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交友会の開催


 監獄塔の至るところに存在している檻の中には、無数の冒険者が閉じ込められていた。


 罪の内容は、冒険者に全く知らせられていません。

 では、冒険はどうして監獄の中に閉じ込められているかって?


 答えは簡単だよ。


 この監獄塔(ダンジョン)を支配する、女神ネフティマが望んだからだ。


 但し現時点では、女神ネフティマは口を謹んでおられる。

 数多の冒険者を監獄に閉じ込めた行為は正しかったのか、否か。

 ときおり、心のそこから何かを蝕んでいることもあった。


 ただひとつ、言えることがあるとしたら。

 魔王と呼ばれた者の肉体に、女神の人格が紛れ込んでいるとされており……。


「これより、三カ国ダンジョンマスター交友会の開演といたします」

 黒い神官服に身を包んでいたノアは、不穏なプロローグを読み上げた。


  †


 天界クラムベルンに作成した特別なダンジョンの入り口には、とても硬い鉄格子があり、プレイヤーである冒険者たちは中にまだ入れないようになっていた。


 これを開けるには、開催国となるそれぞれのダンジョンマスターが作成したダンジョンに隠されている、鍵を入手する必要がある。

 とはいえ、その鍵の入手方法はとても簡単である。ダンジョンに入るとすぐのところに宝箱があるからだ。


 しかも、その宝箱は通常の宝箱とは色合いが違っていて、青色となっている。

 これはあくまでも、三カ国のダンジョンマスターによる交友会だからという意味だ。


 難しい要素は前座ではなく、天界クラムベルンに仕込んでおくもの。

 あとは、前座なんて早く突破してくれないと参加しているダンジョンマスターたちが暇を持て余すことになっていることくらいで……。


 というか、ノアの格好もそうだけど、セレネが赤いずきんの格好をしているので、わざわざ衣装から気合いを入れたのか。


「私だけシクスオの普段着ってどういうことですか?」


 やや不満げそうな気持ちを患っている私は、ノアとセレネに問い詰めた。


「ふえー。女神様に食べられちゃうよっ!」

「えへへ。パルトラ様の衣装、ノアは気にならないですよ。それに、赤いずきん様は、死ぬことすら許されない」

「あっ、パルトラちゃんは魔王の状態だから、まだ赤いずきん食べないんだった!」

「セレネを食べれない事実。身を持って体感した女神ネフティマの化身からは、涙がこぼれていたのであった」

「あの……ノアちゃん? 私、涙なんて流してませんが……」


「えへへ……。パルトラ様も、楽しく行きましょう」

「は、はい……。とりあえず、画面を出します。前座の進行具合を確認したいので」


 二人とこのままお喋りを続けても、収拾がつかないような気がした。

 なので私は、いったん攻略状況を確認する。


 まずは私の管理するダンジョンである、クレイキューブの地下迷宮、地下一階層からだ。

 宝箱周辺の画面を映し出すと、フィナの姿が確認できた。


「宝箱か……見たことのない発色をしている……」


 警戒心を怠らないフィナが宝箱を開けようとして表面に触れると、宝箱の上に333という数字が浮かび上がった。


「なんだこれは?」


 フィナは頭を悩ませた。

 この数字の形、私はどこかで見た記憶がある。


「ノアちゃん、宝箱の上に出てきた三桁の数字って、ダンジョンの最終ボスと何処となく似ていますね?」

「えへへ……。この特別仕様の宝箱は、ダンジョンの最終ボスと同様に攻撃を加えることによってカウントが減り、数字がゼロになると開きます。ただ、ダンジョンのボスと違ってこちらは時間制限を設けております」

「時間制限……ということは、数字が元に戻るとかですか?」

「特別仕様の宝箱から攻撃されることはありませんので、実質サンドバッグなのです。皆様で攻撃したらすぐに突破することが出来ます」


「みんなでわいわい、ね……」

「せっかくの交友会ですし普通では面白くないので、このような仕様にさせて頂きました」


 ノアがお喋りする間も、私は画面の様子を見守っていた。


「あっ、そろそろフィナが動きますね」


 フィナが片手剣を手に持つと、青い宝箱に斬りつけ攻撃を行った。


「うん? 数字がひとつ下がったな」


 フィナはこの宝箱の仕様に気づいたのか、攻撃を続行する。

 地道ながら数字がひとつずつ減っていった。だが、残りカウントが310くらいのところで急に数字が333に戻ってしまった。


 時間切れである。フィナによるソロプレイでの限界値は、思ったより早かった。


「はぁ……?」


 この仕様を身を持って味わったフィナは、開いた口が塞がらない。

 ソロプレイ前提ではないのは明らか。


「これは、ひとりでは無理か?」


 フィナは、挙動不審に頭を動かして、暫くこのまま固まってしまう。

 はたまた偶然なのか、現在フィナの周辺には他のプレイヤーがいなかった。


 つまり、お手上げ状態である。

 他のプレイヤーが、のこのことやって来るまでは。


「パルトラちゃんのダンジョンなのに、プレイヤーの数が過疎なのは不思議だよね。ちょっとノアちゃんのダンジョン見せてよ」


 セレネの手が映像に触れて画面が切り替わると、複数人のプレイヤーが青い宝箱に向かって武器による攻撃を仕掛けていた。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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