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異世界催眠術

作者: 野辺 独郎

初投稿です

あれ、ここは……?


わたしが目を覚ますと、そこには一面草原が広がっていた。


「やぁお嬢さん。異世界は初めてかな?」


隣にいる猫のような犬のような不思議な生き物が話しかけてきた。背中から羽を生やしたそいつは、まぎれもなく現実世界の生物ではない。


「ここは異世界。そしてボクはここの案内人なんだ」


「そう……みたいですね」


わたしはあたりを見回しながら答える。

360度どこを見ても延々と草原が広がり、空は抜けるような青空だ。


「早速だが、君にはこの世界を救ってほしい。というかその義務がある。いいね?」


「えっと、わたしまだ状況がよく」


「魔王だ、倒せ!」


そういわれて振り向くと、そこには大柄の恐ろしい姿をした怪物が立っていた。

さっきまでそんなのいなかったじゃん!

魔王は真っ赤な瞳をギラつかせ、呼吸のたびに紫色の炎が口から噴き出している。


「さあ倒せ!」


「いや、でもどうやって!」


案内人とやらが急かすので、わたしは少し焦ってしまう。


「君の右手に持っている剣は何のためにあると思ってるんだ!」


見ると、いつの間にかわたしの右手には剣が握られている。


「さあはやく振り上げて!」


言われるがまま、わたしは剣を振り上げた。


「思いっきり振り下ろせ!」


「え、えいっ!」


力いっぱい剣を振り下ろす。

その瞬間、魔王が急にわたしに近づいてきて、剣に斬られた。

斬られにいった感じもするけど気のせいだろう。


「グボアアアアアアッッ!!! わ、我がこんな小娘にィィイィッッ!!! ゆ、許さぬ、許さぬぞ……我は……必ず、必ずまた復活して、貴様に復讐してやる……それまでせいぜいつかの間の平和を享受していることだな! フハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!! バォアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!」


そう言い残すと、魔王は紫色の炎に包まれ、消えていった。


「勝った!勝ったんだ! おめでとう!おめでとう勇者!」


そう言って案内人がわたしに飛びついてきた。


「どういたしまして。ふふっ、ちょっとくすぐったいよぉ」


喜んでいたら、急にあたりが眩しくなる。

どうやら自分の体が光に包まれているようだ。


「あれ、わたし……」


「魔王を倒したから、そろそろ()()()の時だね」


「目覚めって、どういう……」


「短い間だったけど楽しかったよ、()()君に逢えたらいいな」


わたしの体が完全に光に包まれ、そして――




『最後まで体験版をプレイしていただき、ありがとうございました!

 この世界でより深い冒険を楽しみたい方は、ぜひ本編をご購入ください!

 本編のご予約はコチラから! 今ならレビュー投稿で30%オフチケットプレゼント!』


()の目の前に、無機質な文字列が見える。

マウント型のディスプレイを外して、俺は体を起こした。

催眠(ヒプノシス)型ゲーム。フルダイブ型のゲームに比べ、より手軽に異世界を楽しめるといった点が魅力のゲームで、近年大流行している。


「……完全に女の子だったな、俺」


最大の特徴は、自己の認識を変えてしまう点。

ひとたびゲームをプレイすれば、あなたはあなた以外の何者かとしてゲームの世界に入り込んでしまうのだ。

手軽に別人になれるのもこの種のゲームの大きな魅力で、特にファンタジーや異世界ものといった現実とはかけ離れた設定のものが人気を集めている。


「レビューを書けば30%オフチケットがもらえるって言ってたな……」


まだ完全に目覚め切ってない状態で、男はレビューを書き始める。

それはあたかも催眠術で操られたかのようであった。



名無し さんのレビュー ○○月××日 ○○:××

本編は来月発売とのことで、今からやるのが待ちきれません!

没入感が本当にすごくて、ゲームの中では自分は完全に少女だと思い込んでました!

背景も空も現実そのものでクオリティはすごく高いと感じました。

ただ、魔王の断末魔がしつこい気がしたので、本編ではもっと短くしたほうがいいと思います。

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