エマちゃんと遊ぼう(モンスター作成)
アプフェルハートが、ルビーアイ炭鉱のクラフトルームの座標を書き換えた。
メリーロードに対抗する為の、一時的な処置だ。
これによって、ダンジョンマスターの権限を持っていないエマであっても、モンスターを作成することができるようになる。
基本的に、ひとつのダンジョンにつき、ダンジョンマスターは一人しか登録できない。
だが、その壁を打ち破り、ダンジョンマスター同士の共同開発を可能とさせるのが、天翔る銀河の創造天使に秘められた能力の一部分だ――。
「えっと、始めますよ……?」
ストーリーイベント用の本に触れているアプフェルハートが、マスタールームにアクセスして、モンスターを部屋の中に召喚していく。
出てきたのは、小さめのファイヤースライム。
一度に呼び出す数は十から二十くらい。
生み出されたモンスターに敵意は感じない。
「エマ、行くよ!」
それをエマが効率よく倒して、素材を回収する。
その後、集めた素材を用いて、強いモンスターを作成していく。
大まかな作戦が決められて、実行に移していた。
ドロップアイテムの狙いは、基本的にコアの一点狙い。
その他のアイテムが落ちたら、一旦部屋の片隅に集めていく。
私はルビーアイ炭鉱のマップの様子を見ながら、ダンジョンの奥地へと送り込んでいくモンスターを作成していくことになりそうである。
そして、作成したモンスターを、二つ目のストーリーイベントが見れる部屋で待っているルークと合流させたいところである。
効率が良いのか、開始数分でファイアースライムのコアが十五個集まった。
コア三個でファイアースライムを一匹作成できるので、一定間隔でファイアースライムが五匹ず誕生するようになる。
「エマちゃん、ちょっと手伝えるかな?」
「先輩、もしかして、コアをはめる作業……!」
「そうだよ。せっかくだし、マウバットのコアも使ってみますか?」
「うん。やってみる」
エマはマウバットのコアを手に取ると、その場に置いた。
「とりあえずハンマーで叩いてみるよ!」
エマはハンマーを持つと、マウバットのコアを強く叩いた。
すると、地面が赤く煌めいた。
「先輩、なにが起きてるの!」
「えっと……流石にわからないけど……アプフェルハートさん、これはルビーアイ炭鉱が関係してます?」
「赤く輝いたのは、ルビーがもつ宝石によるもので間違いないよ」
アプフェルハートが言うからには間違いない。
エマには、ダンジョンマスターとしてのセンスがある。
キキキキッ――。
これまで倒してきたものより、遙かに赤みに帯びたマウバットが、誕生していた。
「モンスターはマウバットじゃなくて、ルビーアイズですね」
アプフェルハートから指摘されたので確認すると、確かに名前がルビーアイズだった。
「エマ、変なことしましたか?」
「そんなことないですよ。たぶん……」
「先輩がそういうなら、もう心配はいらないね!」
調子に乗ったエマは、ファイアースライムのコアを五個ずつにまとめてからハンマーで叩いた。
すると、ファイアースライムのコアとルビーが共鳴して、大きめのファイアースライムのコアが出来上がっていた。
その大きめのファイアースライムのコアを三つかみ合わせると、空中に浮かび上がった。
「先輩、今度は何が出るかな?」
「うーん……恐らく何か足りない……」
「どうしてそう思うのです?」
エマは、大きなファイアースライムのコアをじっと見つめていた。
でも、何も出てきそうになかった。
歯車が回っていないから、このままでは駄目だと思う。
「上から何か注げば出てくるかな?」
小声で呟いた私は、試しにビャクズの死骸を上から投げ入れることにした。
すると、歯車が動き出す。
死骸が歯車に押し潰されて、赤いスライムが地面に落ちた。
そのスライムが自力で何かの形を作ろうとしていた。
どんどん縦に伸びると、お面のような顔が出来上がる。
次に、手だ。
まるで人間のように。ただ、大きめだから握手は出来ないと思う。
その後に体。最後に杖のような武器が出来た。
足は出来なかった。
けど、浮かんでいるから問題はないだろう。
「りりりりり……」
出来上がったモンスターの名前は、エカルラートリッチ。
アンデッドの上位モンスターだった。
「先輩、なんですかこれは!」
「強そうだね」
「なんで冷静でいるのですか?」
「まぁ……慣れかな……」
私は、ふと最初に作り出したダークスライムのことを思い返していた。
あのダークスライムたちはとても強いのだが、今度私のダンジョンでいまやった事と同じようなことをすると、一体どんな凶暴そうなモンスターが出来るのか、想像するだけでも……。
「すみません。モンスターの追加はどうしますか?」
待機していたアプフェルハートが尋ねてきた。
「第一軍隊の数は足りそうだから、どうしよう……」
「エマ、デルタワームと戦いたい!」
「特別なモンスターのことね……どうかなぁ、ドロップアイテムなしの設定でしか出せないかもしれなくて、ごめんね」
「それだと、エマが強くなれない……」
エマは少しガッカリした。
「とりあえず、作成したモンスターの進行を開始させます!」
私はモンスターに指令を送って、進行させることにした。
それらのモンスターが進んでいくと、マップの視界が少しずつ広がっていくのを確認できた。
お読みいただき、ありがとうございます!!
面白いと思いましたら、感想、ブックマーク、評価をお願いします。作者の励みにもなるので何卒よろしくお願いします!!!