ミミックを作成する
「SSRの装備品を、パルトラ殿に渡すよ。当然ながら試作品もあるやね」
「アレイさん、ありがとうございます!」
「ところでなんだが、宝箱モンスターはどうするんだ?」
「あっ……えっとですね……」
フィナのさり気ない言葉が刺さって、私の頭から汗がにじみ出てくる。
ミミックを作らすに先走ってしまった、のかもしれない。
「これから……作ります……」
「そうか。それで、作り方のことなんだが、あたしは何も知らなくて」
「ミミックは、そうやね。現状だとボクしか作れないといっても過言ではないやね」
「アレイさんにしか作れない……?」
「ミミックのコアを持っているのが、ボクだけってことやね」
アレイは取り出しすと、光り輝くコアが浮かんでいく。
宝箱のマークが描かれている歯車が三つ。これが、ミミックのコアなのか。
これを使えば、宝箱モンスターであるミミックを作成できる。
「これだけでは足りないやね。必要な素材は一匹につき黒の欠片が三つ、あとは少量の魔力と特別な魔方陣が必要やね」
「魔方陣は、流石にアレイさんが暗記してますよね……?」
「そうやね。ミミックを作る上で一番の問題は、素材アイテムだと思うんやけど」
「それならすぐに用意できます。黒の欠片は大量に買い込んでますので」
私は、ありったけの黒の欠片を地面に落として見せびらかした。
「パルトラ、これ全部、黒の欠片なのか?」
「そうですよ。これだけあったら、必要分くらい足りると思います」
両手を広げた私は、その場でくるくると回った。
「それもそうか……ははは……」
フィナは顔が固まる。
ドン引きを超えている、反応の薄さ。
「フィナ殿は少し休んだら? あと、魔方陣の描いておいたやね」
「アレイさん、手際が良すぎますね」
私は、新たに描かれた魔方陣の上に、黒の欠片を三個置く。
「宝箱は、適当に置いて大丈夫やからね」
アレイが空っぽ宝箱を魔方陣の傍に置く。
「魔力を注ぐのやね」
「やってみます」
エグゼクトロットを構えて、魔力を魔方陣に注いでいった。
すると、空っぽ宝箱と黒の欠片三個が混ざり合い――。
『ガウガウ、ガウガウ』
宝箱モンスターである、ミミックを作成することができた。
「手間はそんなに掛からなさそうやね?」
「はい。あとは数を作って、置いていくだけ……」
ミミックを必要分つくり出して、ダンジョンに配置する。それから、SSR装備品をはじめとしたアイテムを空っぽ宝箱に仕込んだ。
宝箱の中身を入れることは楽々できるのだが、中身の補充ってどうすれば良いのかな。
自動的には、出来そうにない。
――となれば、誰かが宝箱に張り付くような形を取らないといけないか。
宝箱をあけられた後、すぐに補充できないのは仕方ないのだが……。
空っぽ宝箱を放置しすぎるのは気まずいというか、そこは何とかして循環していけるようにしたいところではあるけど。
「それはもう、スカウトするしかないかと思うんだが」
フィナが、もっともらしい答えを言ってきた。
「モンスターのスカウトですか?」
「そうだが。問題点も幾つかありそうだが……」
「通常のモンスターだとダンジョン内で見つかった場合、そのまま戦闘になる可能性があることでしょうか?」
「戦闘がはじまれば、暫くは宝箱の中身を補充できなくなる」
「そうならないように、モンスターと認識されにくい生命体を選ぶ必要があるということやね」
「モンスターとして認識されにくい……?」
「例えばだけど、精霊はプレイヤーに対して好意的な行動をすることが多いから、敵として認識されにくいんやね」
「精霊……。是非ともスカウトしたいですね」
「そうやね、大精霊は仲間に出来ない仕様だけど、小さめのなら出来るかもやね」
「なるほど……。アドバイスありがとうございます!」
「そこでや、ボクからひとつ依頼しても良いかね?」
「アレイさんからですか?」
「そうやね。星煌めき水晶という素材アイテムを取ってきて欲しいのだけど、パルトラ殿に出来るかな?」
「ほしきらめき……」
どこにあるのか検討すらつかない。
レアな素材アイテムであることは、はっきりとわかるのだけど。
「星煌めき水晶が採取できる場所は、水の都アクエリアやね。アクエリアとオシリスとの国境付近にある、海殿――グレイブ・クローニアというダンジョンがあってや」
アレイは、アクエリアの国境付近の地図を出していた。
これをみた感じ、目的のダンジョンに行くことは、そんなに難しくないように思えてきた。
「グレイブ・クローニア……。それって、精霊様がいる場所では……?」
「そうやけどね」
「フィナ、何か問題があるのですか?」
「精霊様をスカウトするのは、とてつもない難しさと聞いたことがあって」
「へー。そうなんですね」
私はエグゼクトロットを軽々とぶん回して、ウォーミングアップを図る。
「パルトラが、やる気あるなら心配いらないか……」
「そうやね。気をつけて行ってきてな」
「はい……って、あたしも行くの?」
驚く顔をするフィナ。そのフィナの左腕を掴んだ私は、頬がふんわりと緩む。
「フィナ、行きますよ!」
片手で握っていたエグゼクトロットの先端を器用に動かして魔方陣を描き、魔力を注ぎ込んだ。
アクエリアへの行き方は、既に予習しているようなもの。
一度ギルドへ向かい、依頼を達成する。その後、水の都アクエリアへ直接向かえば道に迷うことはないだろう。
帰りは、アクエリアにあるギルドを探す方が、手っ取り早いと思う。
フィナには詳しく伝えていないが、私はシクスオをより楽しみたい。
その一心でここにいる。
それはそうと、ちょっとした隣国への旅になるから準備をしないとね。外の世界に出ることが経験の種になると思うと、とてもワクワクしてきた。
お読みいただき、ありがとうございます!!
面白いと思いましたら、感想、ブックマーク、評価をお願いします。作者の励みにもなるので何卒よろしくお願いします!!!