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新たな宝箱系モンスターの作成


「素材が、光ってるっ……!」


 マウバットの羽が徐々に黄色く染まっていく。

 それに従い、だんだんとマウバットの羽が肥大化していった。


 これは時間が経つと持てなくなるので、早くも地面に置かないといけないと判断したのだが……。

 サモンコールの使用中に、素材アイテムって手から離れても大丈夫だったかな?


「えっと……。な、何かな……?」


 召喚の際に浮かび上がる魔法陣が、肥大化し続けるマウバットの羽の近くに出てきた。

 そして、もう限界である。

 私の手から、マウバットの羽を手からこぼれ落ちていった。


「上手くいくかな?」


 不安をあらわにしながら、マウバットの羽を見守った。

 マウバットの羽は形を変えていき、やがて箱のオブジェクトに変化した。

 これはまるで、黄色い宝箱。

 果たしてモンスターなのかどうかすら怪しい。


「お姉ちゃん、成功だよ?」


 ヤジョウが黄色い宝箱に近づいていくと、宝箱の蓋が急に開いた。


 キキキッ、キッ。

 宝箱が開くと、ばねのような装置が伸びて、大きなマウバットの顔が飛び出してきた。


 このモンスターの名前は、ビックリンバットだ。


 どうやら、動く者が近づくと驚かす性質をもっているようである。


 ヤジョウにも反応しているので、他のモンスターと違って変わりものなのだろう。

 見た目もボスモンスターというよりかは、宝箱のモンスターに近い雰囲気があった。


「びっくり系モンスターですか……パルトラ様、なかなかのセンスもお持ちで」


 ノアが褒めたたえるも、センスがあるのかまでは実感が湧かない。

 セレネはビックリンバットをじっと見つめているだけだし、このモンスターをダンジョンのボス部屋に放つのは不安が募る。

 ステータスをみている限りだと、耐久値が少し心許ないのだが……。


「ノアちゃん、このモンスターをたくさん用意して!」


 セレネのひとことで、量産することが決まった。

 笑いエネルギーの回収は、大量のビックリンバットで行うことになった。


 ただ、ひとつ問題があるとしたら、ヤジョウのことだ。


「ノアちゃん、このモンスターを生み出す度にヤジョウの力が必要になりそうだけど、大丈夫なの?」

「パルトラ様は心配しなくても大丈夫ですよ。新しいモンスターですから、それ相応の素材アイテムが誕生するのです」

「アイテムの引き出し……ボックスデータでしたっけ?」

「えへへ、ノアのボックスデータは他の方とは仕様が違いますので」


 微笑みから感じにくいのだが、ノアは確実に悪巧みしていた。

 デバッグモード当然の仕様は便利といえば便利だけど、乱用しすぎてゲームバランスが壊れないかだけが心配になってくる。


「サモンコールでたくさん召喚しますので、先にボス部屋の確認をしましょう」


 ノアが画面を開いて、現状を把握する。


「Bの部屋に笑いエネルギーのオブジェクトを設置していますので、冒険者が入り次第、モンスター送り込む方向で行きましょう」

「そうだね。わたくしは何をすれば良いですか?」

「裏切った赤い頭巾ちゃんは暫く姿をくらましているシナリオですから、ノアのお手伝いということで……あれっ?」


 画面を触り続けるノアが、急に戸惑い始めた。

 近くにいるセレネが息を吞む。


「ノアちゃん、どうしたのかな?」

「いえ、大丈夫……。そうじゃないのかも?」

「ちょっとわたくしも見てよいかな?」

「はい。パルトラ様も確認お願いします」


 明らかな何かの異変が起きた様子なので、私もノアの言葉に従った。


「問題なのはDの部屋です。画面が映りません」

「Dの部屋、私も開きません」


 ノアの言った通りのことが発生していた。

 ダンジョン内の様子が部分的に閲覧できないのである。


