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ダンジョンで遊ぼう!! ~配信しながら楽しくダンジョンを作りたいと思います~  作者: 愛原ひかな
第2章 交友会の企画案

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唯一無二の癒し手


 水の都アクエリアにお出かけした日から、おおよそ一週間が過ぎた頃。

 クレイキューブの地下迷宮にある、アレイの工房にて――。


 私は作業台の上に置かれていた、エグゼクトロットを手に取る。


「強化は無事に終わったのやね。これで武器を投擲しても、水の加護で手元に戻ってくるようになったのやけど」


 作業を終えたアレイは、全身を伸ばす。

 海殿――グレイブ・クローニアの探索によって手に入れた、星煌めき水晶。それは、エグゼクトロットを改良する為に必要だったものなんて、思いもしなかった。


「アレイさん、ありがとうございます。早速試してみたいと思います」

「ここだと狭いから、フィールドでやってみると良いかもやね。丁度、フィナ殿が外で剣の練習をしているところやね」

「そうですね、早速ですが行ってきます」


 私はアレイの工房を後にすると、フィナがいるダンジョンの外側へと向かうことにした。


 風神の和太鼓を回して、ひとっ飛び。

 目的地にはすぐに行けてしまう。


 ヒュ――。

 フィナは、ひとりで黙々と剣の素振りをしていた。


「フィナっ!」

「パルトラ、改良された武器の使い勝手はどうだった?」

「えっとですね、いまから試してみたいとは思いますけれど……」


 周囲を見渡した私は、だんだん目が泳ぎそうになる。

 標的にできそうなところがあれば良かったのだが、残念ながら近くにモンスターがいない。

 他に目立つものは、私のダンジョンくらいか。


 クレイキューブの地下迷宮は、ピラミッドのような外見をしている。もしも投擲するのを試すなら、どこが相応しいだろうか。


「すみません、的になるようなものが見当たらなくて」

「そうだな。あたしがここから二十歩ほど歩いた場所を、的としてみるのはどうだ?」

「地面に刺してみるということですか?」


「そうなる」

 フィナはゆっくりと歩き始めた。

 いち、に、さん……二十を数えると、立ち止まる。


「あたしの左側を狙ってみて」


「わかりました……やってみますね」


 肩の力を抜いた私は、エグゼクトロットを投げた。

 すると、エグゼクトロットは高速で飛んでいった。そのまま突き進み、フィナが立っている地点より、左に逸れた場所に刺さる。

 ここで私は右手を伸ばし、意識する。

 水のイメージ。エグゼクトロットがこちらに戻ってくるような感覚。


「あっ……」


 エグゼクトロットは透き通った水の塊になって、私の元に戻ってくる。


「えっと、こうかな?」


 右手で掴む意識をすると、杖の形に戻っていった。


 これなら、エグゼクトロットを投擲しても、回収には困らなくなりそうだ。


 もう一度試してみようかな……。

 出来れば何度も試して、感覚を掴みたい。


「フィナ、また投げて大丈夫ですか?」

「ちょっと待って」


 その場で見上げているフィナは、何かを発見した様子。


「フィナ、どうしたのですか?」

「えっとだ。黒い何かがこっちに飛んできていて……」


 ふとその場で空を見上げると、黒い影が横切り――。

 灰色の円盤が、地面に落下していき。

 フィナがぶっ飛んでいった。


「フィナっ……!?」


 フィナは、落下した円盤からそう遠くない場所に転がり込んでしまう。


 そして――。

『フィナはリスポーン待機中に入りました』

 ログが流れて、私の開いた口が塞がらなくなった。

 フィナが倒された。降ってきた円盤に直撃した故の事故だった。


 あの円盤って一体なに?


