表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/20

12. 再出発

 陽斗が次に目を開けた時、そこは、見覚えのある景色だった。石畳の道、木造の家々、そして、遠くに見える緑豊かな森。


「ここは……シンクロ・ワールド……?」


 陽斗は、呆然と呟いた。


 最後にこの世界を見たのは、βテストの時。二度目のゲームオーバーになり、そのまま意識を失った。そして、目覚めた時には、現実世界の病院のベッドの上だった。


「本当に、ゲームの世界に来れた……? VRデバイスも装着してなかったのに……」


 疑問は尽きない。しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。


 陽斗は、自分が立っている場所が、以前ゲームオーバーになった後に目覚めた、あの小さな村であることを思い出した。


 前回、この世界に来た時は、チュートリアルもそこそこに、いきなりモンスターに襲われ、あっという間にゲームオーバーになってしまった。二の舞は避けなければならない。


 陽斗は、村の中を歩きながら、今後の計画を練り始めた。まずは、レベルアップの方法を考えなければ。


(前回は、すぐにゲームオーバーになっちゃったからな……。今回は、慎重に行動しないと)


 陽斗は、まず、回復薬や防具など、戦闘の役に立ちそうなものを村で購入することを思いついた。


 ピン!


 陽斗がそう考えた瞬間、目の前に、あの半透明のウィンドウが現れた。


(ウィンドウ……! そういえば、これがあったんだ)


 陽斗は、ウィンドウを操作し、自分のステータスを確認する。


「所持金、6,500Gゴールド……? 結構あるな。デイリーミッションとか、クリアしてるうちに、たまってたのかな?」


 陽斗は、村の商店を訪れ、まずは回復薬を購入した。しかし、ここで問題が発生した。


(カバン、持ってない……。どうやって持ち運ぼう……?)


 途方に暮れかけたその時、陽斗は、ある可能性に気づいた。


(あっ、もしかして……!)


 陽斗は、手の中にある回復薬を「アイテムボックス」にしまうイメージを強く念じた。


 すると、どうだろう。


 手に持っていたはずの回復薬が、一瞬にして消え去った。


 陽斗は、慌ててウィンドウを開き、アイテムボックスの項目を確認する。


 【アイテムボックス】

  ・回復薬 ×5


「……入ってる!」


 陽斗は、思わず声を上げた。


(よしっ、これなら、いざって時のために、いろいろと用意しておけるな)


 陽斗は、安堵と興奮を同時に感じた。


 次に、陽斗は防具屋を訪れた。そこで、陽斗は、防御力を高める効果があるという、銀色のネックレスを購入した。


 陽斗は、ネックレスを首から下げてみる。


(……これも、消せたりするのかな?)


 陽斗は、そう考えながら、ネックレスが消えるイメージを強く念じた。


 すると、ネックレスは、まるで最初から存在しなかったかのように、陽斗の視界から消え去った。しかし、首には、確かにネックレスの重みを感じる。


(消えた……! 周りの人からも見えてない……はず!)


 陽斗は、自分の能力に、改めて驚きを隠せなかった。


 準備を整えた陽斗は、村の外へと向かった。目指すは、村の近くにある草原だ。そこには、スライムや、その他の弱いモンスターが生息している。


 草原に出ると、早速、数匹のスライムが陽斗に近づいてきた。陽斗は、影刃かげやいばを発動させ、スライムを次々と切り裂いていく。


 ピン! ピン! ピン!


 何度もウィンドウが現れ、レベルアップを告げる。


 陽斗は、スライムだけでなく、草原に生息する他のモンスターも、積極的に倒していった。ウルフ、ゴブリン、コボルト……。


 影刃と影縫いを駆使し、時には鋼鉄製の短剣も使いながら、陽斗は順調にモンスターを倒し、レベルを上げていった。


 そして、数時間後。


 陽斗は、一度、自分のステータス画面を確認した。


------------------------------------

プレイヤー名:ハルト

レベル:25

タイプ:影使い

HP:700/700

MP:620/620

攻撃力:48

防御力:40

素早さ:55

装備:鋼鉄製の短剣(攻撃力+5)

   銀のネックレス(防御力+10)

スキル:

 ・影縫い(レベル8) 消費MP45 成功率:高

 ・影刃(レベル9) 消費MP40 成功率:高

 ・影分身かげぶんしん(レベル3)消費MP40 成功率:高

 ・影喰かげくらい(レベル4) 消費MPなし 成功率:中高

------------------------------------


「レベル、25……。あっという間に、ここまで上がったな……。それに、新しいスキルも増えてる。影分身かげぶんしんと、影喰かげくらい……?」


 陽斗は、新しいスキルを試してみることにした。


 まずは、影分身。陽斗が集中すると、陽斗の影がゆらめき、陽斗と瓜二うりふたつの分身が3体現れた。分身たちは、陽斗の動きを真似したり、陽斗の指示に従って、それぞれ異なる方向に走り出したりする。


「すごい……! これなら、連携攻撃もできるし、おとりにも使える……!」


 次に、影喰かげくらい。陽斗は、自分の影に手をかざし、スキルを発動させた。すると、影が陽斗の手に吸い込まれるようにして消えていき、同時に、HPとMPが少しずつ回復していくのを感じた。


「これも便利だな……。でも、使いすぎると、何か良くないことが起きそうな気もする……」


 陽斗は、試しに、近くにいたスライムの影を喰らってみた。すると、HPとMPが完全に回復しただけでなく、一瞬、身体能力が向上したような感覚があった。


「これは……! もしかして、一時的にステータスが上がったのか?」


 陽斗は、さらに、近くにいたウルフの影を喰らった。すると、今度は、先ほどよりも大きな効果を感じた。HPとMPが大幅に回復し、さらに、攻撃力が格段に上がったような気がする。


「すごいぞ、このスキル……!」


 しかし、調子に乗った陽斗が、次にゴブリンの影を喰らおうとした時――


「うっ……!」


 突然、陽斗は軽いめまいと吐き気に襲われた。


(くそっ……影喰かげくらいの使いすぎか……? やっぱり、何でもかんでも喰らえばいいってもんじゃないな……)


 陽斗は、新しいスキルの可能性と危険性を、身をもって体験した。


「よし、これからは、もっと慎重にスキルを使っていこう……」


 陽斗は、そう心に決め、再びモンスターとの戦闘に戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