セイントキャッスル号に行こう
「新たな失われたシリーズのカタチは歯車ですね……ふむふむ……」
ノアは失われた電気コアに対して、関心を寄せていた。特に、アイテムの形に注目している素振りを見せていた。
「ノアちゃんには、何か心当たりがあるのですか?」
「はい、そうですが……。パルトラ様は、あの部屋にまだ行ったことがないですよね?」
「あの部屋……ですか?」
私は首を傾げる。自身の髪をそっと触るセレネは、私の態度を少しばかり気にしていた。
「パルトラちゃんの反応を見る限り、わたくしたちで案内したほうが良いと思うよ」
「案内してくれるなら、是非とも……」
「セレネ様、そうですね……それでは、今からその部屋に向かいましょう。パルトラ様も一緒に来てください。ノアが立てている記憶の石像を経由して、ダンジョンにご案内します」
「わかりました。あれっ、ノアちゃんの記憶の石像に、ってことは……」
「パルトラ様にはこういう形でとなってしまいましたが、セイントキャッスル号にご案内致しますよ」
「ノアちゃんのダンジョン! そこに失われたシリーズの解明へと繋がりそうな、重要な部屋があるのてすか?」
「えへへ、そうなります」
進歩があった喜びを上手く隠しているノアは、私の両手を握ってきた。
「わたくしの準備は出来てるから、お先に行くよ!」
セレネは、真っ先にワープしていった。
「先に行かれてしまいましたが……。パルトラ様、行きましょう」
「う、うん……」
ノアの合図で、私はワープした。
ノアが設置してある、記憶の石像に移動する。そこから、すぐ近くにあるギルトの中に入っていくことになる。
「ギルドに上り階段がありまして、そこから先に進むとノアのダンジョンとなっております」
「ここから先が、セイントキャッスル号……」
私にとっては踏み入れたのことのないダンジョンとなるので、気を引き締めようと思う。
ギルトの階段を登り切って最初のフロアに入ると、洋風のお城をイメージした通路が左右に伸びていた。
主な出現モンスターは、飛行しているタイプと二足歩行のアンデッドになっている情報があるのだが、モンスターの姿が見受けられない。
「ノアちゃんのダンジョン、入り口がとても静かですね」
「現在、出入り口周辺のモンスターが倒されているからです。いま回復させます」
両手を握り合わせて、祈りのポーズを取るノアは、集中力を高める。
「清らかな祝福よ、かの者たちを修復したまえ」
詠唱を終えると、床の魔法陣からモンスターたちが出てきた。
地上にいるのは、二足歩行しているスケルトンというモンスターだ。
一歩で空に飛んでいるのは、天使の翼がついた卵型のモンスターだった。このモンスターの名前はホーリーエッグ。見た目からして、魔法攻撃を多用してきそうであった。
「モンスターは復活したけど……ノアちゃん、結局のところどっちに進むのですか?」
「この場にいる全員がダンジョンマスターなので、今回は裏道を通って行きます」
と言ったノアは、真正面の壁に躊躇なく突き進んでいく。
「壁抜け出来るんだよね、ノアちゃんとパーティーを組んでいると」
「壁抜けは、バグじゃないですよね。……やっても大丈夫なのですか?」
「パルトラ様は心配なされるのですね。ノアは平気なのですが……正直に述べると、ダンジョンマスターの特権というべきですね。構造上で述べるのなら、基本的に他のプレイヤー様は裏側の通路へは侵入出来ないようになっています」
「安全地帯みたいな感じでしょうか?」
「そうです、安全性の高いエリアとなります。それでも、失われたシリーズがあればお通ししていますけど」
原則、他のプレイヤーは侵入出来ない、か……。
ノアとセレネは非常に慣れているのか、全く戸惑うことなく壁に入っていく。
「行くしか、ないね……」
多少なりとも戸惑いがあった私は、勇気を出して壁に飛び込んでいった。
すると、隠れていた通路が視界に入る。そしたら、ダンジョンで探索している緊張感が一気にほぐれていった気がした。
「ここから暫く進んでいくと、このダンジョンのクラフトルームがあるんだっけ?」
「そうです、セレネ様の言う通りです」
「目的の部屋は、そのから更に先へと進んだら良かったよね!」
「はい。ノア一番のお気に入りとなる、空中に浮かぶ通路も通りますよ」
「あそこね。とても綺麗な場所だもんね」
「そうですよね!」
和気あいあいに対話するノアとセレネが前を歩いており、私は一歩下がったところから二人の話し声に耳を傾けていた。
ここで一度、目的を思い返す。
セイントキャッスル号に移動する。
部屋に行って何かをする。
ノアちゃんが言っていた、部屋というものがこの先にあって……うん?
私は何か金属のようなものを踏んづけた気がした。
その場で足元を確認してみると、金属の銃弾が数発ほど、地面に散乱していた。
もしかして、誰かいるのかな。ノアとセレネの仲良く会話しているのをみた限り、警戒は全くしてなさそうであるが……。
念には念を押しておくのが良さげだ。
自身の胸元に両手を添える私は、スキルを発動した。
天翔る銀河の創造天使。
白き天使の四枚羽が背中から出てきて、私の両足が地面から離れた。
これにより、このダンジョン内の操作権限を一時的に得られるようになったので、ダンジョンのマップを広げて何か隠れていないか調べることにした。
すると、冒険者の反応あり。
数は、四だ。
但し、その冒険者たちが近くに潜んでいない情報は得られた。
とはいえ、このまま進むのであれば、鉢合わせするのは時間の問題だといえる。
ここで取れる選択肢が幾つかあるのだが、私は特に二人に知らせることなく警戒だけを続けることにした。
何故そうすることにしたのか。答えはひとつだ。
シクスオのダンジョンマスター三人が協力する対人戦を、今の状況を利用して、一度試したいと思ったからだ。
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