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悪しき教導の確保


「それで、吾輩に出来ることは何だ?」

「とにかく、メリーロードを落とします」


「メリーロードとは、あのアバターなのか……」


 ドラゴンの姿になって飛行するセレネは半信半疑だった。アバターはキラリのものだが、操作はメリーロードがしている。

 大事なアバターが乗っ取られているという表現を使うのが、正しいのかもしれない。


「吾輩は電車との距離を詰めるぞ」


 セレネは冷静に、電車との距離を縮めた。


「うん……ここから狙うか」


 エグゼクトロットの先端をメリーロードに向けた私は、詠唱を開始する。


「解き放て、疾風の刃!」


 エグゼクトロットが光って、先端から魔法が放たれると、鋭い風がメリーロードにめがけて一直線に飛んでいった。


 電車の上にいたメリーロードは避けれるはずもなく、風の刃が直撃する。


「スキル、妖精の加護っ。……ぐはっ!」


 メリーロードはひざまずく。

 そこに、ルークのスキルが合わさる。


「発動、ゼロ・ワールド!」


 ルークが一瞬にして消えて、またすぐ姿を現した。


「ぐ、ぐぐぐ……」


 メリーロードはというと、その場で仰向けになっていた。


「パパっ!」


 エマはすぐに駆け寄って、ルークの両膝を握りしめた。


「これで、終わったな」

「はぁ……悪しき教導はもうおしまいだ。妖精の加護による二つ目の効果、リスポーン判定を一度だけ無かったことに出来る。だがしかし、この効果の発動後は暫く身動きがとれなくなる」

「強力なスキルが足を引っ張ったな」


 ルークはメリーロードの顔をみる。


「魔法少女、アプフェルハート参上! ……って、もう終わっちゃったのですか?」


 すぐに、アプフェルハートが現れた。


「とりあえず、主犯を連れて行きますね」

「そうだな。ありがとう」

「いえいえ、これがこちらのお仕事ですから」


 アプフェルハートは、エマに一切顔を合わせず立ち去っていった。

 今回は気を遣ってとかではなく、単純に電車の上という不安定な場所にいる故の余裕のなさがそうさせたのではないかと推測する。


「セレネさんも、ありがとうございます」


「お礼は後で構わんが……。そろそろトンネルか?」

「そうですね、トンネルです。エグゼクトロットは一旦閉まっておきます」


 私の両手が空いたところで、トンネルの中に入っていった。

 そして、電車の速度が徐々に遅くなっていき、駅のホームへと到着した。


「ここは何処だろう?」


 電車から降りた私は、その場でぐるりと一回転してみる。


 見覚えのない洞穴に、深緑の草木が生えている。

 この草木は素材アイテムなのかな。調べてみないとわからないけど……。


「エマ、マップを確かめてくれ」

「わかった。ちょっと待ってね……」


 駅のホームに降りていたルークは、エマに調べてもらうつもりだろう。

 この結果を見てから、深緑の草木を調べるかどうか決めようかな。


「えっとね……黒き清らかな渓谷の、新しめのマップだって」


 エマが口にしたのは、私にとって聞き覚えのあるダンジョンの名前だった。

 たしか、運営サイドで作られたものだ。最近になって新しい探索場所が増えたばかりのダンジョンであり、奇妙な現象の噂も流れていた。


「新しめのマップということは、またマップが開けなくなる現象があるかも?」

「迷宮神殿のダンジョンのマスターよ、それはメリーロードが言っていたアンチウィンドウの効果ということになるが……」

「アンチウィンドウですか?」

「そうだ。そのスキルこそ、メニュー画面に干渉させなくなる原因となっていた」

「なるほどです。つまり解決したってことですね」


 私はほっと息を吐く。

 現在いるダンジョンの危険性がないことが証明されたからである。


 これで心おきなく、ダンジョンのマスター交友会もできる気がした。


「迷宮神殿のダンジョンのマスターに一応言っておくが、今回の交友会に俺たちは参加しない」

「ルークさん、どうしてですか?」

「俺は既にダンジョンのマスターではない」

「パパは、エマにとっての英雄だよ!」


 エマはものすごくニコニコしていた。


「そっか……わかりました。エマちゃんとダンジョン作り出来ないのは残念ですね」

「フェニクルの新たなダンジョンのマスターは、もっと経験を積まないといけないのもある」


「そうだねー。エマ、先輩に負けない立派なダンジョンを作りたい!」


 やる気に満ちていたエマは、私に手を差し出してくる。


「先輩、今日はありがとう」

「別にお礼を言われる程でもないような……」


「先輩も大活躍だったよ!」

「それはどうなのかな……」


 エマから目を逸らしてみると、セレネと顔が合った。


「パルトラちゃんも大活躍してたと思うよ?」

「やっぱりそう思いますか」


「その活躍っぷりを、どうにかダンジョンのマスター交友会にも持ち込みたいものだねー」


 セレネは両手を使って、何かの文字を入力していた。

 何の文字が入力されていたかは、すぐに判明する。


「はい、初稿の完成。そして送信っと」



「私に通知が来ましたが……」


 メニュー画面を開けて、メッセージを確認した。


「これは、もしかして」


 セレネから送られてきたもの。

 どこからどう見ても、三カ国ダンジョンマスター交友会で使うであろう、ファンタジー小説だった。

 キーワードは、監獄、塔のダンジョン、冒険者の脱出、女神。

 この四つであった。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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