第10話 作戦開始
後がきにおまけがあります。
本編は臣視点。おまけは白狐視点です。
※この作品は「カクヨム」様、「アルファポリス」様にも掲載させていただいています。
「複数班を作る。まずA班は春兄をリーダーに如月弦太と」
メンバーが発表されていく。如月は未だに月城組との仕事に納得がいっていないらしく、口数は減り態度も悪い。先ほど鵤に注意されていたがあまり効果はなさそうだ。月城春なら彼を上手く扱うだろう。
「次B班。リーダーは藤堂臣。メンバーは凰士朗と二色大雅、渡と…」
(二色と渡がいるなら何とかなりそうだ)
凰士朗という不安要素は残るが彼等がいると思うと心強い。
「凰士朗は女に激弱だから要注意で頼みたい」
「俺はそんなに単純じゃない」
白狐の指摘に否定をしているが今までの言動のせいで説得力を感じない。
「あ、藤堂藍」
「え!」
姉貴の名前で即座に指された方を向く凰士朗。だがそこには誰もいない。「ばーか」と白狐が笑う。わざとかのように弱点を教える彼等に若干の違和感を感じた。いくら仲違いが勘違いで合同の仕事だからといって普通そこまで教えるか?
(まるで何かを誘導しているような…)
「ひでぇよ。俺だって口説くチャンスくれたっていいだろ」
(……ないな)
出てきた考えを改める。いい歳した男が嘘泣きしているのを年下の二色と渡が懸命に慰めている。このチームで大丈夫か、そんな不安は臣の心に残った。
「次C班。リーダーを鵤冴久。メンバーを影と…」
メンバーが伝えられ、全ての班が出揃う。
「白狐はどの班なんだ?」
どこにも属していないのを疑問に思う。自身を入れ忘れたなんてことはないだろう。それも何か作戦なのか。
「当日は見える場所で待機しながら全員の進む道をサポートする予定」
「サポートとは具体的に何ですか?」
話題にくいついたのは鵤。
「色々と、ね」
秘密だと言いたげに口もとで人差し指をたてる。お面でその表情は見えないが、少し笑っているような気がした。
「最終的にはここを目指してもらう」
指されるのはバツ印の書かれた広々とした部屋。
「侵入するのは五日後の土曜日。オークション最中の二十時に潜り込む。行動パターンを頭に叩き込んで」
そう言うとそれぞれの班に行動パターンを伝えていく。始めは不満をもらしていた組員も徐々に打ち解けていた。
全てが終わった後、既にできあがっている親父達も呼び晩餐の用意した。遂に白狐の仮面の下を見れるかと思ったが自分の仕事は終わったからと早々に帰宅してしまう。食後に頂いた秀継作のケーキは甘味が少なくブランデーで味付けされていてとても美味だった。
◇
それから五日後の土曜日。作戦決行日の十七時半、臣達はオークションが行われる建物付近にいた。そこには合流した月城組の姿もある。肌を掠める風が刺すような痛みを伴う中、かじかむ手で拳銃を腰にしまう。
「はい、これつけて」
小型の無線イヤホンが全員に渡される。言われた通りに装着する。
『あー全員聞こえる? 聞こえたら頷いて』
耳元で機械音が流れる。白狐曰く、これは無線としての役割だけでなくGPS機能も搭載されておりリアルタイムでパソコンに表示されるらしい。機械系の事はわからないが鵤が珍しい程興奮していた。
全ての準備が整い、配置につく。臣の目前にはロックされた扉。普段とは違う緊張感に体が強張る。
「なあ白狐。女の子達助けたら惚れっかな?」
『お前は無理』
凰士朗達の他愛もないやり取りに思わず笑みがこぼれる。それは二色も渡も同じのようで先までの緊張は解け、肩の荷が降りる。
『さて、準備は整った。作戦を開始しよう』
作戦開始の声と共に扉のロックが解除される。それを合図に中へ侵入した。
作戦に抜かりはない。頭では理解していても昨夜感じた違和感を、漠然とした不安感を拭うことはできなかった。
「さて、準備は整った。作戦を開始しよう」
掛け声とほぼ同時に扉のロックを解除する。パソコンに映るGPSで全員が中へ入ったのを確認すると無線イヤホンと仮面を外す。白い息を大きく吐き、速まる鼓動を落ち着かせる。そのまま藤堂臣達に渡した物とは別のイヤホンを装着した。
「始まった。そっちも始めて」
それだけ伝えるとそのイヤホンをそのまま左耳に装着する。仮面を着け、藤堂臣達との連絡用イヤホンも右耳に着け直し画面を見つめながら彼等の進む道のロックを開けていく。監視カメラをハッキングして彼の率いるB班が映らないよう画面をすり替える。白狐のパソコンには真剣な表情の藤堂臣が映っている。
(臣さん…。どうか…)
全て計算通りの動きに計算通りの配置。全て分かっていても無事を祈らずにはいられなかった。