 交友会のシナリオ進行には、まだ支障がない段階ではあるが……。


「Dの部屋で集めるエネルギーって憎悪だよね?」

「セレネ様、その通りです。その部屋は未使用ですから、まだ冒険者は侵入できないはずになってます」

「どうする? 確かめるのは後にする?」

「ノアはシナリオの進行を早くしたいですけど。パルトラ様はどうしたらよいと思いますか?」

「えっと、私は……」


 地図を開いてみたけど、閲覧不可なのは一つの部屋とそこに続いている通路のみ。

 確かめるのは後でも問題ないのも事実。


「お姉ちゃん、行きたい。あそこに何かある」


 ヤジョウが私の腕を引っ張ってきた。


「ヤジョウちゃん……私、確かめに行きます。シナリオは、ノアちゃんとセレネさんで進行お願いします」

「えへへ、わかりました。何かあったらすぐ連絡お願いしますね」


 笑顔が戻ってきたノアは、セレネと協力して大量のビックリンバットを召喚する準備を始める。


「さてと、ワープで行けるとしたら通路の先端になるかな……」


 私はヤジョウを連れて、Dの部屋の前にある通路へワープした。



「ここ、薄暗かったっけ?」


 ダンジョンそのものは監獄塔をイメージした作りなのだが、やや違和感がある。

 ヤジョウもいることだし、慎重に且つやりたいことをしながらDの部屋に向かう。


「魔法分解、発動……!」


 適当な感覚を信じている。私は、宝石を地面に置いては採取場所の作成に当たっていた。

 これは後ほど、冒険者が訪れた際によりダンジョンっぽさを演出するためだ。


 勿論、冒険者が採取場所で素材アイテムを回収するのは認める。


 その前に私が一回触れて回収しておくのだけど。


「これといって何もないですね……」


 通路は問題なく進んでいくことができた。

 私はDの部屋にたどり着く。

 そしたら、部屋の中心部から人影が二つ見えてきた。


「えっと、誰かいるのですか?」


 私はDの部屋に入ると、息を吞んだ。

 まず、水色のベレー帽に、同色のドレスと大きなリボン。不気味な笑いお面をつけた、少女がひとりいる。

 このお面は、メルヘンマトンの顔とそっくりだった。


 そして、もう一人は。


「ああ……。やっぱり、パルトラが来たね」

「フィナ……」


 とても顔色を悪くしたフィナがいた。


「フィナは、どうしてここにいるのです?」

「それはだな。あたし、実は噓をついていたんだ」


「フィナが嘘をですか?」


「そうだ。パルトラには、前に家族旅行と言ってたよね」


「たしかにそうですけど」

「あれね……あの日、実はより大きな病院へ転院になったからログイン出来なかったんだ。症状が大きく悪化していてね」

「病院、転院……どういうことです?」

「あたしがシクスオにログインしていたのは、病院の個室だよ。でも、それももうじき終わるんだ」


 フィナは、どことなく悲しい顔になっていた。


お読みいただき、ありがとうございます!!



~次回予告~


ダンジョンの様子を映し出す機能が働かない部屋にいたのは、フィナと笑いお面を付けた謎の少女。


笑いお面を付けた謎の少女は好戦的ではなかったので、良からぬことは起きないと思いたいのだけど……。



フィナ、突然の余命宣告はやめて!

このままでは、三カ国ダンジョンマスター交友会が一緒に楽しめなくなっちゃうじゃない。



もしフィナが現実世界で死んでしまったら、オブスタクルのリベンジだって果たせないじゃないの!!

それに、フィナの母親だって悲しむだろうし、皆が強く生きてほしいと願っているはず。

だから、決して病気なんかに屈しないでほしい!



なになに、笑いお面を付けた謎の少女から妙案があって……?


それって現実世界で生きることを諦めるということなのでは。



次回、フィナ 死す


どうぞお楽しみに!!


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