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幼馴染にフラれた日、ヤケクソで助けた男の子の姉がクラスのお姫様だった 〜お姫様直々のプロデュースで、幼馴染を見返します〜  作者: 桜 偉村
第八章

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第93話 クラス会長からのお誘い

今年も一年間、ありがとうございました。

皆様、良いお年を!(年が明けてから読んでくださった方は、明けましておめでとうございます!笑)

「双葉さん、ちょっといいかな?」


 翔が文化祭準備を一段落させて教室へ戻ると、会長の宮城が彩花に声をかけているところだった。


「宮城さん。どうしたの?」

「この後、ここまで一旦お疲れ様ってことで、みんなでどこか行こうかってなってるんだけど、双葉さんもどう?」


 どうやら、遊びのお誘いらしい。


「えーっと……」

「せっかくなら行こうよ」


 彩花が言葉を濁すと、将暉が口を挟んだ。


「双葉さんは冗談抜きでトップクラスに貢献してくれてるし、みんなも期待してるからさ」

「そんなことはないと思うけど……」


 彩花は困ったように眉を下げるが、将暉の言葉は大袈裟ではない。

 現に今もクラスの——特に男子の——注目が彩花に集まっているのが、そばにいるだけの翔にも感じ取れた。


 入学当初なら、ここまで露骨にはならなかっただろう。


(最初はお姫様モード全開だったからな)


 たまたま弓弦を助けていなければ、翔も同じような眼差しを送っていたかもしれない。

 彩花は意を決したように一度息を吸うと——ふいに翔のほうへ身を向けた。


「草薙君。今日って習い事あったっけ?」

「え? えっと、どうだったっけ」


 翔は反射的にポケットへ手を伸ばしかけて、やめた。

 カレンダーアプリには「習い事」ではなく「勉強会」「筋トレ」と登録している。


 それに、彩花の名前も。

 ここで開いて、万が一にも誰かに見られるわけにはいかない。


 そもそも、今日は筋トレも勉強会もないし、彩花がそれを把握していないとは思えない。


(……これは、どう答えるべきなんだ?)


 翔は記憶を探るふりをしながら、頭を悩ませた。


「もちろん習い事優先だけど、ないなら草薙君もぜひぜひ」


 宮城がおどけるように言った。

 話の流れ的に声をかけてくれただけだということは承知しているが、それとは別に「たまにはいいかもしれない」という思考が、翔の頭に浮かんでいた。


 何か大きな事件がない限り、あと半年間はこのメンバーで過ごすのだ。

 現在の交友関係に不満はないが、仲良くなれそうな人がいるなら見つけておきたいというのが、翔の偽らざる本音だった。


 そしてそれは、彩花にとっても同じだろう。


「確か習い事は明日だったはずだから、俺は行くよ。双葉はどうする?」

「それなら、私も参加させてもらおうかな」


 彩花はあまり迷うそぶりを見せなかった。

 翔は自分でも知らずのうちに安堵していた。


「おお、いいね! 全然人が集まらなかったら、会長としての威厳がなくなっちゃうところだったよ。二人とも、ありがとー」


 宮城が拝むように両手を合わせる。

 その親しみの感じられる仕草は、威厳ではなく信望という言葉が似合いそうだ。


「何人くらい集まってるんだ?」

「んーと、十七人だね」

「ほとんど半分じゃん。すごい」

「みんな、ノリが良くて助かるよ」


 彩花が感心したように言うと、宮城は照れたように笑った。


「ちなみに流れとしては今のところ、ファミレスでお昼を食べて、その後カラオケでもって感じだけど、二人は何か希望ある?」

「いや、俺は特にないよ」

「私もそれで大丈夫。ありがとね」

「はーい。——じゃあ、もうファミレスの予約を取っちゃうよー」


 宮城の声に、クラス内から賛同とお礼の声が上がる。


 その輪が広がっていく中で一瞬だけ、将暉の鋭い目つきが翔を捉えた——が、彼はすぐに何事もなかったようにその場を離れた。

 しかし、決して翔の気のせいではなかっただろう。

 他の男子も、翔と彩花をさりげなく窺っては、どこか微妙な表情をしている。


(……少なくとも、友達作りは難しいかもしれないな)


