時を進める力
「ヤジョウちゃん、ひとまず場所移動しましょう」
私は足元に魔法陣を描いて、ワープする。
このダンジョンのクラフトルームを経由して、天界クラムベルンに戻る。
今回はヤジョウごとワープさせるので、一度に二つのワープゾーンを用意することにした。
エグゼクトロットを使って、魔法陣をサクサク描く。
ヤジョウの体格は小さめ。
魔法陣はそこまで大きくなくても……。
「ワープそのものは、上手く行くと思いたいなぁ」
私は魔法陣を描ききると、早速ワープした。
ヤジョウも同時にワープさせる。
これを私のダンジョンのクラフトルームを経由して合計2度すると、辿り着くマップがある。
「お姉ちゃん……ここは?」
「天界クラムベルンのクラフトルームですよ」
部屋の片隅がドロップアイテムの置き場となっている、白をベースとした殺風景な場所にワープしてきた。
床には大きな六芒星が描かれており、青白い線が薄っすらと光っている。
「この部屋の片隅に、ありました!」
倒した冒険者から入手した、宝の塊。
私は早速、漁りだした。
目的のドロップアイテムは、トパーズのネックッレスと、ルビーの指輪。
ヤジョウに言われた通りだと、魔法分解をすると良いらしい。
宝石の名をもつアイテムそのものは貴重だけど。
それに見合った効果を、もたらしてほしい。
「まずは、トパーズのネックッレスから」
「お姉ちゃん、ちょっとストップだね」
トパーズのネックッレスを手元に取り出そうとしたら、ヤジョウが止めに入った。
「ヤジョウちゃん、どうしたの?」
「魔法分解をする前に、宝石アイテムを地面に置くのです!」
「地面に置く……」
「先にね、採取場所を決めちゃう感じなのよ」
「場所決めしておくのね。お試しだし、この部屋の中なら……」
「ヤジョウも探す!」
ヤジョウは周囲をキョロキョロと見渡した。
天界クラムベルンのクラフトルームは、部屋の形が四角い正方形なので、ドロップしたアイテムを固めている場所以外なら正直どこでも良い。
強いて言うなら、壁側が望ましいか。
「この部屋、ど真ん中が一番エネルギーがたまりやすそうだね」
ふわふわと移動するヤジョウは、部屋の中心地より少しずれた位置に正座した。
「ここだね。ここが良い」
ヤジョウが提示したのは、私のイメージと反するものだった。
「クラフトルームの、ど真ん中でも問題ないのかな……」
「大丈夫、不具合は起きない。このヤジョウが保証する!」
「それならしますか」
私は部屋の中心地に、トパーズのネックッレスを置いた。
「始めます。魔法分解!」
トパーズのネックッレスは、魔法分解によって細かい粒子になっていく。
その粒子は黄色い輪っかを描き出していく。
最後に、地面から白い水晶のようなオブジェクトが地面から突き出してきた。
トパーズスポットが誕生しました。というログも流れた。
これで成功なのだろうか。
早速だが、私は白い水晶に触れてみた。
すると、私はトパーズがふたつ手元に持っていた。
それともうひとつ。白き水晶というアイテムも手の上に乗っていた。
代わりに、空中に浮かんでいた細かい粒子がきれいさっぱりなくなっていた。
「お姉ちゃん、採取完了だね。これで暫くは、採取場所からアイテムを入手することが出来なくなるのだけど」
ヤジョウは、時計盤が付いたチャクラムを両手で持っていた。
「ヤジョウがたくさん時間を進めちゃうの!」
チクタク、チクタク。
針が時計回りに、高速で動く。
「ヤジョウちゃんは何をしているの?」
「こうやって時間を進めるとね、また素材アイテムを取ることが出来るの」
微笑むヤジョウは、トパーズスポットをじっくりと見守っていた。
時間経過の効果が与えられた白い水晶のようなオブジェクトは、粒子を周囲に飛ばす。
その範囲は、地面に描かれいる輪っかの中に収まるような形となっていた。
これ、もしかしたら採取場所でアイテムを取ることが出来るようになる目安なのかもしれない。
そして基本的には時間経過が必要なのだろうけど、ヤジョウの力を借りれば短い時間で何度でもアイテムの採取が可能ということかな。
ヤジョウについて可能性を見いだした私は、無意識に左手が出そうになっていた。
思わずなでなでしたくなる。
けど、今は邪魔になっちゃうかもだし、後にしよう。
「ふぅ……。ヤジョウ、疲れた」
時間を進め終わって、採取場所から再度アイテムの回収が可能になると、ヤジョウは再び正座をしていた。
「ヤジョウは少し疲れた。まだまだ未熟なので」
「そうですか」
私は再度、採取場所からアイテムを獲得した。
ヤジョウの力は確かに便利である。
今のところ、あまり乱用は出来ない感じではあるけど……。
「私、もうひとつ採取場所を作るね。ヤジョウちゃんはここで待ってね」
早口になる私は、すぐにクラフトルームの壁へ駆け寄った。
ドロップアイテムを固めている場所から少し遠いし、ここでいいか。
適当な場所を選んだつもりでいる。
私は、ルビーの指輪を地面に置いて。
「魔法分解、発動!」
ルビースポットを作成した。
ログを読んだ感じだと、宝石の名前がついているスポットの名称になるみたいだ。
そして、取ることができるアイテムは、宝石の名前に依存する。
ルビースポットからアイテムを回収した私は、心の底から確信していた。
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