目なんだよねぇ〜」
今のアルの身長は階段に百センチ程度である。
それに対して階段一段あたりの高さは二十センチほど。一段降りるだけででも大変だ。
階段にお尻をつけてゆっくりと降りなければいけない。
あまりにも非効率!不条理にもほどがあるわボケェ!
なんで階段一段で死ななきゃいかねえんだよ!
「なんか移動にいい魔法とかないかな〜」
アルは魔法欄を漁っていた。階段が降りれないい以上これしかやることがないのである。
え?使用人に下ろしてもらえって?そんなの面白くねえだろうが!
アルは魔法欄を漁っているうちにある魔法を見つけた。
「転移魔法か!これから普通に移動できるんじゃないか?さっそく試してみよう!」
『転移』
とさっそく試してみる。
ん?体が動かないしやけに視点が高いような?
アルが自分の体を振り返ると壁に体が埋まっていた。
「⋯ふざけんなよまじで!」
アルは渋々自分の顔を殴り自害しようとしたが
「⋯あれ?死なんな。ならもう一回」
と頬を叩いてみる。
「やっぱりなんでぇ?」
今度は代わりに頭を壁にぶつけてみた。
するといつも通り死ぬ感覚があり、その後視点は少し前の時まで戻った。
どうやらこのスキル俺が死ぬと時間ごと巻き戻っているようだ。
これのお陰で行動に矛盾が起きなくて済んでいる。
「練習あるのみだな⋯」
それからはというもの、下半身が埋まったり、壁に全身が埋まって窒息死したり、外に出れたと思ったら頭から墜ちたりと散々なものだった。
そして挑戦81回目ついに
「やったー!成功したぞ」
ついに転移魔法をマスターした。
てか、王宮内移動するだけでこれってま?
俺なんか死なんと行けないんだよ⋯
実際今日だけで八十二回死んでるわけだし⋯
もう八十二回死ぬってなんだよ。の人間じゃねえじゃん。マ◯オでもそこまで死ぬことないやろ。
「まあ、ともかく庭に降りれたわけだし言われた場所まで移動しよっと」
とスキップで移動しているとコケた。
「あべし」
まあ死ぬよねぇ〜
でも意識は庭の時点までしか戻らなかった。
「セーブあるんだ⋯正直助かる」
いちいち転移するのはめんどくさいし⋯
アルは今回はゆっくりと歩いて移動して行くことにした。
「どんな人かな?優しい人だといいけど」
と角を曲がった瞬間、顔がゴツい人と目が合った。
「ヒッ」
アル、またまたショック死。
「なんじゃありゃー!ごつすぎだろギャグ漫画じゃん
!次は目を合わせないで行こうっと」
アルは今度は下を向きながら歩いていった。
(話しかけられませんように話しかけられませんように
)
「失礼。お名前をお聞きしても?」
アルはそう願いながら歩くも残念。話しかけられた。
「ア、アルグレイド・ユナ・アイデールですぅ〜」
アルはへなへなになりながらもなんとかショック死を回避した。褒めてほしいぐらいだ。
このときのアルはこの人物が魔法の先生だとは思ってもいなかった。