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ルークの決意


「そうか……。今は、メリーロードとの戦闘に集中するしかない……」


 ルークが小声で囁くと、一瞬だけ涙のようなものが流れる。

 やっぱり、彼は何かを抱えている。

 ただ、その答えを見つけ出すのは、少なくとも今ではない。


 ルビーアイ炭鉱最深部の景色がすぐに再構築されていき、エマとメリーロードが戦っている戦場に戻ってきた。


 状況は、エマが防戦一方。

 ツタに付いている刃が襲いかかるが、まだしっかりと回避出来ている。ただ、エマの体力が何処まで持つか。


「俺は、どうすれば良い?」

「ルークさん?」

「作戦だ。このままでは、何も変わらないから」


 ルークは、私を頼り始めた。


「そうですね。まずはメリーロードが操っている、ツタの動きを止めましょう」

「ツタを狙うのか」

「出来れば根っこのほうが有効と思います。ただし、ひとつ注意してください」

「何だ?」

「メリーロードに近づき過ぎないことです」

「わかった」


 ルークは指示を飲み込むと、全速力でエマの近くに駆け寄った。


「エマ、一旦パルトラのところまで引け」

「パパ? わかった」


 エマはルークにめがけて走って行く。


「パパ、何か策でもあるの?」


「そこのダンジョンマスターに聞けばわかる」


 エマとルークがすれ違うと、ツタの動きが少し止まった。


「ターゲットは、俺にしろ」


 ルークは、持っていた槍を振り回す。


「ふふふ、次の相手はお前か」


 メリーロードは、ルークの姿をよく見ている。

 私からは視線が逸れているはず。これなら今のうちに……。


 詠唱を始めようとした私は、首を横に一度降る。


「あっ、パーティーの組み直しをしてないから、範囲魔法だと巻き込む可能性があるのか」


 魔法を打つ前に気づいた。

 でも、これじゃあ高火力の一撃をメリーロードに放てない。

 一度、状況を整理する。


 手元には、エグゼクトロット。

 持っているスキルは、レアスキル判別と、スポットライト。そこに、ギミック系ダメージの無力化させるマント。

 黒い王冠のアクセサリーにはスキルは、付いていないはずだ。


 念のため、確認しておくか。


「これは……」


 私は目を疑った。

 タイムレスクラウンに、スキルが四種類付いていた。


 私は慌ててそれらのスキル、及び簡易的な説明文に目を通す。


 ひとつめのスキルは、フレンドバリア。

 フレンド登録を済ませているプレイヤーに与えてしまうダメージを、激減させるもの。


 このスキル自体は、オンオフの切り替えが可能。


「でも、今のところスキルが有効には発揮しないような……えっと?」


 説明を読んだ直後、ルークからフレンド登録しませんか、という通知が来た。

 私は迷わず、ルークとフレンド登録を済ませる。


「先輩、どうしたの?」

「エマちゃんともしておこうかな、フレンド登録を」

「別に良いけど、いまなの?」

「今じゃないと、駄目かもね」


 エマの顔色をうかがいながら、エマとフレンド登録を済ませた。

 これで、魔法を巻き込んでも大丈夫そう……?


「くらえっ」


 槍の先端を器用に扱うルークが、ツタのひとつを切り落とすと、メリーロードの顔つきが歪みだした。


「この短時間で、学習した……? 結界が反映されない先端から、墜とす気なのか?」

「それはどうか、俺にはわからない」


 ルークからは、次のツタを落とそうとする意志が見受けられる。


「パパ、頑張って!」


 指示を受けていないエマは、ルークを応援する。


「えっと、二つ目は……」


 スキル名、サモンコール。

 いわゆる召喚魔法の類いだろうか。

 今のところ、使うべきではないスキルなのは確かである。


 続いて、三つ目を確認する。

 腕力15パーセントアップ。

 エグゼクトロットを投げた時に威力が期待出来るもの。ただ、それだけ。


 私は、最後のスキルを確認してみた。


 スキル名は、深淵の加護。

 あらゆる行動に対して様々な効果をもたらす、とだけ説明欄には記載されていた。

 スキルの強さが未知数の故に、過度な期待は出来ないということか。

 だけど、それはシクスオらしいとも言える。


 効果なんて自分で編み出してのこと。

 私はもう一度、エグゼクトロットをメリーロードに向けて投げた。


「うん? またかっ!」


 メリーロードは慌てて緑の結界を展開する。


「エマちゃん、今だよ!」

「先輩、わかりました!」


 走り出したエマは、ルークと違うツタに向かっていく。

 狙いはひとつ。ツタをそぎ落とすことだ。


「エマ、行くよ」


 エマの双剣が、ツタを切り裂いた。


「こっちもくらえ」


 それに続いて、ルークがツタに槍を刺す。


「何故だ、何故こんなことに……」


 メリーロードはため息を漏らす。

 エグゼクトロットの先端が当たり続ける結界は、すっかり赤色に染まっていた。


 私はその様子を見守りながら、次の一手を考えていた。

 それにしても、変だ。……私の攻撃だけが、結界にちゃんと通っている?


 ルークとエマだけでは、結界をどうにでも出来なかった感じなのに。

 どうしてだろう。


 何故なのか、理由が知りたい。

 恐らく、妖精の加護を詳しく知れば分かるかもしれない。


 私は、知りたい。もっと知りたい。


 そして、キラリのアバターを取り返しに行って……。

 私は、右足を前に一歩だけ出した。


 その瞬間だった。


 ボゴッ、ゴッ――。

 エグゼクトロットによる攻撃に耐えきれなくなった結界か破裂したのか、鈍い音が周囲に鳴り響いて、メリーロードの周囲に白い煙がまき散らされた。


「戻ってきて、エグゼクトロット!」


 手を伸ばすと、エグゼクトロットが私の手元に返ってきた。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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