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幼馴染にフラれた日、ヤケクソで助けた男の子の姉がクラスのお姫様だった 〜お姫様直々のプロデュースで、幼馴染を見返します〜  作者: 桜 偉村
第八章

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94/99

第94話 最後の一枠

明けましておめでとうございます!

昨日は家族旅行の真っ最中で投稿できず、すみませんでした。その代わりと言ってはなんですが、本日20:35頃にもう一話投稿する予定なので、そちらもぜひお楽しみに!

今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

「彩花、草薙君。奥に六人席あるから座ろうよ」


 ファミレスへ入店すると、美波が翔と彩花を振り返り、奥を指差した。


「そうだね」

「了解」


 翔と彩花に異論はなかった。

 美波と一緒にいた葵と小春は、すでにそちらへ向かっている。


「彩花たち、ソファー席でいいよ」

「ほんと? 篠原さんと佐藤さんはソファーじゃなくていい?」

「全然いいよ」

「大丈夫」


 葵と小春は、彼女たちにしては無難な返事をした。

 普段から一緒にいる美波ではなく、彩花相手なのだから、距離感が違って当然だろう。


 横一列に並んだ三つの木製の椅子に、奥から美波、葵、小春の順で腰を下ろしていく。

 テーブルを挟んで反対側のソファー席も、当然三人掛けだ。


(詰めて座るにはもう一人必要か。けど、潤は野球部のやつらと固まるよな……)


 翔がふと周りを見回したときだった。


「——そっち、一人余っているのかい?」

「——蓮見さん、一緒にどう?」


 将暉がスッと彩花のそばに寄ってくるのと同時に、彩花が所在なさげに佇んでいた菜々子に声をかけた。

 しかし、次のアクションに移ったのは、わずかに彩花のほうが早かった。


「嫌じゃなかったらだけど、女の子の割合多めだし、どうかな?」


 自然な口調で言葉を続ける。

 将暉の声が聞こえていたのかどうかは、翔にはわからなかった。


「じゃ、じゃあ……お邪魔します」


 菜々子はちらっと将暉を窺ってから、おずおずとうなずいた。

 少なくとも彼女は、将暉の動きに気づいていたらしい。


「どうぞどうぞ」


 彩花がソファーの奥、右端を示した。


「草薙君は、特に奥へのこだわりはないよね?」

「どこでもいいよ」


 彩花の問いかけに、翔は首を縦に振った。

 あえて、将暉のほうは見ないようにした。


「——うん。そっちはちゃんと埋まったみたいだね。それなら、僕は予定通りこっちでいいかな」


 将暉は腕を組みながらそう言った。

 まるで、誰かに状況を説明するような口調だった。


(これは……少なくとも俺には言ってないよな?)


 翔は迷っているうちに返事をするタイミングを逃してしまった。

 将暉に、特にこちらの反応待ちをしている様子はない。独り言だったようだ。


 位置的には、菜々子の次は翔が続くはずだった。

 しかし、歩き出そうとしたところで、彩花にポンっと肩を叩かれる。


「双葉?」

「ううん」


 彩花は首を振ると、立ち止まった翔を追い抜き、菜々子の左に座った。


(俺が真ん中でもあんまり変わらないと思うけど……)


 翔には、いまいち彩花の意図が掴めなかった。

 人見知りの気質がある菜々子の周りを女子で固めて、安心させようとしたのだろうか。そういえば先程も、女子の割合が多いと勧誘していた。

 それとも——


「ほら、草薙君。座った座った」


 彩花がちょいちょいと手招きしている。

 翔が隣に座ることを微塵も疑問に思っていない様子だ。


(……まあ、勉強会でもそうだしな)


