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ダンジョンを動かす資格


「ノアちゃん、どうしたの?」

「ノアは失われたシリーズについて考えていました。失われたシリーズというものは、いったい何のために存在しているのかなと思いまして」

「その真相にたどり着く為に、ノアちゃんは失われたシリーズを集めていたのですよね?」

「パルトラ様の言うとおりです。ノアは失われたシリーズを解明したいのです」


「ノアちゃんは、ここで休憩したいのではなくて、一歩が踏み出せないのかな……?」

「パルトラ様はどうして分かったのですか?」

「えっとね……それは」


 私はノアの右腕を掴んで、走り出す。

 次へと進むための扉に目がけて、真っ直ぐに。


「なんとなく、かな」

「パルトラ様のなんとなくとは……?」


「言葉に出来ないけど、直感?」

「ふむふむ……。パルトラ様は洞察力とか優れているのですね」


 ノアの興味が一瞬だけ私に向いた気がした。けど、扉を開けて部屋に入ると、興味が薄れていくのは目に見えて分かった。


 私の目の前には、石の材質で出来た石版のようなものがあった。

 それには幾つかのくぼみがあって、そのうちのひとつに失われた円盤がキッチリとはめ込まれていた。


「パルトラ様、歯車のような形をしたくぼみに失われた電気コアをセットしてみてください」

「わかりました」


 ノアにそう指示されたので、失われた電気コアを手元に用意してはめ込んでみた。

 すると、失われた円盤のすぐ近くに、長方形の小さなくぼみが出現した。


 謎がひとつ解けたら、また謎が増えたみたいだ。


「ノアちゃん、これはどうしましょうか?」

「そうですね……どうしよう」


 流石にノアちゃんも、お手上げな様子だった。

 せめて何かの型があれば良かったのだけど、それがないのでノーヒントと言い切れるレベルの難題と化していた。


「うっ……それはたぶん、あれのことかと思いますが」


 少しよろめきながら、部屋に入ってきたのは白い戦闘服の女の子だった。


「トワちゃんだっけ。無理しないようにね」

「セレネさん、お気遣いありがとうございます。一応、平気ですよ」


 セレネに支えられて、頭を抑えいる彼女はとても平気な状態だと言えなかった。


「トワ様、あれってなんでしょうか?」

「これです。失われた銃弾ですよ」


 トワは、金属の銃弾を右手に持っていた。

 それは私が、彼女との交戦前に踏んづけたものと合致していた。

 このダンジョンの出入り口にある壁をすり抜けることが出来た原因は、これだったのか。


「とりあえず、置いてみましょうか」


 ノアがそれを受け取ると、長方形の小さなくぼみに金属の銃弾をひとつ入れてみた。

 そしたら、くぼみの蓋が閉まった。


『認証、オールクリア。ダンジョンを起動します』


 謎のアナウンスが聞こえてくると、失われた電気コアが回転し始めていた。


「これから、何が起こるのでしょうか!」


 好奇心が抑えきれないノアは、じっくりと石の石版を眺めていた。

 地響きがして、石版の一部分がひっくり返り、地図のような模様が現れる。それだけでは終わらない。


 失われた電気コアから、あらゆる方向に電気の線が伸びていく。

 そして、失われた円盤が回転を始める。


 それだけじゃない。


 大きな異変があったのは、天空のバルコニーだった。


 大きな物音が聞こえると、皆で一斉に振り向いた。

 すると、さっきまでなかったレンガの筒が、そこにあったのだ。


「これは……」


 駆け足でノアが近づくと、ダンジョンの名前が浮き彫りになった。


 天界クラムベルン――。


 おそらく、新たなダンジョンである。


『ダンジョンを動かす資格を確認中……クリア』


 そんなアナウンスが流れると、ノアの目の前には、ダンジョンのマップと思われる画面がうっすらと出ていた。


「これはこうで……ふむふむ」

「ノアちゃん、何かわかりそうですか?」

「これはダンジョンです。三カ国ダンジョンマスター交友会ににピッタリともいえる土台とも言えるでしょう」

「ダンジョン……土台ですか?」

「パルトラ様はご周知……そういえば、パルトラ様は自らの固有スキルでダンジョンを作成されたのですね。それなら知らなくてもおかしくないですね」

「ノアちゃん、確かにそうだけど」

「簡単に言うと、シクスオでダンジョンを作成するには、ダンジョンの土台となる土地とダンジョンを動かす資格が必要となるのです」

「土地と、資格……」


 どっちも見つけて、はじめてダンジョンの作成を行えるということだろう。

 仮にそうだとしたら、私が持っていたスキル『ダンジョンクラフト』を用いてダンジョンの設計からはじめたのは、異例のパターンなのかもしれない。


 ひょっとしたら、私って本当に特別な何かである可能性が出てきた。


 それより気になることがあるとしたら、ダンジョンを動かす資格というものだが……。

 ノアやセレネなら、きっと把握されているルールなのだろう。


「ノアちゃん、ダンジョンを作れるようになる条件とか、決まり事ってあるのですか?」

「それはありますよ。そもそもタイトルにあるじゃないですか」

「タイトル……。何のことかな?」


「パルトラ様、このゲームのタイトルです。シックス・スターズ・オンライン。このシックス・スターズというものが、世界に六人いるダンジョンマスターのことを示しているのです」


「この世界にいる、六人の……ダンジョンマスター。ということは……」


 これが事実ならば、やはり私は広大な何かに巻き込まれていたということだ。

 ただ、これを知ったところで、ダンジョンを作ろうとする意欲は変わらないけど……。


「でも……どうしましょうか。今からおおよそ二週間後に三カ国ダンジョンマスター交友会を開催すると決めたとして、ダメもとで他のダンジョンマスター様を誘えるかどうか」


 ノアは、わがままと思いつつ話してくる。


「ノアがベフュモ、セレネ様がトルード、パルトラ様にフェニクルのダンジョンマスターに声を掛けてみるということで、どうでしょうか? 駄目なら六カ国での開催は、機会を改めて行うということで」

「ノアちゃん、悪くないんじゃないかな?」


 ノアの提案に、セレネが感心を寄せていた。

 私も、良い案だと思うのだけど。


「フェニクルに行ったことすらない……」

 思わず、口に出ていた。


「フェニクルか……。一度、故郷に戻りたいと思っていた頃合いだし、もし差し支えなければ一緒に連れて行ってあげるけど」


 敵対する意志を持ってないトワが、右手を差し出してきた。

 ありがとう、と後でちゃんと伝えないといけない。


「改めまして――。私はパルトラと言いますので、よろしくお願いします」


 握手を交わした私は、トワとフレンド登録をした。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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