交友会の続きをはじめる
「あっ……軽く寝坊した」
目覚まし時計を掛けていたはずなのに、お外はすっかりと日が暮れていた。
本来の予定では休憩二時間だったけど、こればかりは仕方ない。
水分補給よし、身支度よし。シクスオにログインした私は、天界クラムベルンのクラフトルームに足をつける。
「ごめんなさい……って、他の二人がいない?」
クラフトルームにいたのは、私の他にはまだ熟睡中のヤジョウだけだった。
交友会の続きがもう始まっているのかもしれない。
大きく出遅れるのは勘弁なので、私はダンジョンの様子を映し出すモニターを出してみた。
「どこにもいない……」
ノアとセレネがいないので、不安になる。
ヤジョウも熟睡中なので、尚更だ。
そこに、ログインしてくる人型のアバターが私の瞳に映り込む。
「二人ともごめんね、夕飯の買い出し行ってたら電車の遅れが発生して」
セレネがやってくると、心の片隅に抱きかけていた寂しさが吹き飛んでいった。
「あれ、パルトラちゃんだけ?」
「う、うん……」
私は何度か頷いた。
「ノアちゃんはまだ来てません」
「そのうち来ると思うね。全員揃わないことには交友会のシナリオが進まないからね」
「そうですね……何かワープしてくる気配がします」
視線が動いた私は、突如出現したワープゾーンの位置を捉えていた。
ノアがクラフトルームに顔を出してきたら、三カ国ダンジョンマスター交友会の続きが無事に始められる。
「パルトラ様、セレネ様、すみません。今後のアップデートについて緊急会議をやっていたのですが、終了時刻がちょっと遅れまして……」
ワープしてきたのは、赤毛の姿をしたノアだった。
シクスオの会議はきっと、赤毛の姿で行われたのだろう。
そこに欠伸をしながらふわふわと、ヤジョウが急接近する。
「あっ、五番さま。こんばんはーなのです」
「この方は――なんでですかぁああー」
ノアの奇声が、クラフトルームに響き渡った。
「こちらは、ヤジョウちゃんです。というか、ノアちゃんが五番様……?」
「五番って何なの? わたくしが知らない脚本が増えてません?」
「セレネさん、それは気のせいです……」
ノアは驚いて動きが固まっているので、代わりに私が弁解することにした。
休憩時間中に私のダンジョンでヤジョウを発見して、いろいろ遊んでいたことはこれから話すすつもりでいる。
ノアの驚く反応をみた感じでは、ノアはヤジョウの姿を見ることが出来ていた。
しかも、ノアが五番ってどういうこと?
ノアのことが、とても気になってきた。
一方でセレネは、シクスオのウワサのことなんて知らないも当然なのだが……。
「セレネさんは、ヤジョウちゃんの様子が見えてます?」
「それはばっちり見えてますよ」
セレネは、ヤジョウのことを認知出来ているようだ。
この場にいるダンジョンマスターは三人。三人とも見えているということは、ひょっとしたら何かメッセージを受け取っているとかあるかもしれない。
まずはそこから尋ねてみようかな。
「お二人さんが休憩に入られた後、私のもとにひとつのメッセージが入りました。送り主はニケさんです」
「ニケ様から……。ニケ様ですか……?」
「わたくしにはメッセージなんて入ってません」
「同じく、ノアもこれといったメッセージはないですね」
「――となると、ニケさんからのメッセージは、私だけになるのか」
ニケの手掛かりを欲しかったのだが、予想に反していた。
私以外にメッセージがないとなると、それは本当に何のために送ってきたのか。
謎が増えるだけである。
「とりあえず、現状報告です。ヤジョウちゃんと一緒に感情エネルギーの回収を行いました」
私が指をさした方向には、恐怖の感情エネルギーがたっぷりと詰まったクリスタルのオブジェクトが設置してある。
「あっ……女神ネフティマを活性化させる為にやっていることなのに、完全に忘れていました。ありがとうございます」
感謝を私に伝えてきたノアは、少しシナリオを見返す素振りをみせる。
恐怖の感情エネルギーだけでは、まだ足りない。
残り三つの感情エネルギーを回収してから、これらを使用する。
使うといっても、演出上での話だ。
とにかく、他の感情エネルギーを集めないことには物語が進まない。
「トルマリナブロッサムは、無事に討伐されてますね。ログをみた感じだと、いまから八分程度前といったところでしょうか」
「あのモンスターを倒すのに、随分と苦戦しているのね」
「セレネ様、あれは最強モンスターの五本指に入るくらいの難敵なので……」
徐々に落ち着きを取り戻してきたノアは、モニターを出して部屋の確認を行っていた。
恐怖のボスモンスターであるトルマリナブロッサムが倒されたのならば、次にやることは見えていた。
新たなボスモンスターの作成である。
次はどんな感情エネルギーを集めようかな?
あと、手が空いたら同時進行でやりたいこともある。
監獄塔の通路をよりダンジョンらしく見せるために、採取場所の作成も行いたい。
手元にある宝石の数はまだ少ないのだが、クラフトルームにある採取場所が復活していた。
ヤジョウの力も借りれば、よりたくさんの採取場所の作成を行える。
でも、シナリオ進行は疎かにしたくない。
なので、採取場所の作成については……程々に、且つ大胆にやっていきたいところだ。
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