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青い宝箱を開けて


 剣で切りつけた際に発生する金属音と、銃声が交互に飛び交う。

 魔法による攻撃はなかったので、魔法職は恐らくサポートに徹している。


 その光景は、非常に活気に満ちていた。


 プレイヤーの皆でわいわいと。私にとっては、とても羨ましいくらいに。

 でも、その分揉め事は発生しやすい。

 他のプレイヤー達の気を遣い、なるべく巻き込まない攻撃を選択し続けている。


 だがしかし、攻撃回数は足りていなかった。残り70カウント付近になったと思えば、カウントが333に戻っていた。


 責任感を持ちやすいプレイヤーは、緊迫した様子を顔に出やすそうだ。

 それに見飽きたのか、セレネは少しあくびをする。


「ふああ……。ノアちゃんのダンジョンでさえ、攻撃する回数が足りてないね。三カ国にちなんだとはいえ、元々のカウントが多かったかな?」

「セレネさん、問題はそこではない気がします。恐らく宝箱が小さすぎるのが攻撃を当てづらくしているのが妥当かと思います。箱のサイズを大きく出来ないかな?」

「ふむふむ……では、パルトラ様の言う通りに宝箱を大きく致しましょう」


 聖典を出したノアが、魔方陣を展開する。

 三つの青い宝箱の真下から、白いエネルギーが放出して、追加の情報が与えられた。


 開始前に触れたプレイヤーの数に応じて、青い宝箱を大きくする。

 上限は、ダンジョンの天井に触れないくらいとする。


 この変更は、青い宝箱の前に出現するので、挑戦者はすぐに知ることが可能だ。


 前座の難易度を大幅緩和された。


 これによって、ノアのダンジョンでの活気が戻ってくる。

 すぐに再挑戦する流れとなった。


 そして――。

 ひとつめの青い宝箱のカウントがゼロになった。


 青い宝箱の蓋が開かれると、鍵のオブジェクトが出現する。


 それは誰にも拾われずに、ダンジョンの外へと飛んでいってしまう。

 飛んでいく先は、特別なダンジョンの入り口である。


「これで残り二つとなりました。冒険者様、頑張ってくださいね」


 鍵を左手でつかむノアは笑顔全開だった。

 そして、ノアからのエールによって、賑やかな冒険者たちはやる気に満ちていた。


 ちなみに、私たちの様子はシクスオのあちらこちらで見ることが出来るようになっていた。

 リアルタイムで中継されているのだ。

 ユーザー主体なのにこんなことして大丈夫なのか? という疑問も抱いたが、ここはシクスオの中でのお話なので問題ないとのこと。


 ただ、少なからず運営サイドの者が手を貸しているらしい。

 ノアちゃん曰く、その辺りの協力者のことはあまり表に出してほしくないと口封じされている。

 セキュリティー上の都合もあるのだろうか。


 私が詳しく知ることの出来そうな機会は、今のところない。


 けれど、シクスオは楽しい。

 それを味わう為のイベントのひとつ、といっても過言ではない。


 私なりに、頭の中で考えすぎたかな。

 そういえば、セレネのダンジョンの様子はどうなっているのだろう。


 あのダンジョンは、入り口が既に狭き門のようだから。


「えっと、こうかな?」


 私が画面に何度か触れると、海殿(かいでん)――グレイブ・クローニアの入り口、フィールドの様子が映し出された。


 そこには三人くらいの冒険者と、キラリが立っていた。


「セレネさん、これはどういうこと?」

「わたくしのダンジョンの入場制限は、前座の攻略に限り一時撤廃としているよ。キラリちゃんが即席のパーティーを組むようにして制約をすり抜けるというか。でも、ずっとオープンにはしないかな」

「ダンジョンの入り口を、オープンにしない……?」

「パルトラちゃん、単に一見さんお断りにしたいだけだよ。少なくとも、わたくしの演技はシクスオを深く楽しんでもらっている方に絞りたいから、かな?」


 セレネは再びあくびをする。

 ダンジョンの入場を制限しているのは、理由があったのか。


「ふわわ、少し眠たいね」

「セレネ様は直前まで小説の原稿をしてたのですね。休憩しても大丈夫ですよ?」

「そうだよ。わたくし、まだ高校生なんだけど、せっかくの小説のお仕事を……」と言ったセレネは、その場で両目を閉じてスヤスヤと眠る。


 セレネは高校生でありながらも、書き物のお仕事をされているのか。

 演技をして、シナリオを書いて。


 私とは、世界の違いを肌身感じる。


 けど、こうして一緒に何かイベントを出来るのは、シクスオのお陰なのか。

 私はノアの顔を、ぼんやりと見始めた。


 二つ目の鍵を入手しようと動くユーザーの様子を見守りながら、喜怒哀楽。

 画面に映っているのは、フィナだった。


 周囲には、複数人の冒険者たち。


 その顔つきには、私にとって少しばかり見覚えがあるものだった。

 ちらほらと覚えがあるのは、私のダンジョンが立った直後に探索していた者で間違いない。


 迷宮神殿オシリスのギルドを拠点にしてシクスオを楽しんでいる者たち。

 そこにフィナや、何故か私に勝つまで女の子の見た目になったタクトの姿が見受けられる。

 野良で集まった感があるが、シクスオのやる気は超一流。

 現地に取りまとめ役がいないのか故に、少し雑に始まった前座だったが、皆が各自動いて攻略に励みだしていた。


「うりゃーっ!」


 巨大な斧を持った男の大きな攻撃は、周囲のプレイヤーを巻き込んでリスポーン者が続出した。


 あーあ。と声に出していたノアは、驚きを隠せない。


「なんか……雑です」


 そう言わざる得ないのだが、攻略する上で仕方ないことだった。


 この斧の攻撃は、複数の敵を巻き込んで攻撃する毎に回転力が上がるスキルが適用されていた。

 回転力が上がれば、短時間にそれだけ攻撃回数が増える。

 雑だけど、いま私のダンジョンにいるプレイヤーは雑なりにやっていると言わざる得ない。


 残った者たちで、一斉攻撃を仕掛ける。そこにはフィナと、タクトの姿があった。


 それから間もなく。

 二つ目の、青い宝箱の蓋が開いた。


 鍵が放出されて、私が右手を挙げると、そこに鍵のオブジェクトが現れた。

 これで、開いていない青い宝箱が、残りひとつとなった。


「前座が終わるのも、あとちょっとです。パルトラ様、あの演出の時間が近づいてきました」


 ダンジョンの様子を映し出す画面を小さくしたノアは、少し落ち着きのない素振りを見せていた。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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