ルビーアイ炭鉱
ただ、現時点で連絡が取れなくなる現象は見受けられない。
ステータス画面やフレンド画面を開けることが出来ているからだ。
私はこのままエマについて行き、ダンジョンに入るのが良さげなのかな?
天翔る銀河の創造天使を発動すれば、周辺マップの情報を一個人で取り入れることが出来るようになる利点がある。
それ以外にもメリットが多々発生する。
「パパ、ルビーアイ炭鉱の入り口はどこ?」
周囲をキョロキョロ気にし出すエマは、目線が迷走しはじめる。
「エマ、左だ」
「左……?」
「パパ、左方向にダンジョンがあるの?」
立ち止まったエマは左を向くと、目を細めた。
私も確認してみようかな……。
「ここが、ルビーアイ炭鉱?」
視界を動かすと、整備されている洞窟の出入り口があった。外からでもロウソクが燃えているのが目視できるようになっていた。
「さて、行くか」
茂みから出てきて一番先頭に立ったルークは、洞窟の中に入っていった。
「エマちゃん、行こうね」
「先輩……そうだね、エマは行くよ!」
私はエマと一緒に洞窟の中に入っていった。
すると早速、壁の色が赤く煌めいた。
けど、思ったより暗い。ここは私が持っているスキル、スポットライトで照らしていくことにした。
探索の目的は、デルタワームの討伐。
どのくらい奥に進めば良いのかわからないけど、運営が用意したダンジョンの攻略ということで気分がわくわくしてきた。
けど、音を立てると良くないのかもしれない。
騒がしくなると大変そうだけど、アプフェルハートは一緒についてきてない感じなのか。
もしかしたら、フィールドでの調査に専念している感じなのかもしれない。
それなら、エマが騒ぎを立てる心配も少なくなりそうだ。
暫くは、もの静かに歩いていくことになるけど……問題はないと思う。
キ、キキキ――。
急に、天井付近が騒がしくなった。
モンスターのお出ましだ。
『キ、キキキッ!』
早速飛んできたか。
数は五――。そのモンスターたちは群れをなしていた。
よく見てみると、体がボールのように丸っこい、コウモリの姿をしたモンスターが天井付近を飛び回っているだけのように見えるけど、いつでも襲ってきそうな雰囲気が出ていた。
「マウバットかな?」
私がエグゼクトロット構えると、エマが銃を天井に向けた。
「エマが、ぜんぶ撃ち落とすよ!」
張り切っているエマが引き金を引くと、薄紫色の細い魔法の弾が発射された。
それがマウバットの丸っこい部分に直撃すると、床に落ちてきて消失した。
そして、ドロップアイテムとして、マウバットのコアがひとつ地面に転がりこんだ。
見た目は黒い歯車。これを複数個集めるのが結構大変そうだというか……。
「先輩、あれはなんですか?」
「エマちゃん、あれはね……たくさん集めてくっつけると、モンスターを作り出すことが出来るアイテムです」
「エマ、いまから試してみたい!」
双銃を胸元にあてるエマは、目を輝かせていた。
「とりあえず、残りの四匹を倒してからで……」
「はい! エマ、頑張ります!」
「エマ、よそ見しないように。てか、モンスターは残しておいたほうが良いか?」
ルークがマウバットを一匹倒していたので、残り三匹となっていた。
「パパ、残りはエマがやっつけるよ!」
エマは銃を構えると、すぐに引き金を引いて二匹撃ち落とす。
「宿れ、炎の球体――」
詠唱した私は、エグゼクトロットの先端から炎の弾を飛ばした。
それがマウバットの丸っこい部分に当たると、すんなりと地面に落ちた。
これで戦闘が終了。
ドロップアイテムとして、マウバットの羽を四つ手に入れた。
「結局のところ、アイテムドロップしませんでしたね」
「先輩……。エマ、確率とかわかんない」
「マウバットのコアか……。エマちゃん、運の他には、数をこなすのが大事だからね」
「数かな……? エマ、もっとモンスターを倒す!」
エマは銃口を天井に向けて歩いて行った。けど、モンスターが追加で出てくる気配はなかった。
ルークが先頭に立って警戒しているから、間違いなくエマが先制攻撃出来る隊列なんだけど、モンスターの気配がないのが妙に引っかかる。
やがて、少し広めの部屋が出てくると、ルークは警戒を解いた。
「ふむ、これか……」
ルークは何かを発見した。
「これを見てみろ」
ルークが指し示したのは、青く輝かせている本のオブジェクトだった。
「チェックポイントだ。武器を降ろせ」
「パパ、わかった。先輩?」
「うん。いまから何が始まるのかな?」
「気にするな。これをよく見てみろ」
私はルークの指示通りに武器をしまい込むと、本のオブジェクトに注目する。
「ルークさん、これはなんでしょうか?」
「エマには一度見せたことがあるが、お前は初めてか?」
「私は運営さんが作ったダンジョンに踏み入れたことがなかったもので……」
「そうか。ならば言っておこう。これに触れると、モブキャラが出てきてストーリーが流れるようになっている」
ルークは青く輝く本に触れた。
すると、本のオブジェクトを中心に大きな文字が浮かび上がった。
『ルビーアイ炭鉱・第一話』
――精霊に好かれた赤の少年と、生徒会長。
私からみて少し左の位置に、赤髪の男の子がひとり召喚されると、勝手にしゃべり出していく。
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