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幼馴染にフラれた日、ヤケクソで助けた男の子の姉がクラスのお姫様だった 〜お姫様直々のプロデュースで、幼馴染を見返します〜  作者: 桜 偉村
第九章

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第102話 母からの電話と、よぎった予感

長くなったので、2話に分けました!

※それに伴い、前話の予告からタイトルを一部変更しています。

「——よし」


 翔は椅子から立ち上がると、横に置いていたリュックを背負った。


「あ、もう時間?」


 シャワールームを出たところで、彩花が尋ねてきた。


「まだ歩いて間に合うけどな」

「そっか。草薙家って普段、お昼は何を食べてるの?」

「んー、母さんがラーメンとか作ってくれることもあるし、パンとか買って済ませたりもするかな」

「ふーん……」


 彩花は足を止め、少し考えるような素振りを見せた。


「どうした?」

「ううん、その……京香さんがまだお昼の支度を始めていないなら、せっかくだしウチで食べていかない?」

「……えっ?」


 翔は思わず、まじまじと彩花を見つめた。

 彼女の頬に、うっすらと赤みが差す。


「いや、無理だったら全然いいんだけどさ。ほら、翔君の家だと学校から遠ざかっちゃうし、そもそも一度帰るのは時間がもったいないじゃん? それに、弓弦も喜ぶかなって」

「それはそうかもだけど……さすがに迷惑じゃないか?」

「大丈夫。実はもうお母さんの許可は取ってあるんだ」


 彩花が得意げに胸を張った。


「……相変わらず、行動が早いな」


 いつの間に根回しを済ませていたのだろう。

 基本的には一緒に行動していたはずだが。


「抜かりはないよ。——それで、どうかな?」

「ちょっと母さんに聞いてみる」


 文化祭準備は制服で行く必要も、特別な荷物を持っていく必要もない。

 京香の許可さえ取れれば、そのまま学校へ向かうこと自体は可能だ。


 翔はポケットからスマホを取り出し、メッセージアプリを開こうとした。

 その瞬間、画面が切り替わり、着信音が鳴り響く。


 表示された名前は——『母さん』。


「「えっ」」


 翔と彩花の声が重なった。


「……母さん。盗聴器とかつけてないよな?」

「一番やらなさそうな人じゃない?」

「それはそう」


 翔は苦笑しながらも、なぜか指先がわずかに強張るのを感じた。


(別に、友達の家でお昼を食べるだけの話だ)


 深呼吸をひとつ挟んでから、通話ボタンをタップする。


『もしもし、翔? 今、大丈夫?』

「うん、勉強も筋トレも終わったとこ」

『そう、ちょうどよかった。そしたら帰りにパンを買ってきてくれないかしら。私たちと花音の分。花音は部活だから、多めに食べると思うわ』

「あ、えっと……」


 翔は返事に詰まった。

 断れば、京香が買い物に出るか、別の昼食を用意することになる。それは申し訳ない。

 けれど——。


『翔? どうしたの?』

「いや、その……実は、こっちでお昼をご馳走になるかもしれなくて」


 電話の向こうで、京香が『なるほど……』とつぶやいた。

 彩花の家に来ていることは、京香も把握している。


 翔はちらりと彩花を見た。

 彩花はそっと拳を握り、不安げな表情でこちらを見つめている。


『彩花ちゃん、今隣にいるかしら?』


 ——この人は、エスパーなのだろうか。

 翔は内心で呆れながら、「いるけど」と答えた。


『ちょっと代わってもらえる?』

「え……ああ、わかった」


 翔はスマホを耳から離し、彩花に差し出した。


「母さんが話したいって」

「えっ、私と?」


 彩花が目を丸くする。

 翔は肩をすくめた。理由は自分にもわからない。


「多分、迷惑じゃないか確認したいんだと思う。悪いけど、ちょっとだけ」

「う、うん……」


 彩花はおずおずとスマホを受け取り、耳に当てた。


「あ、もしもし。双葉です……はい……はい、大丈夫です。お母さんもいますし……」


 彩花の声は、どこか硬い。緊張しながら相槌を打っている。

 無理もない。異性の友人の母親と電話で話す機会など、そうあるものではないだろう。


 翔は所在なく、鏡に映る自分の髪型——双葉家のホームジムは壁の一面が鏡になっているのだ——をチェックしていた。

 彩花にポンポンされたせいか、少しだけ乱れている気がする。


「あの、お母さんと……一応、私もです」


 彩花の頬が、ほんのりと色づいた。

 翔は思わず眉を寄せた。何の話だろう。


「は、はい……ありがとうございます。失礼します」


 彩花は早口でそう言うと、スマホを翔に押し返してきた。


『事情はわかったわ。楽しんできなさい』


 流れてきた京香の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


「ごめん、買い物できなくて」

『そんなことは気にしなくていいから、楽しんできなさい。学校も気をつけていくのよ』


 その言葉は、単なる許可というよりも、どこか背中を押すような響きを含んでいた。


「……うん、ありがとう。それじゃ」


 通話を終え、スマホをポケットにしまう。


「そんな感じで、今日はご馳走になるよ」

「うん。お母さんにも伝えないとね」


 彩花は足早にジムの出口へと歩き始めた。

 翔は庭を通り抜けながら、ふと気になっていたことを尋ねた。


「彩花は、母さんと何を話してたんだ?」

「な、なんでもないよ? 翔君が言ったように、お母さんに迷惑がかからないのか聞かれただけ」


 彩花は笑みを浮かべてみせるが、声が少し上ずっていた。

 明らかに、何かを隠している様子だ。


「……そうか」


 追及はしなかったが、翔の脳裏には、先程の彩花の言葉がよみがえっていた。


(お母さんと、一応私も……か)


 一つの可能性が翔の頭をよぎり、心臓の鼓動がわずかに早まる。

 ピクニックのことを考えれば、的外れな想像ではない。

 というより、むしろ妥当だと思う。


(……けど、違ったら恥ずかしいな)


 翔は小さく息を吐くと、周囲の花に視線を向けた。

 どのみち、真実はもうすぐわかるだろう。

第103話は「お姫様の母からの追及」です!

翔君のお昼ご飯を作ることを快諾してくれた真美さんですが、その後にふと真剣な表情になり、翔君と彩花さんに「とあること」を追及します。二人は無事に乗り越えることができるのでしょうか?

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