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電車での移動


「やったー。エマ、先輩のお友達になりたいから、よろしくね!」


 すぐに私のもとへと駆け寄ってきたエマは、両手を掴んできた。


「行き先はパパに任せちゃうけど、大丈夫だよね?」

「う、うん……。私にお手伝いできることであったら、何処にでも行けますけど」

「よし。それじゃあ行くよ!」


「乗車するから、あまりはしゃぎ過ぎるなよ?」


 改札口を通り抜けていたルークは、私達に一切見向きもせず、止まっている電車に乗車しようとしていた。


 私は、エマと一緒について行くことになった。

 行き先は、お任せ。

 運営が用意したダンジョンのいずれかであることに、変わりはないけど。


「では、出発です!」


 エマが座席に座ると同時に、電車が動き始めた。

 他に乗車しているプレイヤーがいなかったということもあってか、座席はガラガラだった。


 ルークは無言で何も言わない。

 一方でエマは、はしゃぎたい気持ちを抑えながら窓の外の景色を眺めていた。


 私、到着するまでやることないかもしれないので、周囲をキョロキョロ見渡してみる。

 時間潰し、何かできないかな……。


 車内の掲示物に、シクスオで走っている鉄道の決まり事とか書いてあった。

 私は目を通してみる。



 電車に乗車中及び、駅構内は戦闘禁止エリアとなっている。但し、線路の上及び列車の屋根の上では戦闘は禁止されていません。


 移動にかかる時間は、ひと駅につき三十秒から四十五秒である。また、線路は円形になっているので、乗り続けてると最終的には最初に乗車した駅へたどり着くことになっている。


 駅構内に電車が到着していなくても、そのままお待ちください。すぐに電車が到着するよう手配します。


 と、書かれていた。



「最初に向かう運営ダンジョンについて、少し話しておくか」


 ルークが口を開くと、電車が駅のホームに入って停止する流れになったが、まだ乗車しておく。

 エマは外の景色を眺めっぱなしだが、別に気にすることはない。


「まず俺たちが向かっているのは、火の鉄道都会フェニクルの北東に位置する、ルビーアイ炭鉱というダンジョンだ」

「ルビーアイ炭鉱……」


 ダンジョンの名前からして、コウモリとか出てきそうだ。


「出現モンスターはマウバット、ゴブリン、デルタワームとなる」

「シクスオ初心者であっても、満足した戦いが出来そうなモンスターのラインナップですね」

「最後に言ったのはダンジョンの最終ボスだ。レアスキル持ちだから初心者は遭遇したら間違いなく倒される。そして、俺たちの目的は、そのモンスターの討伐となる」

「レアスキル持ちのボスモンスターを討伐……」

「そうだ。だから、今のうちに体力の増強を、ぱくっ」


 割り箸を右手に持っていたルークは、掴んでいるだし巻きを口の中に放り込んだ。

 すると、口元にゼロとイチの数字が浮かび上がり、だし巻きが溶けていった。


「いま何をされたのです?」

「うん? これのことか」


 ルークの左手には、長方形の黒い箱がある。


「これは、フェニクル弁当だ」

「パパがよく食べてるらしい、駅弁だねー」


 エマはフェニクル出身なのか、よく知っていた。


「エマ、これからダンジョンの探索が始まるのだが、フェニクル弁当を食べないのか?」

「うん。いまは欲しくない」

「そうか」

「あの、フェニクル弁当って食べると何かおきるのですか?」

「ああ、そうだな。一定時間、体力が消耗しにくくなる」

「ふむふむ」


 体力が減ると息切れとかしやすくなるけど、私も要らないかもしれない。

 どちらかというと、パワーオーブがもうひとつほしいところだ。


 RAEをひとつでも上げれば、自力で体力を回復させる手段を確保出来るからである。


「ボスモンスターの討伐ー。エマ、頑張るよ」


 エマが座席から離れると、速度が落ちはじめていた。まもなく、目的地のダンジョンから一番近い駅に到着する。

 食事を終えたルークは、黒い箱を握りつぶした。


「武器を取り出す準備をしておけ。駅構内ならダメージを受けることはないが、外に出るとそこは戦場だ」


 一気に気が引き締まったルークは、その場で立ち上がった。

 間もなく到着する。その後、駅構内から出たら他のプレイヤーが待ち伏せしていてもおかしくはない。


 ここはシクスオ。

 そういうゲームなのだから。


「エマ、行くぞ」

「はい。パパっ!」


 列車が停車し、ドアが開いた瞬間、二つの人影が勢いよく飛び出していった。


「えっと、早すきませんか……?」


 私は二人の迅速な行動に全くついて行けてなかった。


「エマ、人数の確認を」

「はい、パパ。プレイヤーは……三名ほど、ルビーアイ炭鉱方面に向かっているよ」


 ルークとエマは、柱の裏手に身を隠し、駅から外の様子を伺っていた。


「三人か。ダンジョン内で遭遇する可能性があるから、厳重に警戒しながら進むぞ」

「パパ、了解です。ところで」


 エマは首を回して、私と顔を合わせた。


「先輩、フィールドでの隊列はどうしたら良いですか?」


「急に言われても……」


 私は戸惑うが、もっている武器の情報を整頓してみる。


 エマには前衛用の武器が二種類、ルークは槍。私が杖である。

 通常のダンジョンで考えるとしたら、私が一番最後なのが妥当だが、フィールドは視界が広めなのでそれは通用しにくいと思われる。


 私が真ん中だとして、前衛はルークかエマのどちらかが望ましい。


「エマちゃんが、トップでお願いします」


「わかった。エマ、頑張る!」


 エマは駅構内から飛び出して、双剣を握りしめた。

 経験を積ませる。というルークの言葉が引っかかったので、そういう作戦で行こうと決めた。


 目指すはルビーアイ炭鉱。


 ダンジョンの入り口に到着したら、ルークがちゃんと知らせてくれる。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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