恐怖! オブスタクル!!
「フィースペード、先に行って来い」
「了解した」
オブスタクルの最初のギミックエリアとなる、蜘蛛の巣のように張り巡らされた木の糸には、フィースペードが先に乗った。
「あっ、ああ……あ……」
元々ふらつきがあったフィースペードはたちまちバランスを崩してしまい、地面に落下する。
その途端、フィースペードはリスポーンした。
「なるほど、落ちるとゲームオーバーか」
ギミックに感心していたニケは余裕の表情を見せた。
「ふぅ、行くか」
一人になってしまったニケは、躊躇なく木の糸の上を走っていく。
勢い任せに抜けきるつもりだろうか。
私はエグゼクトロットを大きく縦に振る。
「解き放て、疾風の刃!」
鋭い刃がニケに向かって飛んでいった。
「ぐっ、それは卑怯だろっ!」
ニケは慌てて指揮棒を振り、耐え凌ぐ。
だがしかし、こちらの第二の攻撃が始まっていた。
「我が攻撃、耐えられるか?」
ドラゴンの姿になっていたセレネは、ニケに噛みつこうとした。
「横だな、遅いっ!」
ニケが横方向へ伸びている木の糸に足を踏み入れて、間一髪でセレネの攻撃を避ける。
その後すぐにセレネの身体がバラバラになってリスポーン判定が出た。
「女神の祝福、かの者の傷を癒やしたまえ」
ノアが詠唱すると、セレネは人型の状態で復活した。
「ノアちゃん、手間かけてごめん!」
「いえいえ。流石にニケ様が上手だったみたいですから」
「ふぅ、隙が大きいなっ!」
「あっ……」
「ニケ様っ?」
ニケが一気に駆け抜けて、最初のエリアを抜けてしまった。
そして、二人のに振り返ることなく二つ目のギミックエリアに突入しようとしていた。
「待っていました」
ニケの前には、聖剣ティルザードを持った一人の少女が立ちはだかる。
「ふむ、その姿は新たな月光の処刑人……お前は誰だ?」
「私は女神ネフティマ。まがい者の観測者」
「なるほど……。シクスオ内臓の天体観測AIネフティマが、どうやってかは知らないが人の意思を持ったというのかな?」
「メリーロードの器があった」
「ああ、奴か。奴が器になったということは、メリーロードの意思はシクスオの世界に存在しないということだろう」
「上書きによる自然消滅は、認める」
「弱い、やっぱり弱いよ。女神だろうが、ダンジョンマスターだろうが、やっていることは単なる時間稼ぎに過ぎない」
「それを否定する」
「うん? 何故だ?」
「私は否定する。ここにいるダンジョンマスターも同じく、単なる時間稼ぎだなんてまったく考えていない。皆が揃って否定する」
聖剣ティルザードを軽やかに握りしめているネフティマが、意地を張った。
「ところでさぁ、どうして次回アップデートの秘密をネフティマが知っていたわけ?」
「観測者に未来予測が、備わっている」
「精度の高すぎる未来予測、厄介だなぁ……」
「それはさておき」
「何だ?」
「ゲームマスターは、このゲームのことを楽しいと思ったことはある?」
「あるよ。当然だろう」
「それは現在も、ですか?」
「ネフティマは何を言いたいつもりなんだ」
ニケは激怒した。
それに対して、ネフティマは無言で見つめるだけだった。
ニケには呆れた。
私は両手に力を加える。
「楽しくないなら、私が楽しさを教えてあげます!」
全力で魔力を込めて、私は詠唱を開始する。
「いでよ、光の雷鳴――。無数の流星となりて、降り注ぐ!」
エグゼクトロットを大きく振りかざすと、天井付近から十六の光の隕石が降り注ぐ。
その隕石が二つ目のギミックエリアとなる池に着弾すると、円形の稲妻が弾けだした。
それはまるで、線香花火のようにちらつかせる。
それだけでは終わらない。池に浮かんでいたタイヤが飛んでいくと、そのいくつかがニケの頭上に目掛けて飛んでいった。
「タイヤ……!?」
ニケは一瞬だけ戸惑った。
「貴方は運命に逆らえない。私からよそ見したから」
「なん……だと……」
ネフティマは、既にニケの視界から外れている。
代わりにと言って良いのか分からないけど、ニケのお腹には、聖剣ティルザードが突き刺さっていた。
それから、とどめのタイヤ。
「馬鹿なっ。こんな、タイヤで……!!」
ニケの頭部に直撃すると、ニケはその場に倒れ込んだ。
「ニケ様っ!」
ノアが心配そうに見つめている中、ニケのリスポーン通知がログに流れた。
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