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幼馴染にフラれた日、ヤケクソで助けた男の子の姉がクラスのお姫様だった 〜お姫様直々のプロデュースで、幼馴染を見返します〜  作者: 桜 偉村
第十章

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第123話 お姫様とベタな展開

 列車が停車し、扉が開くと、約束通り彩花の姿があった。


「草薙君、おはよ——あれ?」


 彩花は翔を見るなり、小首を傾げた。


「どうした?」

「そんな服、持ってたっけ?」

「ああ、これ? 前に潤と遊んだときに買ったやつだよ」

「……ふーん」


 彩花は少し眉を寄せた。

 気に入らないといった表情に、翔の胸がざわつく。


「えっと……似合ってなかったか?」

「ううん、似合ってるけど……プロデューサーの意見を通さないのはいただけないな」

「あっ……それはごめん」

「ちょ、冗談だって!」


 前回は彩花に選んでもらったのに、今回は相談もしなかったというのは、プロデュースをしてもらっている側としては確かに失礼だったかもしれない。

 翔が素直に謝ると、彩花が慌てて手を振った。


「草薙君のものなんだから、草薙君の好きにすればいいし」

「そっか」


 冷静に考えれば、その通りだった。

 ただ、一瞬だけ本音に聞こえた気がして、翔の心臓は未だに早鐘を打っていた。


「でも、女子目線の意見がほしければ、いつでも聞いてね」

「おう。また頼らせてもらうわ」

「はーい」


 いつも通りの明るい返事に、翔はようやく肩の力を抜いた。

 だが、やられっぱなしというのも少し悔しい。翔は視線を落として、口を開いた。


「そっちこそ、あのカーディガンじゃないんだな」

「えっ? あ、い、いつもあればっかりなのも変かなって思って!」


 彩花の声が一段高くなった。


「あと、これは美波と遊んでるときにかわいいなって一目惚れして、それで——」

「冗談だよ」


 必死に弁明する彩花を前に、翔はくすっと笑みを浮かべた。


「双葉のものなんだから、双葉の好きにすればいいって」

「っ……やっぱり、草薙君っていい性格してるよね」


 彩花はそっぽを向いた。

 相変わらず、自ら攻撃を仕掛ける割には防御が弱い。


 翔はほんのり膨らんでいるその頬から視線を外し、下へと滑らせた。

 柔らかい色のブラウスが、朝の光の中でよく映えている。


「それに、その服も似合ってるし」


 その言葉は、自然と口から漏れ出た。

 彩花は一瞬だけ翔の顔を見つめた後、すっと視線を横に外した。頬に薄く色が差している。


「……秋モノの服は、また草薙君に選ばせようかな」

「そっちがそれでいいなら、全然付き合うけど」

「言ったね? 一日中連れ回すから、覚悟してて」

「それは勘弁してくれ」




◇ ◇ ◇




 映画館のロビーは、昼前の混雑でざわついていた。

 飲み物のカップとポップコーンの匂いが入り混じる中、二人は売店の列に並んだ。


「草薙君は何飲む?」

「久しぶりにコーラにしようかな。そっちはいつも通りオレンジジュースだろ?」


 翔がニヤリとすると、彩花はむっと眉を寄せた。


「……その言い方、なんかムカつく」

「じゃあ、何飲むんだ?」

「……オレンジだけど」


 翔は思わず吹き出した。

 彩花が頬をほんのり染めて、じとっと無言の抗議を送ってくる。


「悪い悪い。——ポップコーンはどうする?」


 露骨だとは自覚しつつ、話題を逸らす。

 彩花はため息を吐き、ふっと目元を和らげた。


「うーん、どうしようかな。一個は多いんだよね」


 声色もいつも通りだ。

 本当に機嫌を損ねていたわけではないのだろう。


「じゃ、半分にしようぜ。俺もあの量を一人で食べるのはキツいし」

「うん、そうしよ」

「味はどうする? 俺はなんでもいいけど」

「んー……じゃあ、キャラメルで」

「了解。結構混んでるから、俺がまとめて買ってくるよ。双葉はあっちで待っててくれ」

「わかった。お願いね」


 彩花はあっさりと了承し、列から少し離れた場所へ移動する。


 レジで会計をしている間、ふと視線を向けると、彩花はスマホの画面をじっと見つめて指を滑らせていた。

 商品を受け取った翔は、両手が塞がった状態で彩花の元へ戻る。


「これくらいは俺が出すよ」


 彩花はニヤリと笑い、スマホの画面を掲げてみせた。

 そこには、電子決済アプリの送金完了画面が表示されている。


「……相変わらず手際がいいな」

「私から誘ったんだし」


 彩花は得意げにあごを上げる。


「電子決済にも欠点があったんだな」


 苦笑いしながら、翔はオレンジジュースを彩花に手渡した。




 場内に入ると、ほどよく席は埋まっていた。

 照明が落ち、スクリーンに映画の予告が流れ始める。


 翔がモニターをぼんやりと眺めながら、ポップコーンに手を伸ばした瞬間、指先に温かいものが触れた。

 ——彩花の指先だった。


「わぁ、ほんとにこういうベタな展開って起こるんだね」

「絶対わざとだろ」


 大袈裟に目を見開く彩花の指先を、翔はペシっと払った。


「ふふ、びっくりした?」

「いや、あんまり」

「もう、ノリ悪いなぁ」


 彩花は不満そうに言いつつも、その表情はどこか楽しげだ。

 翔は胸の奥に少しくすぐったさを覚えながら、再びスクリーンへと意識を戻した。

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>彩花は不満そうに言いつつも、その表情はどこか楽しげだ。 >不満そうに口を尖らせているが、その表情はどこか楽しげだ。 大事なことなので2回書きました?
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