 私はおそるおそる近づいてみると、自身の頭部を気にしている金髪の美少女が座っていた。


 彼女は青いハート型の帽子を被っていて、水色と白が混じる神官服を着ている。

 その姿はまるで聖女のように見えた。


「えへへ……まさか不時着してしまうとは」

「あの、不時着して早速で申し訳ないのですが、その円盤にぶつかったであろうフィナが、倒されてしまって」


「倒されて……? うっかり他のプレイヤーさんを倒してしまいました?」


 彼女は首を傾げそうになったので、手で場所を指し示して、フィナが倒されたことをアピールした。

 そしたら、彼女はフィナの死骸を見つめて、状況を理解ようとした。


「すみません。なんとお詫びをしたら良いのか」

「それは、フィナがリスポーンした後で大丈夫だと思いますけど」

「リスポーンですか。そうですね……」


 彼女は円盤から飛び降りると、倒されたフィナのもとに駆け寄った。

 そして、白い魔方陣を展開する。


「女神の祝福、かの者の傷を癒やしたまえ」


 詠唱を終えると、フィナの死骸が元通りになっていく。

 それから、リスポーン待機中というメッセージが消失してしまった。


「うっ……あれっ……」


 フィナはこの場で目覚める。

 そして、私は目撃してしまった。シクスオには存在しないと言われていた、回復魔法だ。


「これは……パルトラ、何が起きたんだ?」

「フィナはもしかしたら、回復系の魔法が掛かったのかな……」


 すぐに駆け寄る私は、状況を飲み込めずにいた。


「すみません、迷惑でしたか?」

「そんなことないよ。それよりも、どちら様で……」

「名乗るのを申し遅れました。ノアと言います」

「ノアちゃん……。私、パルトラと言うのでよろしくね」

「はい、よろしくお願いします」


 ノアはお辞儀をした。


 円盤と一緒に空から降ってきたこの子、思ったより謙虚だ。

 それに、回復魔法のことが凄く気になってしまう。


「まず種明かしをしないといけないですね。ノアの持つスキルは、不屈なる(ダイヤモンド)絶対回復(リカバー)です。回復系の魔法が扱えるようになる固有のものとなっておりまして、デメリットというものも一応あるのですが……」

「シクスオでは、唯一無二の回復魔法の使い手。そう言いたいのだろう」

「仰る通りでございます」

「フィナ、もう動けるのですか?」

「そうだな。あれで一回死んだのは事実だけど」


 円盤の力を恐るべし、とでも思っているのだろうか。

 フィナの顔は、墜落した円盤の方向に向いていた。


「ノアちゃん、あれは乗り物なのですか?」

「失われた円盤というアイテムです。乗り物なのかどうかは現在解析中でして。現状、ノアにしか操縦することが出来ませんから、放置しても問題ございませんけど」

「とりあえずノアちゃん、場所を移しましょう。ここ見晴らしが良いけど、ひと目あると気になってしまうかなと思って。フィナもそれで良いです?」

「あたしは別に構わないが、少し小休憩したいからシクスオから一旦席を外すよ」

「フィナ、わかりました。そしたら、二人で移動ということで」

「そうなりますかと……場所はこちらの国のギルドですかね?」

「いえ、私のダンジョンですよ」

「パルトラ様のダンジョン?」


 ノアは、そわそわしていた。

 小柄ながら熱い視線が、私に注いでくる。


「とても気になります」

「まずは、フレンド登録してワープできるようにする。それからですね」


「はい、お願いします……」


 画面をタップして、ノアとフレンド登録を済ませる。

 その後、クレイキューブの地下迷宮にある、ダンジョンクラフトの部屋へ案内した。


 あそこならば、ひと目を気にしないで情報共有をすることができる。


「ここが、このダンジョンの核となる場所ですね。素晴らしいです」


 ノアはとても関心を寄せていた。

 というか、ノアを軽々と、ここへ案内してしまって良かったのだろうか。


「パルトラ様は、これといった心配をしなくて大丈夫ですよ。ノアは、天空都市セラフィマでのダンジョンマスターですから」


 ノアは、軽く胸を張る。


「ノアちゃんはダンジョンマスターだったのです?」

「えへへ……そうですね。ダンジョンマスターとはいっても、ノアは戦闘向きなスキルや戦い方を持ち合わせていないので、モンスター様に頼りっぱなしになってしまいますし」

「それはそれで、ダンジョンの特色が出てきそう……。というか、ダンジョンマスターって何人いるのかな?」


「パルトラ様は、シクスオのダンジョンマスターの数についてご周知ないようですね。それならいまからお伝えします」


「ノアちゃん、お願いします」


 重要な情報を前に、私は息を呑む。


「シクスオには、六つの国がありますね。ダンジョンマスターもそれぞれの国にひとりずつ現れるようになっているそうです」

「ひとつの国にプレイヤーが作り上げたダンジョンがひとつ……」

「言い方を変えればそうなります。それで、ノアが知る限りでは、迷宮神殿オシリスでのみダンジョンマスターを発見することが出来てなかったのですが、こうしてめぐり合わせる時が来るとは思いもしなくて」

「私ですか?」

「そうです。なので、本日お会いすることが出来たのは、何かの縁ですね」


 ノアは、私の両腕を軽く掴んでいた。


 何かの縁。

 そんな単語を耳にすると、とっても不思議な気分になりそうだ。


「それはさておき、すみません。限界が……近いです……」

 ノアの身体が、急に震えだしていた。


「ノアちゃん。どうしたのですか?」


「吸血衝動が……これ以上、抑えきれなくて……」


 必死に堪えるノアの瞳は、赤く染まっている。


「回復魔法を……使い過ぎるとですね……。どうしても、血がほしくなってしまいまして……」

「なるほど、固有スキルのデメリットかな。私は納得している場合ではないですよね!」


 ノアはいまにも私の首元を、かぶりつきそうになっていた。

 フィナは、まだ帰ってきていない状況。

 今なら、大丈夫かな?


「ノアちゃんがどうしてもというのなら、少しだけ……」

「すみません。頂きますね」


 ノアは吸血鬼のように、私にかぶりついた。


 その瞬間から、私は血を吸われていく感覚を味わうことになった。

 優しく、ゆったりと肩の力が抜けていく。

 いまのところ、殆ど痛みは感じてないけれど、喜んでいるノアちゃんの顔が見えなくて……。


お読みいただき、ありがとうございます!!

面白いと思いましたら、感想、ブックマーク、評価をお願いします。作者の励みにもなるので何卒よろしくお願いします!!!

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