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パルトラの強さの秘密


 三カ国ダンジョンマスター交友会の開催まて、あと一週間を切っていた。


「クレイキューブの地下迷宮、地下七階層の増設――――完了です」


 クラフトルームにいた私は、ダンジョンの拡張を試みていた。

 交友会で使う予定のギミックのひとつを、これから作るのである。


「作った部屋に移動して……。えっと、材料は……」


 鉄がたくさん。

 木材がたくさん。

 ゴムのような柔らかいタイヤが十二個。


 これらを地下七階層の、部屋の片隅に固めておいた。


「大きな穴がひとつあって……ここに……」


 部屋の中心付近にある浅い穴を見下ろしたら、エグゼクトロットを構えた。

 すると、私が身につけている黒いマントが微かに揺れる。


「響け、虚空の扉。冥界に潜む蛇神様の領域を、今ここに!」


 詠唱をすると、魔法の扉が出現する。


「水よ、流れて!」

 扉に対して指示を出すと、穴に向かって大量の水が流れ込んでいった。


「これで池は大丈夫そうかな?」


 私の気持ちは少し心配性になっていたが、作業の手は止めないでいる。

 そこに、金髪美少女のアバターが近くへワープしてきた。


「パルトラ、久しぶり」

「フィナ! 家族旅行はどうでしたか?」

「すごく楽しく過ごせたよ」


 フィナは、とても和やかな顔つきになっていた。


「ところでパルトラは、何を製作しているんだ?」

「あっ、これですか……?」

「そう。あっちにあるやつ」


 フィナは、部屋の片隅に固めてある素材アイテムを特に気にしていた。


「パルトラがかき集めた素材をみた感じだと、遊具みたいなのになりそうな気がするけど」

「少し違うかも?」

「そうか……」

「どう説明しましょうか。とりあえずパパッと作ってからでも良さげなのですが……」


 私は息を呑む。

 そして、私がシクスオにログインしていない昼間の時間帯を頭に思い浮かべていた。


「フィナは、私と最初に戦った時のこと覚えていますか?」

「うん。覚えている」

「その時、私ってどう戦ったか把握していますか?」

「うん? えっと……杖を上手く使って大胆に戦ってました?」

「そうですね。そのように戦っていましたね」


「でも、あのパルトラの身体的な動き、スキルによるものじゃない気がしているのだが……実際はどうなんだ?」

「それはですね……」


 私、パルトラの強さの秘密。


 シックス・スターズ・オンラインを始めた時点で持っていた、潜在能力。


 現実世界での、身体的なステータス。


 シクスオでしっかり反映されていると思っていたが、ファンタジーゲームにおける魔法職の動きではないことも簡単にやってのけていた。

 想像力が豊かなのも、自前でそれらを作成していたから、というのも大きい。


 さて、答え合わせをしてあげよう。


「私の実家の近くにある別荘の庭にですね、オブスタクルを設営してあるのです」

「オブスタ……クル……?」

「はい、オブスタクルという競技があるのです。簡単に言うなら、いくつもの障害物とかを突破してゴールを目指すスポーツです」

「スポーツ……体力が必要そうだな」

「はい。そうですね」


 私は不安になりながらも、小さく頷く。


「丁度いま作成中なのですが……オブスタクルを、三カ国ダンジョンマスター交友会に取り入れようと思いまして」

「ふむ、今度のイベント、面白そうになってきたかも」

「フィナがそう思ってくれるなら、私としても嬉しい限りですね」


 ワクワク感が長切れなくなったフィナは、両腕を軽く回し始めた。


「あたしに手伝えることがあったら、遠慮なく言ってほしい」

「フィナが手伝えること……」


 部屋の片隅に固めておいた素材アイテムをもう一度目を通した私は、口を少しばかり硬くする。


「完成……ステージが出来てから……」

「そっか。それまではあたしに出来ることはないということか」

「すみません。シクスオでオブスタクルのステージを作ることになったのは、昨日の話し合いですし、急に決まったことなので……」

「あたしは全然気にしないから。それよりも、水が溢れそうだが?」

「あっ……」


 フィナに指摘されたので、すぐに魔法の扉を閉じた。

 扉が閉じれば、水はこれ以上流れ込まれなくなる。


「溢れるところでした。ありがとうございます」

「パルトラ、本当に大丈夫なの?」


「フィナ、大丈夫ですよ。この水辺にはゴムのタイヤを浮かせるだけなので」


 私は、部屋の片隅に置いてあったゴムのような柔らかいタイヤを持ち上げると、さっさと水の上に浮かばせた。

 これを何回も繰り返す。

 このタイヤは見た目以上に軽やかなので、運ぶのは苦労しなかった。


「なるほど、水の上に足場か」


「ここに紐とかを使ってしっかり固定させることにより、競技性のあるステージの一部分になっていくのですよ」

「それじゃあ、ひととおり仕上がったら、試験運用としてあたしが挑戦しても良いのか?」

「はい、喜んで!」

「ふむ……大丈夫そうか。やるからには本気で攻略しないとだから……今から鍛えてくるつもりでいようかな」


 目を輝かせたフィナが風神の和太鼓を取り出すと、くるくると回してワープする。

 フィナの行き先は不明だったが、本気で鍛えにいくつもりでいる気がした。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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