 翔は思わず苦笑いを浮かべた。


「彩花がこういうのに参加するの、珍しいじゃん」


 いつの間にか近くにやってきていた美波が、ポンっと彩花の肩を叩いた。


「まあ、たまにはね」

「ふーん……草薙君も行くの?」

「一応な」

「なるほどなるほど」


 美波が顎に手を当て、うんうんとうなずく。

 彩花が呆れたようにため息を吐いた。


「草薙君。美波のこういうのは気にしなくていいからね」

「大丈夫。英語の長文問題くらい諦めてるから」

「いや、それは解かないとでしょ」


 真っ当な指摘に、翔は黙って肩をすくめた。


「一番近くのところ、予約いっぱいだって」


 宮城がスマホを耳から離し、顔をしかめた。


「やっぱり夏休みの昼間は混むよねー。私も探してみるよ」


 美波がイヤホンを取り出す。

 ざわついている教室内では、確かにそのほうが相手の声は聞き取りやすいだろう。


 それから程なくして、美波はイヤホンを外すと、宮城に向かってグッと親指を立てた。


「宮城さん、予約取れたよ」

「ほんとっ? ありがとー!」


 美波の報告に、宮城が瞳を輝かせた。


「さすが、吉良さんは頼りになるね」

「こんなの確率論だよ。ちょっと歩くことになっちゃうし」

「全然いいって。よし、みんな移動するよー」


 宮城の言葉に、数人が素早く移動を開始する。

 翔も何気なく足を踏み出しかけたが、すぐに立ち止まった。


(……俺は、誰と行けばいいんだ?)


 彩花と美波が一緒に行くなら、自分が付いていくのはどこか違う気もする。

 教室で三人で話すことも少なくないとはいえ、招かれてもいないガールズトークに男子が乱入するわけにはいかない。


 かといって、潤は野球部のメンバーと固まっている。

 そちらもそちらで、潤以外の面々とはほとんど絡みがないので、混ぜてもらってもお互いに気まずくなるだけだ。


 もしも美波が葵や小春と行動して、彩花が一人になっていたら声をかけよう——。

 翔がそう決めたとき、ポンっと二の腕のあたりを叩かれた。


「どうしたの? ぼーっとして。私たちも行こうよ」

「……おう」


 翔はぶっきらぼうな返事とともに、足早に歩き出すことしかできなかった。

 その影響か、校門を出るころには集団の先頭に躍り出てしまっていた。


 ただ、問題はないはずだ。美波が予約した店は、前に潤と行ったことのある店だった。

 校門から一直線の坂を下りて、右へ曲がった瞬間、


「草薙君。逆だよー」

「っ……」


 背後から美波の声が飛んできて、翔の顔が一気に熱くなった。


「相変わらずだねぇ」


 隣で彩花がくすくす笑う。

 翔は立ち止まったまま顔を背けた。こんな顔、彩花にもクラスメイトにも見られたくない。


「草薙、いきなりボケるなんて気合い入ってんじゃん」

「けど、ドジっ子属性の追加が効果的なのは可愛い系男子だけ」


 容赦なく追撃してきたのは、葵と小春だ。


「いや、狙ってないからな?」

「強がんなくていいって。黙ってウチらに付いてきな」

「先陣は我らが特攻隊長・美波が切る」


 翔が軽く睨んでみせても、二人はどこ吹く風で、美波に続いて左へ曲がっていく。

 その美波が顔のみを後方に向けて、肩越しに手を振った。


「彩花、ちゃんと手綱を握っておいてねー」

「任せてー」


 彩花が翔の首元あたりに手をやり、馬の手綱を振るような仕草をした。

 それから、翔に向き直ってイタズラっぽく白い歯を見せる。


「っ……今日、特に日差しが強いな」


 翔は視線を前に固定しながら、袖口でこめかみをぬぐった。

第94話は「最後の一枠」です!

ファミレスで美波さんに一緒に座ろうと誘われた翔君と彩花さんですが、余った最後の席に忍び寄る少年が……?

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