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幼馴染にフラれた日、ヤケクソで助けた男の子の姉がクラスのお姫様だった 〜お姫様直々のプロデュースで、幼馴染を見返します〜  作者: 桜 偉村
第七章

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第77話 妹の自爆と、お姫様の仕返し

「お、お兄ちゃん⁉︎」

「花音、と……北斗君?」


 翔がぶつかりそうになった女の子は、妹の花音だった。

 その隣を歩いていた、花音の幼馴染の北斗も、目を丸くしている。


 驚いているのは、彩花も同様なようだ。

 だが、その瞳はすぐにイタズラっぽく細められた。

 翔と彩花は以前、花音と北斗が一緒に帰る姿を目撃している。そのことを思い出したのだろう。


 翔も、花音の今朝の様子から、北斗と出かけるのではないか、とは予想していた。

 だが、まさか電車だけでなく、行き先まで被っていたとは。


「翔さん、久しぶりっす」


 北斗が近づいてきて、軽く頭を下げる。

 翔も「久しぶり」と返した。


 幼いころは、よく彼と花音の公園遊びに付き合わされたものだ。

 面倒に感じることもあったが、花音や北斗に対して悪感情を抱いてるわけではない。


「北斗君、だいぶ大きくなったね」

「成長期っすから。それよりデート……すか?」


 北斗が彩花に続いて弓弦に視線を向けながら、首を傾げた。


「花音ちゃん。ちょっと久しぶりだね」

「お、お久しぶりです」


 彩花が花音に話しかけるのを横目に、翔は首を横に振った。


「ううん、ちょっとした子守りのお手伝い」

「はあ……」

「そっちこそ、デート中?」


 釈然としない表情の北斗に、翔は聞き返した。


「いや、別に、俺たちもデートじゃないっすよ。たまたま予定が合ったから、映画でも観るかってなっただけっす」

「そうなんだ」


 翔は端的な相槌を打つに留めた。

 言いたいことは山ほど、というわけではないが、せいぜい丘くらいはあった。

 だが、互いの異性関係について、その異性本人がいるところでは揶揄わないというのが、花音との取り決めだ。


「ほ、北斗。そんなのいいから、行こ……あっ」


 彩花から解放されたらしい花音が、北斗の腕をぐいっと引っぱる。

 しかし、ふいに自分の手元をハッと見つめた。その頬が、みるみるうちに赤くなる。


「っ、……!」


 花音は北斗の腕を振り払うと、そのままそっぽを向き、ズンズン奥へ歩き出した。


「あ、おいっ、いきなりどうしたんだよ——すんません。俺、行くっす」

「おう。妹をよろしくな」


 北斗は小走りで花音を追いかけていった。

 その背中を見送りながら、彩花は顎に手を当てて、どこか難しい顔をしている。


「ごめんな、双葉。あんまり気分の良くないものを見せちゃって——」

「草薙君」

「な、なんだ?」


 真剣な声音に、翔は背筋を伸ばした。

 彩花はまっすぐ前を向いたまま、きりっとした表情で口を開く。


「あの二人で、恋リアを撮ろう」

「妹を見世物にする兄がいるか」

「子供の顔で再生数を稼ぐ親ならいるじゃん」

「それがダメなんだよ」


 翔はため息混じりにツッコミを入れた。


「安心して。草薙君がそんなのしようとしたら、お父さんに更生プログラムを実行させるから」

「父親を機械みたいに言うな。というかそんなの、絶対死ぬまで筋トレさせられるだろ」

「もちろん」


 翔は、当たり前だと言うようにうなずく彩花に脱力してしまいながら、隣で成り行きを見ていた弓弦の頭に手を乗せた。


「翔くん?」

「まずはチケットを発券してから、飲み物とポップコーンを買いに行こうぜ」

「——うん!」


 少し退屈そうにしていた弓弦の瞳が輝いたので、万事解決だろう。




◇ ◇ ◇




 映画を観終わって、場内の明かりが戻る。

 エンドロールが終わると、翔たちは他の観客と一緒に、シアターを後にした。

 花音と北斗の姿は見当たらなかった。


「めっちゃ楽しかったねー!」


 弓弦が大きく伸びをした。


「だな。最後の別れのシーン、普通にジーンときた」

「迫力もすごかったね。色も鮮やかだったし」


 映画館を出ると、同じフロアにゲームセンターがあった。

 体に振動が伝わるような映画館の音響とは違う、機械と人の声のざわめきが広がっている。


「ね、クレーンゲームやっていい? お母さんからお菓子に使っていいって、言われてるんだ〜」


 弓弦がどこか得意げに、ポケットから五百円玉を掲げた。

 その視線の先の明るい色とりどりのネオンの下には、有名どころのお菓子の箱が、ガラス張りの向こうに並んでいる。


「お菓子なんて、普通にコンビニで——」

「双葉」


 翔は咄嗟に、たしなめようとする彩花の肩を掴んだ。


「っ……!」


 彩花はびくりと肩を跳ねさせると、振り返り、驚いたように翔の手を凝視した。

 肩がわずかにこわばるのを感じて。翔は慌てて手を離した。


「あ、ごめん。驚かせて」

「う、ううん……別に大丈夫だけど」


 彩花はぎこちなく首を振った。

 一瞬だけ翔の触れた箇所をちらっと見てから、翔に向き直る。


「それより、なに?」

「ああ、いや、俺もこれやったことあるからさ。弓弦にも、とりあえずやらせてあげてもいいんじゃないかなって」


 効率だけを考えれば、コンビニで買うほうが、早いし確実だ。

 ただ、小学三年生にそれを求めるのは酷だし、失敗から学ぶこともあるだろう。


「……確かに、それもそうだね。弓弦、やるからには頑張れ」

「わかった!」


 弓弦が拳を握り、意気揚々とクレーンゲームの前に立つ。


(咄嗟に肩を掴んじゃったけど、嫌がられたかな……)


 翔が弓弦の背中を見つめながら、先程の彩花との距離感を思い返していると、ふいに背後から、肩をトントンと叩かれた。

 振り向いた瞬間、何かがむにゅっと頬に食い込んだ。

 ——彩花の指だった。


「えっと……双葉、どうした?」

「っ、別に」


 彼女は頬をほんのり染めて、そっぽを向いた。


(さっきの仕返し……か?)


 それにしては、表情にどこか不満の色が混じっているように見える。

 それに、彩花にしては少々動機が子供っぽすぎる気がした。


 ただ、それとは別に、頬に触れられたこと自体には、もっと驚くべきだったのだろう。

 ——実際には、女の子にそういうことをされた経験がなくて、うまく反応できなかっただけなのだが。


 整えられた爪先は、当たり前だが痛くはなかった。

 それなのに、頬に残るひんやりとした感触は、なかなか消えてくれなかった。

第78話は「お姫様との初めての……」です!

一体、翔君と彩花さんの間に何があったのでしょうか⁉︎

※「ハジメテ」ではございませんので、ご了承ください。

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