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学園に潜むモンスターたち


『リュウノ、タカラハドコダ?』

 笑いお面のような顔がみえて、こちらをじっくりと見つめてくる。


「ひぃ……お宝なんて、ありません……」


 モンスターに怯えながら弓を構えるセレネは、両足を震えさせていた。

 けど、魔力がこもる弓矢は、いまにも解き放たれようとしていた。


「とにかくモンスターの処理は、私たちに任せて」

「そうだな。行くよ!」


 フィナは、窓から覗かせるモンスターに接近した。


『カイワノジャマヲ、スルナ!』


 モンスターは腕を伸ばして、なぎ払ろうとした。


「ぐっ……」

 フィナは腕を全身で受け止めた。が、そのまま突き飛ばされる。


「嘘だろっ――」

 フィナは、ごろごろと横転する。


 なんだろう、あのパワーは。

 モンスターの腕には、純度の高い水晶がこびりついている。あれが、モンスター自身のパワーを引き上げているような気がして。


『サァ、ドコダ?』

「だから、知りません……」


 セレネは、黄色い魔法の弓を放った。

 モンスターの顔に向かって、一直線に飛んでいく。


『ガハッ――』


 直撃すると、大きくよろめいた。


「宿れ、炎の球体!」


 詠唱した私は、エグゼクトロットの先端にから炎の弾を作り出すと、モンスターの顔に目がけて飛ばしてみた。


 必死になったセレネの攻撃で大きな隙が出来ていたので、当てることは簡単だった。

 顔面だけ吹き飛ぶと、瞬く間に体が崩れさった。


 アイテムドロップは今回なし。


 このダンジョンで今のような強さをもつモンスターがたくさんいるとしたら、この先に進むのが不安になるかもしれない。

 準備しなおすために引き返すなら、いまくらいのタイミングが適切だろう。

 でも、私は進んでみたいと思っている。


 気になる。あの水晶が。


 竜のお宝よりも、学べそうなことがたくさんありそう。

 フィナの剣が呆気なく弾き返されていたことを考えると、武器の物理的反射があるか、耐久値がとても高いのどちらかの効果があるとみて間違いないだろう。


「フィナ、大丈夫ですか?」

「ああ、このくらいどうってことない」

 フィナは立ち上がって、こちらに戻ってきていた。


「すみません。わたくしが弱いせいで……」

「そんなことないですよ。それよりも、さっきのモンスターの名前が気になりまして」

「メルヘンマトンです。青い水晶の力をもつ一種のゴーレムです」

「ゴーレムなのですね……それは厄介なこと……」


 私にとっては、ただ作りたくなる意欲しか沸かない。

 ゴーレム系ともうちょっと戦ってみて、間接の動きとかイメージしておいたほうが後々役に立つ機会がありそうだ。


「セレネさん、グラウンドへ案内してもらえますか?」

 職員室があるのは校舎の一階。外方向へ進むとグラウンドに行けるはず。


「グラウンドはこの先にあります。なんだか嫌な予感がしますが……」

 セレネは再び怯えている。


「パルトラ、さっきより強敵がいるかもしれないけど、どうするんだ?」

「私が、前に出ます。フィナはセレネの護衛をお願いします」


 フィナにこれ以上ダメージを受けてほしくないので、代わりに私が先陣を切る。


「わかった、そうする。ただ、手元にライフポーションがあるのだが……」

「使用の判断は任せます」


 私は後ろを見ず、進行方向にだけ注意を深く向ける。

 今のところ、フィナに背中を預けても問題ない。それはそうと、徐々に暗くなっていく気がして不安が積もる。


「宿れ、炎の球体……」

 エグゼクトロットの先端に、明かりを灯す。


「ここが靴箱のようですね」

「ひっ……気のせい? 外に出るとグラウンドなんだけど……」


 何かを感じ取るセレネは、弱音を吐いていた。

 もしこの先にとてつもない危険があるというのなら、私ひとりで行っても良さげなのだけど。


 入念な準備をするなら、この場でするしかない。


「フィナ、この先にモンスターはどのくらいいると思いますか?」

「ざっと五十くらいか? いや百は超えているな」

「えっ……そんなに?」


 心の不安が積もり続けるセレネは、私が着ているローブを握りしめる。


「むうー? セレネさん、抱きつかないでください……」


「すみません、すみません!」


 何度も謝るセレネは後ろに倒れそうになる。


「大丈夫か?」

 フィナがクッションとしてかばい、転倒は免れる。


「はぁ、はぁ……わたくし、少し休ませてください……」 

「この姿勢を維持するのは構わないが、パルトラはどうする?」


「私、ひとりで行ってきます」

 二人にそう伝えると、先に進んだ。



 単独でモンスターがたくさんいるところへ行くのなら、エネミースコアの稼ぎ時でもある。私はステータス画面を開いて、エネミー判定をオンにした。


「黒い空に、あの月ですか……。やっぱり作り物の空は、見栄えが少々よろしくない」


 外に出ると、赤い月が光っていた。


「階段を降りたらグラウンド……」


 クローニア学園の生徒とみられる者が、約百名ほど突っ立っている。

 少し妙である光景。

 綺麗に整列している生徒たちは、その場から一切動く気配がない。


 そもそも、この生徒たちは息をしているのか?

 とても違和感を覚えるが、慌ててグラウンドへ駆け寄る必要もない。


 しばらくの間、私は静観する。


 すると、グラウンドよりさらに奥のほうにあった建物から、青い妖精のような塊がふわっと飛んでくる。


『ミナノモノ、キケー』


 その塊が声を放つと、生徒が一斉に振り向く。

 あれが、精霊なのだろう。


 私はステータス画面を開けて詳細を調べにいく。


 正式名称は、ブルースピリット。

 このダンジョンを支配する存在。正確には邪悪なモンスターの手先とみられるが、感知できた魔力の量からして相当手強い敵であることに変わりないだろう。


 是非ともスカウトして、私のダンジョンに連れて帰りたい。


お読みいただき、ありがとうございます!!

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