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ギミックエリアの作成


「ひとつ、ふたつ、みっつ……。ステージが完成したら、メッセージでフィナを呼ぶつもりでいよう……」


 水の上に浮かぶタイヤを九つ数えた私は、次のギミック作成に取りかかる。

 木材を四つ、縦に突き刺した。水辺のギミックから見て丁度隣接するような形になるような位置取りにしておく。


「先にこちらのギミックの攻略かな……」


 私の膝元くらいの高さと同等のところに、細長い木材で足場を作る。

 できるだけ地面と水平になるよう気を遣っておくが、仮に斜めになってもたいした影響は出ないとみている。

 シクスオでは、ダンジョン内で木材同士を接触させるだけで、簡単に足場を作れる。

 ダンジョンのマスターの資格があってこそなのだが、釘なしで木材がくっつくという仕様は便利だという言葉を使わざるを得ない。


「正方形の中央に一本置いて……」


 ひとまず、細い木の道を作ってみた。

 ただ、これだけだと面白みが足りない。


 もうちょっと道を複雑にしてみたいというか……。

 糸みたいに……蜘蛛のような。


「そうだっ!」


 中央の細長い木の道から見て、斜め四十五度の位置に新たな細い道を設置してみた。


「同じ長さだと、道が増えすぎる気がするから……」


 長さが短めのものをたくさん使って、迷路みたいに置いてみよう。

 設置間隔は、割と適当で良いかもしれない。


「出来たっ!」


 二つ目のギミックエリアが完成した。

 地面から少し足場が離れている、木の糸だ。

 この木の糸のエリアを抜けれたら、水辺のギミックエリアに挑戦、という流れにしておこう。


「木の糸エリアは簡単そうだから、最初のギミックにしておいて……次ですね」


 私は、三つ目のエリア作成に取りかかる。


「タイヤが三つ余っているから、これらを使っていこうかな」


 私は、一つ目のエリアと同じ要領で、縦に木材を四カ所刺した。

 正方形を作ると、今度はかなり高い位置に地面と水平になるように木材をくっつける。

 目指す形は、サイコロのような立体の四角形。私はそれを難なく作成する。


「これ、タイヤをぶら下げるのはどうかな……」


 紐がないけど、ちょっとやってみたい。

 天使の四枚羽を使えば、高いところの作業は問題なく出来るから、ギミックエリアの作成そのものは難しくはないはずだけど……。


 紐の代わりになる素材アイテムの調達に少し戸惑った時、私の元にひとつの通知が届いた。


 ノアからのメッセージである。



 ――パルトラ様へ。

 先日の、シクスオボット人形問題及びダンジョンマスターのアバター乗っ取り事件の解決にご協力いただき感謝いたします。

 結果的には、シクスオのシステムに爪痕が殆ど残らないことになりました。

 運営サイドの者として、感謝で胸がいっぱいでございます。

 そこで、なのですが……パルトラ様には特別なアイテムか何かを贈呈したいと思います。

 ただ、パルトラ様に対して、どう敬意を示せば良いのか、こちらとしても頭を悩ませる日々が暫く続いておりました。

 考えれば考えるほど、贈呈に対してパルトラ様が今後も純粋にシクスオを楽しんでもらえるのかどうか、というところに視点が行ってしまい、なかなか結論が出せずにいました。


 私は文章を読み終えると……。


 ここから開く。


 というメッセージが大きく表示されていた。



 いったい何が起こるのか。

 おそるおそる、ボタンを押してみる。


 すると。


 神秘的な、瑠璃色の瞳。

 美しい緑のロングヘアに、黒のヘッドドレス。

 ピンク色のフリルがたくさん付いている、黒のロリータワンピース。


 金の筆ペンのようなものに座っている、黒い羽を生やした小人サイズの妖精が、私の目の前にいた。


「我が名はメリーロード。悪の美学に忠誠を誓う、シクスオの教導なのだわ」


 メリーロードの声は、以前とは比べものにならないくらい脅威さを感じなくなっていた。


「あの……メリーロードさんがどうしてここに……?」

「それはこっちのセリフだわ。あの後、いろいろあったのよ」


 メリーロードは淡々と事情を話したがっていた。


「てか、まずはじめに問題が起こったのよ」

「何のです?」

「まず、マスタールームに連れてこまれた私は、アバターとの接続を切られたわ。キラリというアバターの所在を正常に戻す為に」

「うんうん……」


「問題はその後に起きてしまったの。(わたし)、ログアウトが出来ないの」

「ふーん……。シクスオでログアウトが出来ないって、どういうことでしょうか?」

「アバターを新しく作ってはもらえたのだけど……。現実世界に戻れず、食事は何故かこのゲームにあるものを摂食して栄養をとれるようになっていた、ということなんだわ」

「それは、どこに不便があるのですか?」


 私は人差し指で、メリーロードのおなか周りを軽くつついてみた。


「問題ありすぎなんだけど!」

「どこがです?」

「少しはネットニュースを見なさいよ!」


 メリーロードは大きな画面を開けていた。

 そこには、シクスオの運営会社に関するネットの記事が載っていた。


 見出しは『VRゲームの世界で生涯を過ごせるかもしれない不具合が発生!?』だった。

 内容はメリーロードが話した通りで、シクスオの運営会社は「現時点では多大な被害は報告されていない。原因については今後ゆっくりと解明していく」とだけ世間に伝えていた。


 結局のところメリーロードにバチが当たったという感じなのだろうけど、メリーロードの身に起きていることは世界的にみても一大事であった。



「つまり、現在メリーさんのアバターは実験体という扱いなのですね」


「一応、そうなるわ」


 自らの非を認めて、素直になっていそうなメリーロードは、ため息をついていた。


 確かにシクスオは楽しいけれど、それは現実世界ので生活があって成り立っているようなもの。

 メリーロードを完全に放置してしまう行為は、シクスオの世界にとって、あまりよくないことだと思えてきた。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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