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悪しき教導の脅威


「ようやく来たか。悪しき教導メリーロードを楽しませてくれる者よ」


 メリーロードがニヤつくと、メリーロードの周囲に植物のツタが四本、地面から生えてきた。

 そのツタの先端には、斧のような鋭い刃が付いていた。


「メリーロードさん、私は貴方を倒します!」


 エグゼクトロットをメリーロードに投げつけた私は、キラリのアバターを取り返す手段を考えていた。


「早い……! だが、妖精の加護の前では、いかなる攻撃が無力になるわよ?」


 緑の結界が展開されて、メリーロードを保護する。

 そこにエグゼクトロットの先端が突き刺さり、緑の結界が赤に染まっていった。


「ほらね、こんな杖なんて振り落とせば良いのだよ」


 ツタの先端で、エグゼクトロットをなぎ倒そうとした。だが、エグゼクトロットは微動だにしなかった。


「なんだ、この武器は……!」


 余裕を見せていたはずのメリーロードの態度が急変した。


「エグゼクトロットですが、何かあったのです?」


 私は右手を伸ばして、エグゼクトロットの回収する意識をもった。

 すると、エグゼクトロットは水に変化し、すぐに私の手元へ返ってきた。


「武器の自動回収か。そう簡単には勝たせてくれないわね」


 メリーロードはやや悔しそうにしながらも、次の攻撃の準備を進めていた。


「隙あり、ていやぁ!」

「ふん、これは効かないわ」


 急接近していたエマがハンマーでのひと振りを仕掛けるが、メリーロードが展開している緑の結界に阻まれてしまう。


「ふえ……やっぱり、駄目かも」


 エマは少し距離をとって、息を整えはじめる。

 そこにメリーロードのツタが襲いかかる。息を荒くするエマは、ツタの攻撃を避けながら懸命に駆け抜けていた。


「やはり、あの加護を破る手段が無ければ、こちらに勝算がない」


 ルークも同様な理由で、メリーロードを攻めることが出来なくなっていた。


「ルークさん、諦めないでください。メリーロードのバリアを破る手段、きっと何処かにあるはずです!」

「俺とエマの打つべき手はすべて打った。それでもか?」


 メリーロードが展開する厚い壁の前に、為す術がないと告げてきたルーク。


「ルークさん……力及ばずかわからないけどダンジョンマスターを辞めると言ったり、英雄になりたいと言っておきながらも、ひとりでなんとかしようとしようと考えたり。それで怖じ気づいて何が残るというのですか?」

「それは……いつの話だ?」

「ルークさん、ごめんなさい。少し……聞き耳していました」

「どこでだ?」

「貴方のダンジョンの近くですよ」

「そうか」


 ルークは両手で槍を強く握りしめると、メリーロードの姿を見つめはじめた。


「俺も、覚悟を決める頃合いか」

「そうです。その勢いで、一緒にメリーロードを倒しましょう!」

「違う、そうじゃなくてだな」


 ルークは黒い基盤のような物体を、手元に取り出していた。


「迷宮神殿のダンジョンマスターよ、エマが攻撃を引きつけているこの隙を使って、ほんの少しばかり手伝ってくれないか?」

「私が、何をすれば良いのです?」

「このアイテムに対して、固有スキルを使うだけで構わない。後は俺がすべてやる」

「なんかいやな予感もしますが……わかりました」


 私は、意識を集中させる。

 この黒い基盤に強く執着を持たせていって。


「ルークさん、いきますよ。天翔る銀河の(アンドロメダ)創造天使(クリエイト)!」

 私がスキルを発動させると、ルークは言葉を重ねてきた。


「ゼロ・ワールド……!」


 ルークのスキルが発動すると、周囲の景色が崩れ去った。


「まさか……成功するとはな」


 ルークは驚いていた。



 暗闇に包まれた空間の中で。


「これはいったい、何が起きたの?」

「そうだな……。説明するより、試したほうが説明がつくか」


 ルークの目の前には、黒い基盤のような物体が浮かんでいた。

 その物体に対して、ルークが指先で軽く触れると、物体の中心部分から回路のような細い緑の線が無数に広がっていった。


「ゼロ・ワールドで対象に選べるものは、アバターだけじゃないんだ。アイテムも選択することが出来る」

「それで、そのアイテムっていったいなんでしょうか?」

「ああ、俺がいま触ったこれか」

「そうです」

「他の誰にも言わない自信はあるか?」

「はい、えっと……たぶん」


「ふうん……あとは俺がどうするか、だな……」

「ルークさん、とりあえず言ってください!」


「すまない。これのことだが……その、だ……」


 ルークは、アイテムの説明をするのを躊躇っていた。

 このままだと、何も先に進まない気がするのだけど……。


「早く言わないと、私のスキルを解除しますよ?」

「それはやめてくれ。言うから」


 観念したルークは、おでこに手を当てる。


「このアイテムは、悪しき教導メリーロードから仕入れたものだ」


「どうして、そんなものが……手元に……?」

「ダンジョンマスターとしての才能ががない俺は、とにかく変わりたかったんだ」


 ただ、それだけ。

 それだけの為に、手に入れたアイテム。


 詳しい効果は分からないが、シクスオを楽しみたい私にとっては、不都合なアイテムだとハッキリ言えた。


 私とルークの前に広がっている光景は、本来ならユーザー側から決して見えてはいけない部分。

 ゼロ・ワールドの効果で時間がほぼ止まっている以上、シクスオのシステムに大きな不具合が起きないと思われるけど、天翔る銀河の(アンドロメダ)創造天使(クリエイト)を違法性のありそうなアイテムと併用して悪いように使うのは、私の趣旨と反している。


 どうして、ルークはそれを望んだのか。

 ルークは……私に何か助けを求めている……?


 その答えがわからないまま、私は固有スキルの発動を止めた。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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