 それなのに、慣れない大人数の場だからだろうか。

 翔は少しだけ落ち着かない気持ちになりながら、促されるがままに腰を下ろした。




◇ ◇ ◇




「あ、間違い探し。懐かしいな」


 食べ物とドリンクバーを注文してメニューを戻したところで、翔は左右のページに同じような絵が描かれている冊子を発見した。

 最後にやったのは、いつだったか思い出せないほど昔の話だ。


「草薙君はまだそういうのが楽しいお年頃なんだね」


 隣で彩花がくすっと笑った。


「懐かしいって言ったの、聞こえなかったか?」

「全然いいと思うよ。なんでも楽しめる人が最強だし」

「人の話を聞け……というか、そういう双葉こそ、実はやってみたいんじゃないのか?」

「ま、まさか、そんなわけないじゃん」

「へぇ、そっか」


 今のつっかえ方は、少し怪しい気がする。


「——独り言だけど、前に一緒に食べに来たときは、私の話もそっちのけに睨めっこしてたなぁ」

「み、美波!」


 彩花が声を裏返らせた。

 一番奥の席に座っている美波は、悪びれもせずにストローをくるくる回しながら、口角を上げている。


「ということは、双葉は好きだけど苦手ってわけか、間違い探し」

「今の言い方、なんか腹立つな……草薙君は得意なの?」

「あんまり負けた記憶はないな」

「なら、勝負しようよ」

「いいけど」


 まだこういうので負けるのが悔しいお年頃なんだな——。

 翔は喉まで出かかった言葉を必死に飲み込んだ。


 テーブルの真ん中に紙面を置き、二人で覗き込む。


「一個、二個……あ、三個目」

「ちょ、ちょっと、早くない⁉︎ あ……まさか、嘘ついてプレッシャーかけてないよね?」

「そんな狡い真似はしないよ。四個目——あ、五個目」

「うそでしょ……っ」


 彩花の瞳が忙しなく右往左往する。

 翔は淡々と探し続けながら、笑いが漏れそうになるのを喉の奥で押し戻した。


「あ、五個目っ、あと半分……!」


 彩花が小さく拳を握る。

 それと同時に、翔は前のめりになっていた上体を起こした。


「双葉、終わったぞ」

「ほ、ほんとに?」

「おう」

「……ちょっと指差してよ」

「いいぞ。まず、ここのフォークの形が違うだろ。それからコックの帽子の大きさが違くて——」


 翔は一つずつ説明していく。

 彩花は真剣に追いながらも、だんだん眉間にしわが寄っていった。


「で、最後はフォークの先が二本しかない。ほら、ちゃんと十個だろ?」


 翔が説明を終えると、彩花はほんのり眉を寄せた。


「……この集中力、テストで発揮すればいいのに」

「じゃあ、次のテストまでに俺は勉強、双葉は間違い探しの特訓な」

「そこ同格じゃないから」


 彩花が肩をすくめ、頬を緩めた。

 元々、本気で拗ねていたわけでもないのだろう。


「そっち、めっちゃ盛り上がってるね」


 隣の卓から声が飛んできた。

 宮城が頬杖をつき、穏やかな表情をこちらに向けていた。


「うん。——約二名がね」

「「っ……」」


 美波の返答に、翔と彩花は揃って息を呑んだ。


(……今のは、よくなかったな)


 他の四人のことを忘れていた、とまでは言わないが、周りが見えていなかったのは事実だ。

 翔はストローを一気に吸い上げると、空のグラスを手に立ち上がった。


「俺、飲み物取ってくる。……双葉もいるか?」

「う、うん。オレンジジュースで」

「了解。蓮見は?」


 翔と同じタイミングで飲み干した彩花の隣で、菜々子もいつの間にかグラスを空けていた。

 美波や葵、小春のジュースはまだ半分ほど残っているので、単純に喉が渇いていたのだろう。

 それならばもう一杯欲しいはずだ、と翔は手を差し出しかけたが、


「あ……いえ、後で自分で取りに行きます。今はこの一杯で十分なので」

「……そうか」


 菜々子の視線はグラスを見つめたままだ。

 前はあんなに問い詰められたのに、最近はあまり言葉を交わした記憶がない。

 ちょうど、彩花と仲直りをしたあたりからだ。


(まさか、入れ替わりで誰かと距離が遠くなるみたいなシステムじゃないよな?)


 翔が内心で首を捻っていると、美波がわざとらしく口を尖らせて、


「あー、二人にだけ声かけた。贔屓だ」

「三人はまだ残ってるだろ」


 翔の反論に、今度は葵と小春がニヤリと笑い、


「草薙はそんなやつだと思ってなかったよ」

「男女差別反対」

「ただ女子を区別しただけだから」


 そもそも同じ卓に翔以外の男子はいないため、現場で男女差別をする余地はない。


(……って、そういえばこの席、俺以外は全員女子なのか)


 いわゆるハーレム状態であることに、今更ながらに気がついた。


 自分がモテている、などとは思わない。

 たとえ翔がいなくても、宮城あたりが加わって、女子だけのグループができていたことだろう。


 逆に、男友達が少ないゆえの悲しい現実とすら言える。

 ——そのはずなのに、翔の胸の奥には、なんとも言えないむず痒さが生じていた。


「と、とにかく行ってくる」


 翔は自分と彩花のグラスを掴むと、そそくさとドリンクバーへ向かった。

第95話は「将暉の誤算と、彩花の不満」です!

隣の卓から話しかけてきた将暉君は「男子の中では自分が現代文トップ」と発言しますが、実は翔君のほうが一点だけ上で……?

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