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採取場所の作成方法


「お姉ちゃんは、いま退屈かな?」


 ヤジョウが話しかけてきた。


「えっと……。ヤジョウちゃん、どうしたのかな?」

「ヤジョウはね、採取場所の作成がしたいなーって!」


 両手を大きく振るヤジョウは、私と遊びたがっていた。


「採取場所の作成は……どうやるのですか?」

「お姉ちゃん、もしかして知らないの?」


「はい……ダンジョンマスターなのに、すみません……」


 私はヤジョウに詫びた。

 採取場所作成に関してはまだ自力でやったことなくて、事前情報の知恵すらなかったのである。


「それなら、ヤジョウが教えるね!」


 ヤジョウが両手を伸ばすと、時計盤の付いた円形の武器が、目の前に現れた。


 円のサイズはそこまで大きくない。

 武器の種別は、チャクラムといったところだ。


「ふふふっ、実は採取で一番重要なことがあって。時間が進むと何度も入手することができるの!」


 ヤジョウは得意げそうに語ると、私から見てチャクラムを時計回りに回していた。


「うーん……。このダンジョン、採取出来るところがないね」


 ガッカリしたヤジョウは、すぐに移動する。


 それを何度も繰り返していき、何としても採取場所を探し出そうとしていた。

 けど、それはかなわぬ望みであることは誰よりも私が知っている。


 このダンジョンは、他のダンジョンマスターが作成したものと違ってゼロから作り上げたものなので、採取場所なんて作成しない限り現れない。


 それでも、ヤジョウは自らの手で採取場所を見つけ出そうとしていた。

 その気持ち、無駄にはしたくない……。


「見本を見せたかったのかな?」

「そうそう。お姉ちゃんに見てもらったほうが伝わると思って!」


 ヤジョウはまだめげずに採取場所を探していた。

 ここは現在のフロア全域を調べられる前に手を打っておくか。


「ヤジョウちゃん、このダンジョンに採取場所がないならこの手で作ってみたいかなって」


「お姉ちゃん、本当かな?」


 ヤジョウが話題に食らい付いてきた。


 顔がとにかく近すぎる。

 これから何をされるかわからない恐怖感が、少し出てきた。


 しかも、ヤジョウの持っている武器から時計の針が動く音が聞こえてくるので、妙な緊張感もあった。


「ヤジョウちゃん、採取場所を作成するには、何が必要かなって」

「それならわたし知ってる。けど、やるの?」


「と、とにかく、そのアイテムを集めましょう!」


 いまはただ、採取場所を作成する。


 ヤジョウの機嫌を損ねない道はこれしかないと判断した。

 あと休憩時間が削れちゃうけど、一時間くらいなら大丈夫そう。


 ヤジョウとの遊びに乗ったほうが、得られるものがあると思うわけで。


「シクスオの採取場所はね、六段階のレアリティというのがあって、どんなレベルのものを作るかによって必要なものが変わるんだよっ!」


 ヤジョウの説明が始まると、私はその場で正座した。

 これは疲弊したからではなく、身長の低いヤジョウと無理なく視線を合わせる意識をもった結果だ。


「一番高いレア度だと、どんなアイテムが必要なのかな?」

「それはね、賢者の石を分解したらすぐに出来るよ」

「賢者の石……」


 私は知っている。

 賢者の石の交換レートは、五千兆エネミースコア。


 途方もない労力を使っても、決して届くことのない膨大な壁である。

 シクスオの最強を目指すならいつか取っておきたいけれど、採取場所ひとつ作るのに今から稼ぎにいくというのはあまりにも無防備なことである。


 やはりここは、作成するランクを落とすべき。

 現状すぐに作れるレベルの最高峰を見定めるほうが、適切である。


「ヤジョウちゃん、上から二番目のランクを作成するとなると、どんなアイテムが必要になってきますか?」

「そうねぇ……宝石が必要になるかも」

「宝石が必要ですか……」


 一段階落としても、貴重だと思えるアイテムが要求されることに代わりはないか。


 いや、待って。

 宝石のアイテム、もしかしたらあるかもしれない。


 私はすぐにログを確認した。


 辿るべきなのは、トルマリナブロッサムの部屋で倒した冒険者だ。

 あの冒険者の中に、レアスキル持ちの者がいるとしたら、ドロップアイテムとして宝石が転がり込んでいるかもしれない。


 そう思って、確かめた。


「あっ……あった……!」


 私の手が止まる。


『トパーズのネックッレス』


『ルビーの指輪』


 宝石の名が付いたアクセサリーのドロップ履歴が残っていた。

 しかも、二つだ。


 あの場にレアスキル持ちが二人もいたということか。


「行きたい……」


 私はすぐに行かないといけない気がした。

 天界クラムベルンのクラフトルームに。


 あそこに、宝石のアクセサリーがあるのだから。


「ヤジョウちゃん、ちょっと待てるかな?」

「ヤジョウは待たない。お姉ちゃんについていく」


「こことは別のダンジョンに行くつもりなんだけど、ヤジョウちゃんは大丈夫なの?」

「移動制限かしら。他の番号様は知らないけど、ヤジョウにそんなものはないよ」

「それなら……一緒に付いてきても問題ないか……」


 結局のところ、天界クラムベルンにヤジョウを連れて戻ることになりそうだ。



 今回の交友会でダンジョンマスター側が獲得したドロップアイテムは、天界クラムベルンのクラフトルームにかき集められるようになっている。


 イベント内で落ちたドロップアイテムは基本的に、交友会の終了後にダンジョンマスター三人で分配する予定なのだが、交友会を盛り上げることに繋がるのであればドロップアイテムを使っても大丈夫ということになっていた。


 似たような理由で、天界クラムベルンのダンジョン内に限り、天翔る銀河の(アンドロメダ)創造天使(クリエイト)のスキルが常時使えるように制御されている。



 むしろ、二人が休憩から帰ってきたら、ヤジョウについて何かと問いかけられる気がする。

 その時が来るまでに、私がヤジョウのことをもっと知っておく必要がありそうだ。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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